- 出演者
- 桑子真帆
オープニング映像。
史上最高値を更新した日経平均株価。34年ぶりの更新のきっかけとなったのはスタートアップから急成長したアメリカの半導体メーカーだった。スタートアップは社会を変える革新的アイデアでこれまでになかったビジネスを生み出し、短期間で成長する10年未満の企業のことをさす。世界時価総額ランキングにあるマイクロソフトやアップルも元々はスタートアップ、日本企業は最も上位で100年近く前に設立されたトヨタ。世界で戦えるスタートアップを作り出さなければ日本と世界の差はひらくばかり。
空飛ぶバイクは3年前に日本国内で発売され注目を集めていた。開発したのは日本のスタートアップ企業A.L.I.Technologies。技術チームのトップはSONYの元執行役員。日本の大手企業などの様々な技術を結集させ、次世代を担う乗り物として開発をすすめていた。期待が高まり国内の有名企業から集まった投資額は50億円以上(STARTUP DB調べ)。今年1月、突然経営破綻が明らかになり、負債総額は20億円に達している。注目のスタートアップはなぜ失敗したのか。山田希彦さんは去年5月までA.L.I.の親会社の社外取締役を務めていた。山田さんが経営破綻の大きな要因と考えているのは、実態に合わない過度な宣伝。バイクは時速80キロで最大40分間空を飛び回れるとPRしていたが、実際には様々な課題があり風が吹く屋外で飛び回ることは難しかった。元従業員が取材に応じた。社内のミーティングでは性能を誇張するようなプロモーション映像を制作する会社の放水に、技術者から異論が出ていた。しかし、巨額な資金を集めるためには投資家に対するプロモーションに力を入れ続けるしかなかったという。去年3月、最後の切り札として富裕層の多い中東でのデモンストレーションを行ったが、機体は30秒間浮いただけで失敗した。
A.L.I.の突然の経営破綻は事業に協力した自治体にも影響。過疎化がすすむ山梨県見延町は経済効果を期待し、開発拠点として廃校を貸していた。しかし、本年度の賃料200万円が未払い。山梨県も新たな交通システムを構築するとしてA.L.I.と連携協定を締結し、750万円の補助金を支給していた。A.L.I.には経済産業省が少なくとも2500万円の補助金を支給、国土交通省は事業を委託し7000万円を支払う契約を結んでいた。日本のスタートアップ企業の数は10年で3倍、2万社を越えているが、経営破綻する会社も多く消費者が影響を受けるケースも出ている。高級腕時計のシェアリングサービス・トケマッチは先月末に運営会社が突然解散。800本以上、18億円相当の腕時計が未返却だという。時計を預けていた男性はスタートアップとして信用していたと話す。スタートアップに詳しい弁護士はスタートアップに対するイメージダウン、頑張っている起業家にお金が集まりにくくなることがリスクだと話した。
スタートアップ事態は失敗する可能性が高い。創業してから5年以内で半分が消滅するとされている。研究開発型のスタートアップは不確実性が高く失敗する可能性が高いという。スタートアップは革新的アイデアは得意な部分だが、資金面や技術面での支援が乏しい。支援を外からいかに取り入れるかが重要。国はスタートアップへの支援を本格化させている。スタートアップ育成5か年計画では2027年度に投資額を10兆円規模に拡大させる、将来10万社のスタートアップを創出し、時価総額10億ドル以上のユニコーン企業を100社にするとしている。すでに約1兆円が予備化されている。
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スタートアップ企業の開業率が全国1位なのは福岡市。理由の一つは市を挙げた支援体制。7年前から廃校をオフィスとして提供し、無料相談窓口を設置して投資会社とのマッチングもサポートしている。市の支援をうけてこれまでに900社以上が起業。東京から福岡に拠点を移したスタートアップもある。福岡市はこれまで25億円以上を投入してスタートアップを支援してきた。地元から上場企業を生み出し、雇用の創出や税収アップを目指している。今年度からは有能なスタートアップを集中的に育成するプログラムを開始し、15人が選抜された。スタートアップの成功に不可欠な資金調達や投資会社との交渉のノウハウを指導する。
長野市で7年前に起業し、事業拡大を模索している小池さん。会社が掲げるのは食品ロスの解消につなげる新たなビジネス。活用するのは食品メーカーが余らせている大量の食材。小池さんの会社が目指しているのは、これまで捨てられていた食材を必要とする会社にオンラインでマッチングするサービス。登録料を得ることで食品ロスをなくしながら、収益を得る仕組み。システム開発には多額の資金がかかり、投資会社の協力が不可欠だという。この日は大手菓子メーカー系列の投資会社を訪ねた。食品を扱う会社であれば関心があると考えた。小池さんはビジネスの意義を強調したが、投資会社が重視していたのは売り上げに直結する有料会員の数だった。小池さんのビジネスに関心を示す企業が現れた。鋼鉄を扱う商社で備蓄品や食料支援に小池さんのサービスを活用できないかと提案され、検討していくことになった。その後、複数の投資会社からの前向きな返事をもらい、当面の運転資金にめどがたったという。
加藤雅俊氏はスタートアップが成長するためのカギとなる活動は、スタートアップが持っていない資源を外部から取り込むこと、イノベーションを生み出すためには大企業との連携・オープンイノベーションが必要になるとした。世界の起業に対する意識調査では、起業を望ましい職業選択と考える人の割合が日本は他国と比べて極端に低い。加藤雅俊氏はスタートアップは失敗するのが当たり前、チャレンジできる環境を整備することが大事、失敗したあとにリスタートできる文化を促進していかなければならないとした。
スタートアップを目指す起業サークルに参加していた大学3年の小松田さん。今月、自分の会社を設立した。手がけるのは企業が地方の優秀な学生を発掘しやすくするマッチングサービス。小松田さんは自分の将来理想とする姿を思い描いたときに、時間がある今だからこそできることが思いつくならばどんどんやっていきたい、今だからこそやらない理由がないと話した。