NHKニュース7 (ニュース)
米国・バイデン大統領は日本製鉄による大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画について買収提案の禁止を命じた。「この買収計画は国内最大の鉄鋼会社の1社を外国の支配下に置き米国の国家安全保障と重要なサプライチェーンにリスクをもたらす」と指摘した。鉄鋼製品のもとになる粗鋼の生産量で中国のメーカーが高いシェアを持つ中での動きだった。おととし、世界の上位10社中6社を中国勢が占める中、日本製鉄は世界4位、USスチールは24位。両社の生産量を単純に合計すると世界3位となる。米国政府のCFIUS(対米外国投資委員会)が審査を進めてきたが全会一致には至らず、判断を委ねられたバイデン大統領は買収の禁止を命じた。今回の決定についてUSスチール・デビッドブリットCEOは声明で「バイデン大統領のきょうの行動は恥ずべきもので腐敗している」と厳しく批判。また、日本製鉄とUSスチールは共同声明で「この買収を拒否し同盟国である日本をこのように扱うことは衝撃的であり非常に憂慮すべきことだ」としている。武藤経済産業大臣は「理解しがたく残念だ。今回の判断に関する説明も含め懸念の払拭に向けた対応をバイデン政権側に求めていく」とコメントしている。関係者によると日本製鉄は米国政府を相手取って裁判所に訴えを起こす方針を固めたという。過去に対米外国投資委員会が審査を行い、大統領が取り引きの禁止を命令したケースは8件あり、このうちの1件は企業側が訴訟を起こし、裁判所が米国政府が企業の財産権を剥奪したとの結論を下して最終的に和解に至った。日本製鉄としては引き続き買収を目指す考えだが、その実現は極めて厳しい状況となった。買収が実現しなければ日本製鉄はUSスチールに対して5億6500万ドル(およそ890億円)の違約金の支払いを求められる可能性がある。日本製鉄が訴訟を起こす方針を固めたことについて専門家はなぜ買収が阻止されたのかを極力明確にするために訴訟は十分な意味があるとしている。