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DX(デジタルトランスフォーメーション)はさまざまな企業が取り入れているが、大胆なデジタル化によって赤字経営から抜け出し、新たな収益源まで生み出した神奈川県秦野市の旅館を紹介。この旅館は将棋のタイトル戦の会場にもなる老舗だが、リーマンショックの翌年2009年に10億円の負債を抱え、倒産寸前の状況に陥った。しかし、デジタル化の徹底で業績を大きく回復させた。例えば大浴場では、設置されたセンサーが使用済みタオルのたまり具合を計測、交換が必要なタイミングを知らせてくれるので、スタッフの巡回が不要になった。調理場が確認する画面では、食材に関する客の情報が見て取れる。味付けの好みやアレルギーなどに加えて、客の誕生日といった情報まで瞬時に従業員に共有され、サービスに生かされている。このシステムは、旅館がエンジニアを雇い独自に開発した。以前よりきめ細かいサービスができるようになり、システム導入から3年で黒字化を達成した。旅館はこのシステムは宿泊業以外でも使えると考え、製造業にも展開している。創業80年を超える自動車部品メーカーでは、これまで不良品が出た際は原因の究明と対策を紙にまとめていたが、旅館のシステムを導入し、去年、デジタル化に踏み切った。それにより、不良品が発生した原因や対応策がパソコンやスマホを使い全社員で共有できるようになった。特に大きな成果を上げたのが、米国で行っている事業。米国の工場は不良品率の高さが課題だったが、システムを通じて日本のノウハウを共有することができた結果、不良品が大幅に減った。この1年間で1000万ドルのコスト削減につながった。旅館が開発したシステムは、今では全国550以上の施設で導入されている。得られる売り上げは毎年3億円以上に増えて、本業に並ぶ収益の柱となっている。