- 出演者
- 辻浩平 藤重博貴 酒井美帆
イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘開始から2年。ガザ地区での死者は6万7,000人を超えた。今晩はガザ地区とイスラエル双方の市民の訴えに向き合う。
オープニング映像が流れ、出演者が挨拶をした。
ガザ地区の情勢について、40代の視聴者からは「ニュースに触れるたびに、亡くなる人がいない日はないという現実に棟を痛めている」、60代の視聴者からは「ガザ地区住民の運命は誰が決めるのか」、10代の高校生からは「終わることのない負の連鎖に危機感」などの声が寄せられている。放送中も視聴者の声を募集している。
ガザ地区の停戦に向けた協議が、6日に仲介国のエジプトで行われる。ハマスは「ハイヤ幹部が率いる代表団がエジプトに到着した」と発表。イスラエル側も「ネタニヤフ首相の側近であるデルメル戦略問題相がエジプトに向かう」と、複数のイスラエルメディアが伝えている。アメリカのメディアも、ウィトコフ中東担当特使とトランプ大統領の娘婿・クシュナー氏が早ければ7日にも現地に到着するとの見通しを伝えた。ABCテレビに出演したアメリカのルビオ国務長官は、まずは人質解放を最優先する考えを強調した。一方アメリカのトランプ大統領が示した計画では「ハマスが武装解除し、ガザ地区の統治にも関わらない」としているが、ハマスはこれらの要求に応じるかは明らかにしていない。トランプ大統領はCNNテレビの取材に対し「ハマスが権力を引き渡さなければ完全に消し去る」という考えを示し、自らの計画を受け入れるよう圧力をかけた。こうした中イスラエル軍はガザ市の制圧作戦を当面停止したものの、ガザ地区の各地で攻撃が報告されている。地元の保険当局は、過去24時間に65人が死亡したと発表した。
トランプ大統領が示した「20項目の計画」では、「双方がこの提案に合意した場合戦争は即時に終結。イスラエル軍は人質解放の準備のために合意した境界線まで撤退する」、「イスラエルがこの合意を正式に受け入れてから72時間以内に、生存者と死亡者を問わずすべての人質が解放される」、「すべての人質の解放後、平和的な共存を約束し武装解除したハマスのメンバーは恩赦を与えられる」などとされている。防衛大学校准教授の江崎智絵は「ハマスは20項目全てにまだ返事を出していないという点は気にかかる。一方人質の解放には同意しており、ハマスとしても現状を打開したいという意思の表明だろう」などとコメント。大阪大学准教授の辻田俊哉は「第1段階の協議がうまく進むかによって、第2段階やその次につながるのではないか。第1段階は72時間以内に人質が解放されるかどうか、イスラエル軍が境界線まで撤退できるかどうかにかかっている」などとコメントした。合意に向けた協議が進む中、ガザ地区の人道状況は厳しさを増している。食糧不足が深刻化し、8月には国連が北部のガザ市や園周辺で「飢きん」が発生していると発表した。9月にはイスラエル軍がガザ市の制圧に向けた地上作戦を展開し、住民に対して南部に退避するよう迫っている。
イスラエル軍が北部のガザ市制圧に向けて地上作戦を開始した翌日、ガザ市と南部を結ぶ幹線道路では車の行列が続いている。これまでに約90万人がガザ市を後に。中部のデルバラハでは今も深刻な食料や物資の不足が続いている。避難所に医師に娘の様子を見せるためにやって来たイスラ・ユニスさん。娘が生まれる前、もう1人子どもがいたが栄養失調と感染症により1歳6カ月で亡くなった。NHKガザ事務所・サラームカメラマンは改めてガザの惨状を知ってほしいとし「映像を通してパレスチナの人々への共感をさらに深めてほしい」と語った。
南部ハンユニスにある地域の基幹病院、ナセル病院は1年で3回攻撃を受けた。それでも地域最大級の病院として多くの患者を受け入れている。WHOによるとガザ地区にある病院は36。しかし現在14の病院のみが部分的に機能、医療を十分に提供できる病院はない状態。看護部長として現場に立つムハンマド・サケルさんは世界の人たちにこの状況から決して目をそらしてほしくないと訴えている。
