2025年11月8日放送 4:15 - 5:00 NHK総合

国際報道
2025 止まらないアマゾン森林破壊

出演者
辻浩平 藤重博貴 酒井美帆 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像とキャスターの挨拶。

ニュースラインナップ

「ブラジルアマゾン・森林破壊を防げ」などラインナップを伝えた。

(ニュース)
台風25号 フィリピンで188人死亡

今月4日に台風25号が上陸したフィリピンでは人気のリゾート地セブ島を中心に洪水などによる大きな被害が出た。現地当局によるとこれまでに死者は188人に上り今も135人の行方が分からなくなっている。台風25号は昨夜ベトナム中部にも上陸し、ベトナム政府によると5人が死亡し7人がけがをした他、2800棟以上の建物に被害が出たという。今回の台風が上陸したベトナム中部では先月下旬から大雨が続き今回の台風の被害と合わせて50人以上が亡くなっている。こうした中さらに、台風26号もフィリピンに近づいていて、フィリピン当局は現地時間のあさって夜から10日未明にかけて北部に上陸する可能性があるとしたうえで「大規模な洪水や土砂崩れが起きるおそれがある」として厳重な警戒を呼びかけている。

「COP30」開幕前に首脳級会合

来週ブラジルで開幕する気候変動対策を話し合う国連の会議「COP30」を前に首脳級会合が始まった。会合の冒頭、国連のグテーレス事務総長は温室効果ガスの削減を一層加速させるためすべての当事者に積極的な役割を果たすよう改めて呼びかけた。会合にはイギリスのスターマー首相や中国の丁薛祥筆頭副首相など50近くの国や地域から首脳らが出席、日本からは関係省庁職員による使節団が派遣されている。一方、来年1月にパリ協定から離脱するアメリカのトランプ政権は「他の国を滅ぼそうとしているあいまいな気候目標を追求するために我が国を危険にさらすことはない」として今回の会合だけではなくCOP30にも政府高官を派遣しないとしている。世界2位の二酸化炭素の排出国のアメリカがトランプ政権のもと気候変動対策への関与を低下させる中、各国が協調して排出量削減の取り組みの強化につながる議論ができるのか注目される。

(1.5℃の約束)
止まらない森林破壊 森と生きる 先住民族の現状は

首脳級会合で話し合われる主要なテーマが「熱帯雨林の保全」だ。熱帯雨林の中でも世界最大の広さを誇るのが南米のアマゾン。多くの二酸化炭素を貯蔵するなど地球温暖化を抑制する役割を担っているとされてきた。しかし、違法な伐採や採掘などで森林破壊が進み後戻りできなくなる状態が迫っているとも指摘されている。最新の統計ではCOPが開催されるブラジル国内の熱帯雨林だけでも今年7月までの1年間、東京都と埼玉県を足した面積とほぼ同じ5800平方キロの森林が破壊されたと推計されている。

森林破壊が止まらない理由について、森とともに生きるアマゾンの先住民族の現状を取材した。ブラジルの最大都市サンパウロから飛行機と車で丸2日かけて到着したのがパイテルスルイ族の暮らす先住民族保護区。東京都とほぼ同じ面積の土地に1600人余りが40程の集落に暮らしている。しかし周辺は森がなくなり主に牛の放牧地になっていた。衛星画像で1980年代からの変化を見ても徐々に森が失われている様子が分かる。パイテルスルイ族のリーダーのアルミールスルイさんは「森は私達の命そのもの。食料、薬、精神性、教育を与えてくれる。バイテル族だけでなく、世界全体に対しても果たしている」と語っている。しかし、森林破壊には歯止めがかかっていない。環境保護団体が撮影した写真を見ると、木がなくなり地肌があらわになっている。金などの鉱物資源を違法に採掘した跡だとみられる。アルミールさんたち先住民族が暮らす地域でも時間とともに森がなくなっている様子が確認できるという。アルミールさんたちはドローンを活用した監視部隊や意図的に森を焼き払おうとする動きにも備えて消防隊も発足させた。しかし、十数人の人員で広大な土地を守るのは容易ではない。

長年、現地の先住民族を支援してきた国際NGOはアマゾンの熱帯雨林がその機能を失わないためにも森林保全の取り組みが必要だと強調する。さらに、開発でできた牧草地や農地の土壌が痩せていくことが新たな森林破壊につながっているという指摘もある。1980年代から日本企業が運営している農場では1万1000ヘクタールの土地におよそ4000頭の肉牛を飼育している。放牧地として活用を続ける中で牧草が十分に育たなくなり放牧する牛の数を減らさざるをえなくなった区画もある。森林伐採のあとにできた牧草地や農地の土壌が痩せると別の土地が必要になる。このサイクルが新たな森林破壊を引き起こす要因の一つだと指摘されている。農園を運営する日本企業では使えなくなった土地を回復させる実験に乗り出した。他の日本企業とも連携し肥料などを活用した場合と使わない場合を比較。どの程度、牧草やとうもろこしなどの成長に差が出るのか検証が続けられている。大橋徹平社長は「日本の技術でより肥沃化させ、生産効率をあげて新たな伐採を食い止めるところまで寄与できればいい」と語っている。ブラジル政府は10年かけて日本の面積を上回る40万平方キロの痩せた土地を回復させたいとしている。

