- 出演者
- 桑子真帆
医療事故を何度も繰り返す医師。4年前、手術中に脊髄の神経を切られる医療事故にあった女性、それ以来歩けなくなるなど重い障害を負った。執刀した医師は8か月で8件の医療事故に関わっていたとされる。なぜ医療事故は繰り返されたのか?各地で問題になっているリピーター医師、医療事故が繰り返えされないために何が必要なのか?
オープニング映像。・
医療事故の被害にあった福永よし子さん、79歳。きっかけは5年前、腰痛で病院を訪れたこと。赤穂市民病院は兵庫県赤穂市の医療を支える中核病院。そのとき診察したのがA医師。診断名は脊柱菅狭窄症。診察に同席した娘の洋子さんはA医師からは4時間ほどの手術ですたすたと歩けるようになると説明を受けたという。手術当日、10時間後に手術室から出てきた母親の様子が一変していた。下半身を激しい痛みが襲い、両足は麻痺し歩けなくなっていた。不信感を抱いた洋子さんはA医師に説明を求め、やり取りを録音していた。説明に納得できなかった洋子さんは上司のB医師に話しを聞くと、医療事故があったと明かされた。新たな診断結果は両下肢麻痺と膀胱直腸障害、今後自力で立つことや歩くことは望めず、オムツでの生活が余儀なくされた。この事故をきっかけに病院はA医師の手術について調査を実施。記者会見でA医師は8か月で8件の医療事故に関わっていたことが明かされた。事故報告書に記録されていたのは、脳腫瘍の切除後に重度の意識障害が起きたケース、カテーテル手術で血管の壁に穴があき死亡に至ったケースなど取り返しのつかない医療事故だった。なぜ8件もの事故が起きるまで病院は食い止めれなかったのか?法律では事故に対応する医療安全の組織を設けることが病院に義務付けられ、事故の報告をもとに調査・再発防止を行うことになっている。しかし、この病院では福永さんの手術が行われる前にすでに5件の事故が起きていたが、報告はあがっていなかった。病院は医療安全の部署に2人の看護師を専従で配置していたが、院内からは十分に機能していなかったとの指摘がある。スタッフの間でA医師の手術に問題があると噂になっていたが、早い段階で対応がとられることはなかったという。病院の調査によると、A医師が行った約70件の手術のうち、医療事故は8件。これには地方病院が抱える構造的課題があるという。病院に務める榎木英介 医師はA医師を採用し、手術を任せ続けた背景には、医師を採用できない苦しい実情があったのではと感じている。
赤穂市民病院での8件の医療事故のうち福永よし子さんのケースではことし7月、警察はA医師とB医師を書類送検し、捜査が続いている。2人は過失はなかったとしてい容疑を否認している。すでにこの病院を辞めているA医師は、原因をすべて技量不足と断定することは適切ではないとしている。去年の医療事故の報告件数は6070件で2010年と比べて2.2倍 に増えている。医師の長尾能雅さんはこの10数年で病院の報告意識の高まりを感じるデータ、全体像を把握できているかというとまだ開きのある数字だと指摘。最近は内部告発によって医師が事故を繰り返していることが明らかになる事案がピックアップされている、多くの医療機関で似たような状況が発生している可能性はある、日本全体の問題だと話した。医療事故のうち技術・手技が未熟だったというケースはこの10年で4.4倍に増えている。長尾さんは技量の問題で免許を剥奪することはできない、医師の技量を図ること自体が難しいという。設置が義務づけられている医療安全の組織について、医師がやむを得ない出来事だと主張するときにどのように対応するのかが難しい、安全管理者は悩みが多いのではないかと話した。
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都内の病院で院長を務める猪口さんは、最近院内でトラブルを起こして辞めていく医師が相次いでいるという。1人採用するのにも困窮しているという。医師と患者が分離しないように患者参画という考え方がある、カルテを患者が所有したり、会議に患者が参加したりするという取り組み。
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千葉県香取市の医療を支える県立病院。事故に対応する医療安全管理室の専属スタッフは2人の看護師、ここに権限をもたせるために、合併症にも報告を義務付けた。この日は、ポリープを切除する際に大腸に穴が空いた合併症の事例について、スタッフに詳細な聞き取りをした。医療安全管理室が必要と判断すれば院長や責任者の委員会で検証を行うルールで、事案の原因を分析し、再発防止につなげる狙い。県では外部の有識者による監査を定期的に行っている。医療安全担当のスタッフに加え、医師や看護師を交え、リスクへの備えを確認する。監査で課題が指摘されれば、対策を打ち出し県に報告することになっている。
医師の長尾能雅さんは日本で行われる監査は書類審査や体勢の審査が多い、意識しなければならないのは実際に身のある活動につながっているのかを評価する視点が必要だという。医療は大きな転換期であり、患者さんの安全を第一に考える上で高い基準で医療が標準化されることを目指していかなければならないと話した。
A医師の手術を受けたあと、歩けなくなった福永よし子さん。娘の洋子さんは手術を受けさせたことを今も後悔し続けている。
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