2025年9月3日放送 4:15 - 5:00 NHK総合

国際報道
2025 タイで外来種が猛威、日本の養殖技術で防げ

出演者
辻浩平 藤重博貴 酒井美帆 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像とともにキャスターらが挨拶。

ニュースラインナップ

今日のニュースラインナップを紹介した。

(ニュース)
北朝鮮 キム総書記 北京に到着 中国 あす軍事パレード

キム・ジョンウン総書記の訪問を控えたきのう北朝鮮との国境にかかる中国側の橋では、周辺の立ち入りを禁止する看板が立てられ、橋を目隠しするように壁も設置された。列車の前でタバコを燻らし、同行する外相らと和やかに会話。北朝鮮メディアが公開した写真では、キム総書記のリラックスした雰囲気がうかがえる。きょう未明専用列車で国境を通過し中国へ。朝鮮中央通信によると日本時間のきょう午後5時北京駅に到着した。キム総書記が中国を訪れるのは6年ぶり、北朝鮮と中国はかつて朝鮮戦争を共に戦い“血で結ばれた同盟”とも呼ばれるが、このところ関係がギクシャクしているとも指摘されていた。2018年両首脳が会談した海岸に友好の証として残されていた足形が消えていたことが。また中朝国境にかかる橋は中国が300億円以上を負担して2014年に完成したものの開通しないままとなっている。20か国以上の首脳が出席する予定の中国の軍事パレード。キム総書記が各国首脳が集まる場に参加は異例。韓国メディアは北朝鮮の最高指導者の中国の軍事パレード出席についてキム総書記の祖父、キム・イルソン氏が1959年に中国の建国記念日のパレードに出席して以来だと伝えている。滞在中に習近平国家主席やロシアのプーチン大統領と個別に会談するとみられている。

北京ではきょう中国の習近平国家主席がロシアのプーチン大統領と会談した。両者はあす中国が行う軍事パレードを前に第2次世界対戦の戦勝国としての立場を誇示し、さらなる連携の強化に意欲を示した。またトランプ政権やウクライナ情勢などへの対応についても議論したものと見られる。軍事パレードを控えた北京の中心部では大勢の警察官や警備員。多くの警察車両が配置され厳重な警戒態勢がひかれ、市内の様子を撮影をしていたNHKの取材班が呼び止められて取材理由を問われるなど当局が神経を尖らせていることもうかがえる。あすの軍事パレード、中国としては欧米主導の国際秩序に対抗し関係の深い国々との結束をアピールする狙いもあると見られる。

皆さんの声 募集中

アメリカ主導の世界秩序に対抗しようとする動きが強まる中、皆さんはどんな点に関心があるかQRコードから声をお寄せください。

アフガニスタン地震 死者1400人超 支援の動きも

日本時間のきのう発生したアフガニスタン東部の地震。被災地の多くは土砂崩れなどによって道路が寸断された山岳地帯。アフガニスタンで実権を握るイスラム主義勢力、タリバンの暫定政権はこれまでに1411人が死亡し3124人がけがをしたと明らかにした。被災地に入ったイギリスBBC。負傷者は町にある唯一の病院に運び込まれるが収容能力が足りず大混乱となっている。負傷した子どものベッドもない状態。こうした中、国際社会の支援の動きが始まっている。インド外相は暫定政権外相と電話会談し、テント1000張と食料15トン分を提供したことを明らかに、またイギリス政府も国連などを通じて日本円にして約2億円の緊急資金援助を表明。

ウクライナ 世論調査 “停戦合意後の再侵攻に不安”

ウクライナで先月「ロシアとの停戦に合意すべきか」について問われた世論調査の結果。19%が停戦に合意すべきでない。合意すべきと答えたのは78%。内訳は無条件で合意すべきと答え人は3%、欧米から安全の保証を受けることを条件にすべきと答えた人は75%と多数。ロシアの侵攻を繰り返させないように求める世論が高まっている中で今も戦闘は続いている。

ウクライナ軍 製油所攻撃に重点

ウクライナ東部や南部を中心に攻勢を強め、占領地の拡大を図っているロシア軍。ウクライナ軍は無人機を使ってロシア国内にある製油所などへの攻撃を続けている。ウクライナ国防省の高官は先月下旬NHKのインタビューに対し「兵器の運用に必要な燃料の供給を立つなどしてロシア軍の戦争継続能力をそぐことに重点を置く考えを示した。イェリン報道官は「ロシア国民や全世界に対して、ロシア人もぜい弱であると示すことができる」とコメント。イェリン報道官は無人機やミサイルの開発を進めるなどしてロシア領内の奥深くへの攻撃を強化する姿勢を強調した。