防衛大学校准教授・江崎智絵さんは「イスラエル軍はハマスに支援物資を渡らないような提供メカニズムというものを今年に入ってから確立してきた。今の状況ではない配分システムがどういうふうに構築されるのかが鍵ではないか」、大阪大学准教授・辻田俊哉さんは視聴者からの声「最近のイスラエルによるガザ地区への攻撃は度を超えている」に対し「過剰な武力行使はずっと2023年10月7日以降からずっと続いている」などと述べた。
ガザには今も48人の人質が捕らえられている。このうち生存しているのは20人程度とみられている。その1人、ガイ・ギルボア・ダラルさん。連れ去られていなければ翌年の春、来日予定で飛行機のチケットまで取っていた。父親は仕事を辞めガイさんの解放に向けた活動を続けている。
防衛大学校教授・江崎智絵さんは「人質を解放しなければイスラエルはそれを口実に戦闘再開しかねない。ハマスは人質は解放して次の交渉に何らかの望みを託しているのではないか」、大阪大学准教授・辻田俊哉さんは「今回は一気に1回で人質を解放するというのがトランプ大統領による合意和平案の大きな特徴」などとコメント。
イスラエルでは日本から見える光景とは違った世界観が広がっている。ガザでは6万7000人以上が死亡し、そのおよそ半数が女性と子どもとされている。にも関わらず、イスラエルで今年8月に行われた世論調査では“ガザに罪のない人はいない”という設問に対して「同意する」と答えた人は62%にのぼった。まるでハマスの戦闘員と一般の市民とを区別していないかのような印象を受ける。背景に、イスラエルではガザの市民の犠牲がほとんど報じられていないことがある。リベラルな論調で知られるイスラエルの有力紙「ハーレツ」のコラムニストであるギデオン・レビは今のイスラエル国内の報道について「取り上げられるのは常に2つだけ。“人質と兵士”“犠牲者と遺族”、それだけ」などとコメント。実際にイスラエルの主要なテレビ局のニュース番組、先週の放送を見てみると、私達が日々目にするガザのやせ細った子どもや瓦礫の中で嘆く人々については映像はおろか話題にものぼらない。レビはその理由について「視聴者や読者を喜ばせ満足させたいからそうしている」と説明。
大阪大学准教授の辻田俊哉が解説。イスラエルではガザの惨状はほとんど報じられない。考えられる理由の1つは現実から目を背けたいという意見。もう1つ考えられるのはイスラエル社会が分断の社会であること。右派と左派、世俗派と宗教派の対立など、国内での社会的分断が非常に大きい。メディアは、どちらかに偏った意見を言うと違うグループから批判され、バランスを取るのが難しい。ストーリーを単純化して我々の行動は正しいと国民に見せる姿勢が、メディアの中においては見られる。イスラエル国民のパレスチナ問題と向き合わない特徴は2010年代からあった。パレスチナ問題が選挙の議題にすら上がってこない状況が過去15年間以上続いてきた。相変わらず無関心な姿勢は、西岸地区における状況に関しても無関心さを生み出している。今後懸念すべき点は、イスラエル社会の分断がさらに進むこと。
視聴者から「イスラエルの連立政権内の力関係や今のネタニヤフ首相がイスラエル国内でどう評価されているのか」と質問。防衛大学校教授の江崎智絵が解説。イスラエルの連立政権には極右政党も入っている。「ハマスと合意などしてはならない」という強硬な勢力。微妙な連立政権の中で立っているネタニヤフ首相は、連立政権内の力関係と合意を進めていく。今年1月の停戦合意もネタニヤフ首相がトランプ大統領から「ハマスが守らなかったら戦闘を再開していい」という言質を取っていた。これがあったので閣僚らも支持をした。今回はトランプ大統領とネタニヤフ首相が共同記者会見でも示した発言を踏まえると、両者の間でも足並みが揃っていない印象も受ける。アメリカのバックアップがなければイスラエルの孤立化がより深まるのではないか。ネタニヤフ首相も国内ではギリギリで踏みとどまっているラインにいるので、合意を進めようとすると、アメリカの後ろ盾をもって国内を押さえる方向しかない。
