2024年4月10日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
“埋もれる労災” 働き続けるシニア世代に何が?

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
“埋もれる労災” 働く高齢者に何が

働く高齢者は914万人。働く高齢者が過去最多となる中、ある問題が深刻化している。労働災害に巻き込まれる高齢者が増え続けている。労災の死傷者数は年間4万人近くにのぼり、過去最多を記録している。

オープニング

オープニング映像。

“埋もれる労災” 働き続けるシニア世代に何が?
“埋もれる労災” 働く高齢者に何が

労災が発生した場合、労働者や家族は事業者の協力の元、請求書を作成し労働基準監督署に提出する。ケガや病気の原因が業務にあるか調査され、労災と認定されると補償・給付される。今、高齢の労働者から労災申請ができない、認定されないという相談が相次いでいる。高齢者の労災認定にはいくつもの壁がある。

キーワード
労働基準監督署
労災認定の“壁” 働く高齢者に何が

都内のNPOに相談に訪れたのは78歳の男性。50年以上ガスの配管工として働き、右手の痛みで去年退職したが労災認定に至っていない。高齢者の労災認定に立ちはだかる壁はケガや病気の原因が加齢ではなく仕事にあると証明するのが難しいこと。去年までフルタイムで働いていた男性は、労災の補償対象となっていないため医療費などは自費でまかなっている。貯金を切り崩しながら生活をしている。NPOが取り組んでいるのが医療との連携。同じ建物内にある診療所には労災などの専門知識を持つ医師が常駐し、医学的に原因を見極めようとしている。NPOに相談していた78歳の男性は医療機関では重度の関節症であることがわかった。ケガの原因は仕事にある可能性が高いと指摘された男性はNPOの支援を受けて労災を申請することにした。取材を進めると、労災の認定基準が若い世代と変わらないことも高い壁となっていることが分かってきた。

キーワード
ひらの亀戸ひまわり診療所東京労働安全衛生センター江東区(東京)荻窪病院

当時73歳だった父親を亡くした安藤まゆみさん。父親は派遣会社の契約社員としてガソリンスタンドに勤務していた。自宅で倒れていることを発見されたのは5年前の夏。心筋梗塞だった。安藤さんは過労死ではないかと疑ったが、労災認定は難しいと申請を諦めた。その主な理由となったのは過労死ライン。過労死ラインは時間外労働が病気を発症する前の1か月で100時間、または2~6か月前の平均が80時間を越えると病気の発症と業務の関連が強いと判断される目安。安藤さんの父親が亡くなる前の1か月の時間外労働は約26時間だった。一方で深夜労働が6日連続で行われるなど、業務の負担が影響したのではと考えている。高齢者の業務の負担をどう図るべきか?過労死などの労働問題に取り組む弁護士の尾林芳匡さんは、労災は働く人の事情にそくして判断すべきだと訴えている。

キーワード
心筋梗塞

食品製造工場で勤務していた当時71歳の男性。4年前の夏、男性は勤務中に倒れて緊急搬送、その後亡くなった。男性の時間外労働は約70時間。当初、労災は認定されなかった。尾林さんは遺族とともに審査を請求。着目したのは作業部屋の環境。熱中症の危険度が高い部屋で強い身体的負荷があったと認められた。男性が亡くなってから3年半、2度の申請で過労死と認定された。

高齢者の労災認定として立ちはだかる壁は、加齢か業務かの判断が難しいということと、労災の認定基準が一律だということ。60歳以上の脳・心臓疾患の労災認定率は31.2%、他の世代の平均は41.1%。2021年9月に過労死の認定基準が見直され、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することが明確化された。脇田滋さんは前の認定基準をめぐる裁判の中で認められてきたものをまとめて認定基準にしたものだという。

“もし解雇されたら…” 労災めぐる高齢者の葛藤

長年、建設業に従事してきた原田信二さん、67歳。2年前に職場の事故で足を負傷し、骨挫傷と診断された。非正規雇用で働いていた原田さんは、当時、二次下請け企業の測量士として現場に入っていた。足に強い痛みが走ったときに医療機関を受診すると、医師は歩行困難で通常作業は不能と判断した。同行していた元請け企業の社員が、軽作業であれば可能か?と質問。医師は事務作業であれば可能だとした。翌日、原田さんは足の痛みをおして出勤したが、事務作業ではなく待機のみが5日間続いた。その後、原田さんは一時現場に復帰したが、足の痛みで休業を余儀なくされた。医療機関を再度受診すると、骨の内側に損傷がみられると言われた。原田さんが労災を申請したいと企業に相談すると、社内で検討する、申請は待ってほしいと返されたという。原田さんは企業の意に反して労災を申請するのは難しいと感じていた。給料も仕事もない状況が続き、原田さんは個人で加入できる労働組合に相談した。組合は問題点を企業に指摘した。休業から2か月後、企業側は労災申請に合意し、その後に労災と認定された。原田さんは休業補償を受けられるようになったがケガは完治していない。

キーワード
骨挫傷
“埋もれる労災” どう高齢者を守る?

企業側の労災隠しも起きている。社会保険労務士の原論さんは、労災隠しが行われる背景には、社会的評価の低下の回避、経営的なリスクの回避などがあるという。2022年、労災隠しの疑いは87件あった。脇田滋さんは高齢者の76.7%が非正規雇用で弱い立場にある、組合が非正規雇用を守れていないことがあると指摘。埋もれる労災を防ぐためには、そのケガや病気が労災かも?と思うこと、高齢労働者を一人で闘わせないことが重要だという。

キーワード
原論

© 2009-2025 WireAction, Inc. All Rights Reserved.