ウクライナ 避難者 3年半ぶり対面授業

首都キーウではロシア軍に掌握された東部の都市から避難してきた生徒達を集めて、約3年半ぶりに対面での授業が始まった。大学の教室を使って始まった授業には東部マリウポリの2つの学校の15歳から17歳の生徒15人が出席した。防空警報が鳴ったため、生徒達はシェルターに避難。この日は多くの生徒にとって母校の同級生や教員たちとの久しぶりの再会となり喜ぶ様子もみられた。

教育施設に電力供給システム 設置

ウクライナ公共放送は停電が続く学校に電力供給するための設備を設置したプロジェクトについて伝えている。停電で勉強の中断に悩まされなくなったのは4つの学校と5つの幼稚園。市の教育担当者は「市内の教育施設は13の学校、6つの幼稚園、3つの専門学校、そして多数の教育施設がある」とコメント。このプロジェクトは市議会と市内の事業家たちがエネルギー効率を上げるために書いた覚書のおかげで実行することができた。将来的には電力供給システムを全教育施設に設置する予定。

辻’s ANGLE:EU “ロシアが電波障害”

ヨーロッパで広がるロシアによるとみられる電波妨害。EUはフォンデアライエン委員長を乗せたチャーター機が飛行中に電波妨害を受け、GPS機能に支障が生じたと明らかにした。その後機体は無事に目的地のブルガリアに着陸した。EU報道官は「われわれはロシアの敵対敵行動につきものの脅しや威嚇に慣れている」と述べた。フォンデアライエン委員長を乗せた飛行機はポーランドの首都ワルシャワからブルガリア南部の空港に向かっていた。フィナンシャル・タイムズによるとチャーター機は目的地上空に到着するも電波妨害でGPS機能が使えない状態になったため、着陸を見合わせる。上空で1時間ほど待機、パイロットは紙の地図を使い着陸。ロシア側は関与を否定。フォンデアライエン委員長を狙い撃ちしたものかは分かっていない。ポーランドを訪れていたのはウクライナ支援を巡り、砲弾の施設を視察するためだった。欧米はハイブリッド攻撃だと言い出している。非軍事的な手段も使って攻撃、地域を混乱させるためのもの。ロシアに近いルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、トルコ、東ヨーロッパ、中東にかけて妨害が行われていた。IATAによると2021年と2024年を比べ妨害行為が220%増加。イギリスの国防相を乗せた軍用機がロシアの飛び地であるカリーニングラード周辺を飛行中に妨害を受けている。フィンエアーが目的地の空港に着陸できず引き返す事例が相次いだ。フィンエアーは約1か月定期便を運休。IATAとEASAは対応策を発表。

WOW!The World
イギリス 「ダウントン・アビー」終了で展示会

イギリスの上流社会を舞台にした世界的人気ドラマ「ダウントン・アビー」。放送開始から15年間でドラマ6シーズンと映画3作、いよいよシーズンも幕引き。ロンドンでは撮影で使った小道具や衣装が展示されている。これらの品々は展示後、オークションにかけられることになっている。

イギリス ダイアナ元皇太子妃のタイムカプセル

今から34年前の1991年、イギリスのダイアナ元皇太子妃によって小児病院の壁に埋められたタイムカプセルがロンドンで開封された。カプセルには湾岸戦争を伝える新聞記事やポケットサイズのテレビ、CDなど当時を象徴する品々が収められていた。カプセルは施設の建て替えのため、予定より早く開けられたという。

カナダ ネクタイ着用で世界記録

カナダの女性政治家が一度に締めるネクタイの数で記録に挑戦。着包みのように膨れて、顔がほとんど見えない状態。これまでの記録はブラジルで達成された330本。今回360本のネクタイを締め、ギネス世界記録を樹立した。

パンクロッカーみたい? 恐竜の化石

北アフリカのモロッコでおよそ1億6500万年前の地層から発見された草食恐竜スピコメルスの化石。全身に生えるのは骨と繋がったトゲ。一部は1mほどある。研究者は「パンクロックな恐竜」とコメント。アンキロサウルス類の最古の化石。これまでトゲは数千万年かけて進化したと考えられていたが、最古の仲間に巨大なトゲがあるとは。研究者はかつては強さをアピールするために用いられたトゲが白亜紀に巨大な肉食恐竜が現れたために、より実用的な装甲になり身を守っていたのではないかと考えている。