辻田俊哉が解説。世論はネタニヤフ政権が合意を進めていく上で、どう影響するのか。スモトリッチ財務相やベングビール国家治安相、いわゆる極右の閣僚による停戦合意に関する反対意見は今後も出てくると思われる。今回に限ってはイスラエル国民の支持が高いので、彼らが反対を推し進めることで次回の選挙でダメージにもなりかねない。今のところ、前回と比べると大きな反発の姿勢は見せていない。ハマスが最終的には停戦合意違反をするので、彼らが望むハマス打倒という目標を先に進められるだろうということで様子見。現時点でのエジプトにおける協議を観察している状況にあるとも言われている。
江崎智絵が解説。今後の国際社会からの働きかけのどこに注目するか。今回のトランプ大統領の和平案だが、広くアラブ諸国、イスラム諸国と事前に調整された上で発表されたと言われている。人質の解放と引き換えにイスラエル側によるパレスチナ人の釈放、一部撤退が実現されれば、次に、そういった国々がバックアップをしてガザの復興、再建という段階に入る。国際的な保証はハマスが目指してきたところ。これをもってイスラエルにも合意内容を履行させたい思惑もあるように思える。アメリカが関与を示したことでトランプ大統領を筆頭とする平和委員会がガザ情勢が順調に進むように監督することが盛り込まれている。アラブ、イスラム世界の国々からアメリカに対して圧力があったのではないか。トランプ大統領の手腕が試されている。
辻田俊哉が解説。国際社会が監視するのは非常に重要な要素。2024年11月のイスラエルとレバノンにおける停戦合意と、その後のガザの停戦協議を比べると、停戦違反をモニターする主体がいるかどうかで合意以降のプロセスが違ってくる。これまでイスラエルとガザの間で停戦合意がうまくいかなったのは、合意の監視の点が大きかった。ネタニヤフ首相は人質の解放、ハマス打倒、ガザがこれ以上イスラエルにとっての脅威にならないことといった戦争目標が掲げてきた。今回のトランプ大統領の和平案はネタニヤフ政権の戦争目標を全て盛り込んだものになっているので、それを拒否すると正当性を失いかねない。ネタニヤフ政権も、どのようにトランプ大統領の提案に対して停戦違反をせずに履行していくかが大きな焦点。
ドイツ南部のミュンヘンでは先月20日に始まったビールの祭り「オクトーバーフェスト」が幕を閉じた。スタートは好調だったが、2周目には多すぎる人で混乱状態となり、2日間会場は閉鎖。今月1日には爆破予告で一時閉鎖。警察はそれでも「全体的にはリラックスした雰囲気だった」としている。16日間で650万人が訪れ、650万リットルのビールを消費した。
7年前、西オーストラリア州の道端の砂の中から発見されたブロンズ製の小さな仏像はベビーブッダというニックネームがつけられている。この地域では1850年代に真珠貝の採取が行われていて、中国人をはじめアジアの国々の人が働いていた。発見者は「ベビーブッダは故郷の中国に帰るときだ」と話し、オーストラリアと中国の外交のシンボルになってほしいと望んでいる。
怖いもの知らずのブラジル人スケートボーダーが22階建ての高層ビルに作られたコースに立った。高さ70メートルから時速100キロ以上のスピードで華麗に滑り降りた。この滑りで最高落下距離と最速速度でギネス世界記録を樹立。
今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者に免疫学の分野で優れた業績をあげた大阪大学特任教授の坂口志文さんがアメリカの2人の研究者とともに選ばれた。坂口さんは体を守るはずの免疫機能が自分の体を攻撃することで起こる病気の仕組みなどの解明に取り組み、1995年に過剰な免疫反応を抑えるリンパ球の一種「制御性T細胞」という細胞があることを突き止めた。坂口さんとともに受賞した、いずれもアメリカの、シアトルにあるシステム生物学研究所のアリー・ブランコウさんと、サンフランシスコにあるソノマ・バイオセラピューティクス社のフレッド・ラムズデルさんは、免疫の制御ができないマウスを研究することで、自らの免疫が自分の体を攻撃してしまう原因となる変異遺伝子を発見し、この遺伝子がヒトの自己免疫疾患にも関係していることを突き止めた。これが「制御性T細胞」の存在に当時多くの研究者が懐疑的だった中、その存在を裏付ける決定的な研究成果となった。これらの発見が自己免疫疾患やがんなどの治療法の開発に新たな道を開いたとされている。ノーベル委員会は「免疫機能がどう制御されているか、その基礎となる知見をもたらした」などと会見。