ニッポンの里山 ふるさとの絶景に出会う旅 (ニッポンの里山 ふるさとの絶景に出会う旅)
群馬県の北西部に位置する中之条町は1000mを超える山々に囲まれた高原の町。人々は山を切り拓き、畑で様々な野菜や花を育ててきた。アサギマダラ、クジャクチョウ、ヒメシジミなど100種類以上のチョウを見ることができる。中之条町は明治以前から養蚕が盛んで山裾には桑畑が広がる。桑の葉の陰にはヤマドリが身を潜めタマゴを温めていた。地面にタマゴを生むヤマドリにとって桑畑は絶好の隠れ家となっている。群馬県には8万軒を超える養蚕農家があったが、戦後は化学繊維が普及して絹糸の生産が減ったことから、中之条町で養蚕の技術を受け継いでいるのはわずか数軒のみとなった。登坂昭夫さんはヤママユガ(ヤママユ)の幼虫がクヌギの葉を食べて育つことに注目し、桑の葉ではなく、クヌギの葉を使ってカイコを育てている。カイコが夜に作った繭を翌朝に丁寧に集める。一反の布を作るには5000個もの繭が必要となる。鮮やかな緑色をしたヤママユの絹糸は伸縮性があり、しわになりにくいのが特長。8月になるとクヌギの樹液を吸うためにカブトムシやオオムラサキがやって来た。養蚕の伝統を受け継ぎ、自然と寄り添った人々の暮らしが多くの生き物の命を支えている。