(ニュース)
ガザ市 退避続ける住民 厳しい状況に

イスラエルの攻撃に加えて支援物資の搬入制限が続くガザ地区。国連は先月、ガザ市やその周辺で飢きんが発生したと発表。地元の保健当局は栄養失調などによる死者が、これまでに361人に上ったとしている。NHKガザ事務所が1日ガザ市と南部を結ぶ中部ヌセイラトを撮影した映像を紹介。水を貯めるタンクや家財道具で山積みになったトラックや馬車が続々と南へ向かっていた。イスラエルがガザ市を制圧する方針を示す中、連日多くの住民が退避を続けている。男性は「毎日数十の住宅が破壊され住民がいなくなっている」と厳しい状況を訴えた。

SPOT LIGHT INTERNATIONAL
外来種が大量繁殖 タイの養殖産業 直面する課題

日本国内で消費されるエビのほとんどが海外から輸入されたもの。中でも東南アジアからが全体の約4割を占めている。しかし今、主な輸入元の1つ、タイで異変。タイ各地のエビの養殖場に海外種の魚が大量に入り込み、深刻な被害が出ている。背景にはタイの養殖産業が抱えてきた構造的な課題がある。その解決を目指して日本の協力で行われている新たな取り組みを取材した。

エビの養殖が盛んなタイ中部のペッチャブリー県で取材。養殖場の池に網を入れ、すくい上げてみると、とれたのは大量の外来種の魚。養殖場の池では近くの川から水を引いているが、川の水と一緒にアフリカ原産の外来種「ブラックチンティラピア」が入り込み、大量に増えてしまった。この地域で40年にわたってエビの養殖を営んできたソンバン・シッティルンは「1匹の魚が数百個の卵を産む。そしてまた2~3か月後に新しい卵を産む」などとコメント。食欲も旺盛で、養殖しているエビはほとんど食べられてしまう。ここ数年での被害は数百万円を超えるという。ブラックチンティラピアの大量繁殖は去年からタイ各地で確認。養殖産業を中心に被害は450億円に上るという試算もあり、タイ政府は外来種の魚を有料で買い取る仕組みを作るなど、対応を急いでいる。背景にはタイの養殖産業が抱える課題がある。これまでタイでは成 長が早く効率的に生産できる外来種が養殖のために海外から数多く持ち込まれてきた。その結果、現在、タイで養殖されているもののほとんどが外来種となっている。利益を求めて新たな外来種を持ち込む動きも後を絶たない。その中には生態系に大きな影響を及ぼしかねないものもある。ブラックチンティラピアも食品メーカーが養殖に向けた研究のために持ち込んだものが逃げ出し、各地に広がった可能性があると地元メディアは伝えている。

タイで養殖の研究をしている東京海洋大学の廣野育生教授は、外来種による被害を抑えるためには現地に元々いる在来種を使った養殖に転換していく必要があると考えている。「ネイティブな魚介類を養殖すると、それが逃げても脅威になる可能性は外来種と比べて低い」など と話した。廣野はタイの在来種の魚などをより育てやすくする技術の開発に取り組み、日本のJICAの支援を受けながら普及を目指している。タイの在来種「アジアスズキ」は柔らかな肉質と旨味が特徴の白身魚で、タイでは高級魚として取引される。ただ、成長に時間がかかることなどから、今養殖されている外来種の魚と比べコストが2倍近くかかることが課題。そこで廣野は飼育環境や感染症対策などの研究を進め、従来よりも早く安定的に育てることを可能にした。エサの配合を工夫することで肉筆や栄養価も向上したという。アジアスズキの養殖業者は「品質の高いタイ産スズキを育てたい」などとコメント。在来種の販路を開拓する動きもある。タイや日本の水産関係者などを招いた試食会では、アジアスズキの寿司が振る舞われた。東南アジアでもブームの日本食に使われることになれば普及にも弾みがつくと期待されている。日系デパートの関係者は「すごく可能性を感じる」などとコメント。

外来種で被害 タイの養殖産業

バンコクからの中継でアジア総局の加藤ニールが解説。外来種は育てやすく、利益も安定して見込めることから、タイでは多くの人たちが外来種を養殖してきた。一部で生態系に影響を与え、養殖業者の経営に深刻な打撃を与える事態も目立つようになってきた。このためタイ政府も対策に本腰を入れている。去年には外来種のブラックチンティラピアの撲滅に向けた4か年計画を策定。市民や企業とも協力して各地で駆除作戦を展開しているほか、天敵となる魚を川に放流したり、駆除のための漁具の開発に着手したりするなど、あの手この手で対策を打っている。ただ、こうした取り組みを重ねても、時間がたつと外来種の生息が確認され、いたちごっこの状態。一度自然界に外来種が広がってしまうと元の状態に戻すのは簡単ではなく問題の解決には長期戦を強いられそう。

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