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太田知宏氏の解説。高市総理はコロナ禍以降最大の経済対策を決定。これが財政の健全性に対する懸念が高まり円安が進んだとの見方もある。太田さんは「短期的リスクは大きくない。中期的長期的な潜在的リスクは無視できない。財政の健全性をどうはかるか。財政の健全性を測る2大指標の1つがプライマリーバランス、税収-支出。日本政府はこれを基準にして可能な限り赤字を減らすようにしてきた。高市総理は第2の指標である債務のGDP比率が下がっていればいいという目標に変更したと言われている。債務のGDP比は借金を年収で割ったもの。これが大きすぎると我々が消費者ローンを年収の5倍も抱えていたら大丈夫かということになるので返済能力を示す指標。ただこちらに指標を切り替えることで、高市総理は財政赤字を増やしてもなお財政は健全だと言えるようになったことがポイント。世界各国の債務のGDP比率を比較したもの。欧米ではこれが上昇に転じ、財政健全性の問題として議論されている。日本は水準は高いがかなりハイペースで落ちている。債務の健全性を示す指標が改善しているので赤字を出しても数値が下がればいいという考え方。債務のGDP比率は赤字以外でも大きく動く。債務のGDP比率は3つの理由で動く。簡単なのは赤字。名目GDPが大きくなれば借金が大きくても分母は大きくなる。債務のGDP比率の数字は小さくなる。もしこれが全てならば欧米の債務GDP比率は下がっていないとおかしい。それがなぜかというと金利が問題。債務は金利の増加ペースで増える。そうすると分子は金利の増加率で増える。分母はGDP成長率で増える。他の国は分子も分母もハイペースで伸びているので債務GDP比率は上がるが日本は金利が低い。なので分子の増加率よりも分母の増加率が大きい。そのお陰で債務のGDP比率が自然に低下する現象が起きている。今日本で債務のGDP比率が急速に低下しているのはボーナスステージのようなもので長続きしない。政府の支払う金利はそんなに簡単に上がらない。ゼロ金利のときに大量に発行した国債の金利はゼロのままでゆっくり上がる。古い国債は償還され高い金利で発行される。政府の支払う金利も上がることになる。5年後には政府が支払う金利が1.5%、10年後には2%まで上がる。するとGDP成長率の差がなくなってきてしまう。自然減は数年で小さくなる。ある程度長期的視線を持って支払うべき支出を厳選することが大切。もう1つ問題なのが債務の規模があまりにも大きい。支払う金利が上がったときに利払いのペースが大きいくなる。利払いが18兆円前後の金利になる。補正予算の規模が18兆円ぐらい。5年後には大型補正予算規模の支払いが利払い費だけで毎年起こることになる。それが毎年増える。それを考えると可能なうちに債務の額を圧縮していく必要がある」などと述べた。
