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ニューヨーク・フェスティバル2025 ドキュメンタリー・人物部門 銅賞受賞。
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2023年11月。武藤将胤さんと木綿子さんは、女の子のパパとママになった。将胤さんは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病だ。国連を支える世界こどもみらい会議 FUTURE SUMMIT みらい総会に、将胤さんが登場。合成音声で会場に呼びかけた。困難を乗り越えてきた夫婦。夫と妻の十年の歩み。武藤将胤さんは大学で、社会を明るくするアイデアを形にすることを誓った。博報堂に入社。26歳のときに木綿子さんと出会った。その頃、木綿子さんは将胤さんの体の異変に気づいたという。1年を過ぎた頃、東北大学病院で難病ALSと診断された。夢を叶えることはできないのかなと思ったという。発症すると3-5年で亡くなることが多い。木綿子さんに心配をかけたくないと思ったという将胤さん。ALSの啓発活動をはじめた。木綿子さんにプロポーズしたという。木綿子さんの周囲には結婚に反対する人もいた。木綿子さんは自分しかできないことがあると思ったという。そして結婚。木綿子さんの想像を超える過酷な生活。自発呼吸が難しくなり「誤嚥性肺炎」のリスクも出てくる。生きるためには気管切開をして、人工呼吸器をつける手術や、気管と食道を分離する手術が必要になる。声が出なくなることが怖かったという将胤さん。目の動きで操作するDJなど、クリエイターとして収入を得るようになった。ALSが治る世界を映像と音楽で表現しようとした。MUSIC FILMの制作をはじめた。声を失ったときにそなえて、行動を起こした。
ALS患者の武藤将胤さんが出会ったのは、音声合成アプリ「コエステーション」。声を伝えられるようになった将胤さん。仕事で夜遅くに帰宅することが増えた将胤さん。ミュージックフィルムの撮影。木綿子さんは将胤さんの言葉が聞き取りづらかったという。そして口論になった。やっていけないよと将胤さん、だったらいいよ離婚しましょうと木綿子さん。そこからまた仲良くなったとのこと。口喧嘩もできなくなる日が近づいていた。東北大学病院で診察した。呼吸する筋力が低下している。手術を受け、人工呼吸器をつけることになれば声を失う。いまを生ききりたいという将胤さん。「ALSが治る20喃語の未来」の映像がイベントで流れた。一般社団法人 END ALS 創設者 Mc Cann Tokyoの藤田さんがやってきた。ALSの啓発活動をはじめた先輩だ。手術を受け、声を失っている。将胤さんも手術の日を迎えた。声は失った。視線入力装置で活動を再開。アパレルの販売などでためた資金をもとに、重度訪問介護の事業所を設立した。24時間の介護体制を整えた。
結婚から6年。将胤さんと木綿子さんにはずっと先送りにしてきたことが子どもをつくること。木綿子さんは「腹をくくったというところもある。彼は体が不自由だから子育てに参加するのは限られてる。そんな中で子ども1人の命を守っていけるのか」などと話した。子どもを育てていける生活基盤を作ろうと、エステティシャンの経験を生かしたセラピストの仕事を開始。同時に体外受精に向けて婦人科に通い始めた。妊活を初めて8ヶ月、2023年3月にケーキのメッセージで妊娠を報告。木綿子さんはそこがゴールではなかったので冷静だったという。6月、この日の定期検診でわかったことは、性別が女の子ということ。2人が名前を考え、決めたのは「ゆあ」。名前に込めたのは、あなたならではの生き方を作ってほしい。出産まであと1ヶ月。もうすぐ父親になる夫に望むことは、「精神的な人間として教えられることは彼にはいっぱいあると思うから、とりあえず元気でいてほしい」などと話した。将胤さんはあるメロディーを聞かせてくれた。目の動きで音楽制作ソフトを操作し楽曲を作るようになった将胤さん。生まれてくる娘に贈る曲を作っていた。いよいよその日が来て、木綿子さんは夜に陣痛が来て病院へ。出産に立ち会うため将胤さんも向かう。娘のための新しい服をデザインしながらその時を待つ。無事に出産し、家族3人の新しい生活が始まった。
1日3交代でペルパーたちが将胤さんをサポートする。そしてクリエイターの将胤さんだからできること。娘へのメッセージを込めた新曲がもうすぐ完成する。将胤さんは「娘が何歳になっても生きていくうえで色んな困難にぶつかる日もあると思うので、そんな時にこの曲が娘の背中を押してあげたいと思う」と話した。ALSの診断から9年。将胤さんの病状に気がかりな変化が。
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将胤さんは今後さらに病状が進むとTLS(完全閉じ込め症候群)になる恐れがある。将胤さんは「TLSになると妻や娘など大切な人たちとのコミュニケーションが絶たれてしまうのではないかという恐怖を感じています」などと話した。去年秋にはALSの新薬が誕生し、将胤さんは少しでも進行を抑制するために使用を決断。また脳波を解析して動くロボットアームなど様々な技術も試している。将胤さんは「妻と娘の幸せそうな顔を見られることが一番の幸せ」などと話した。妻・木綿子さんは「子どもが成長して大変なことも多いけどずっと幸せです」などと話した。