脅かされる先住民族/“環境保護”政権の課題/首脳級会合 対策打ち出せるか

先住民族にとっては自分たちの生活アイデンティティーとも直結しているだけに森林破壊は深刻な問題。しかし、森林破壊に反対の声を上げることは命懸けだ。長年、森林破壊に反対してきたアルミールさんは違法な伐採者などから脅迫されたこともある。一方、先住民族の中には脅されたり金銭的に買収されたりして森林破壊に加担してしまう人もいるという。アマゾンの熱帯雨林の保全や保護を進めるのは容易ではない。ブラジルでは前のボルソナロ政権から環境保護を重視するルーラ政権に変わった。確かに、ルーラ政権の発足で森林破壊の規模は減少傾向にある。違法な森林破壊の監視や摘発がきちんと行われるようになってきたことが背景にある。しかし、ブラジル国内には開発を求める声も根強くある。例えば、ブラジルが世界最大の生産量を誇る大豆について、森林破壊を防ぐため新たに森林が伐採された土地で生産された大豆を企業が買わないようにするという自主的な規制が存在していた。しかし、生産者側からはこの規制を撤廃して一定の範囲で開発が認められるべきとの声が上がっている。

今回の首脳級会合では温室効果ガスの排出量のさらなる削減につながる具体的な方策これを、各国が協調して打ち出せるかどうかにもかかっていると思う。今回の首脳級会合ではブラジルが主導する形で熱帯雨林の保護を進めるために新たな基金が立ち上がった。日本も含む53の国や地域が賛同した一方、アメリカは気候変動対策に積極的だったバイデン政権から消極的なトランプ政権に代わり、新たな資金の拠出が見込めなくなっている。こうした影響を緩和していかに気候変動対策を来週から始まるCOP30でも日本を含む各国の姿勢が問われる。

インドネシア 島を襲う漂着ごみ

海は、排出される二酸化炭素の3割を吸収するなど地球最大の炭素の吸収源で温暖化対策に大きな役割を果たすことが期待されている。一方、海は、地球の表面積の7割を占める程大きく、誰にも気付かれないまま環境破壊が進む危険をはらんでいる。インドネシアの首都ジャカルタから東に2000km離れたワンギワンギ島から現地の状況をリポートする。ワンギワンギ島の周辺は特に自然が豊かなことで知られており国立の海洋公園に指定されてもいる。ただ、海上に大量のプラスチックごみが浮かんでいる。海を漂うごみは島の人々の暮らしに深刻な影響を及ぼしている。

ワンギワンギ島は人口およそ6万。海洋民族のバジャウと呼ばれる人たちが暮らしている。彼らは海の上に家を建てて暮らしている。また近年では海の上を埋め立ててその上に家を建てて暮らしている人も増えてきているという。これは海とともに暮らす海洋民族ならではの暮らし方だっただが大量のごみが漂着するようになり島の人々を苦しめている。 島で捨てられたものもあるだが地元自治体の環境局の担当者に話を聞いたところ「ごみは西から吹く風に乗って運ばれてくる、つまり島の外から運ばれてくる」と話していた。海洋プラスチックの問題に詳しい愛媛大学の日向博文教授は「首都ジャカルタなど都市部のごみが漂着している可能性がある」と指摘している。世界銀行の推計ではインドネシアで海に流出するプラスチックごみの量は年間およそ34万トン。さらに11月はちょうど季節風が西から東の方へと吹く時期で特に、流れ着くごみの量がまさに都市部からワンギワンギ島の方へと流れ着いてしまう。日向教授によると「いったん島に漂着したごみは沖合の海流に戻ることが難しく、風向きや地形によってはこのように大量のごみが集中して滞留することになる」と話している。研究者の間では漂着ごみのホットスポットと呼ばれ今、インドネシアに限らず世界のあちこちに出現していると考えられている。バジャウは漁業で生計を立て海とともに生きる海洋民族だが、漂着ごみによってその暮らしは危機にひんしているという。

皆さんの声 募集中

番組ではQRコードから皆さんの声を募集。

WOW!The World
ガラス食器メーカー 危機脱出

1年程前、倒産の危機にあったフランスのガラス食器メーカー・デュラレックスを従業員組合が引き継ぎクラウドファンディングで資金を募ったところ24時間で1900万ユーロ、33億円以上の資金を調達。数か月以内にガラス製の保存容器を発売する。

ひげの長さでギネス世界記録

アメリカアラバマ州のルドルフさんは最も長いひげのギネス世界記録の持ち主。伸ばし始めたきっかけは長い髪に合わせるため。ひげは自分の体の一部なので切るつもりはないという。

各地でスーパームーン

今年最も大きく明るく見える満月スーパームーンが世界各地で観測された。ビーバーが冬に向けて巣を作り始めることから11月の満月はビーバームーンとも呼ばれる。

Voice to Voice
ニューヨーク市長選 アメリカの変化は

番組に寄せられた視聴者の意見の中から今週は、アメリカの大きな変化がかいま見えたニューヨーク市長選挙について紹介する。ニューヨーク市長選挙で当選したのは、民主党のゾーラン・マムダニ氏。1年程前までは無名と言ってもよかった人物が一気にアメリカ最大の都市のトップに躍り出た。注目を集めたのは34歳という若さや、イスラム教徒であることそしてアフリカのウガンダ出身というユニークなバックグラウンドからだけではなく「民主社会主義者」を自認していたからだ。民主社会主義者についてマムダニ氏は「今あった尊厳を持って市民が生活できるよう必要なものを提供する」と語っている。その言葉どおりマムダニ氏は家賃の値上げ凍結、保育や市営バスの無料化そして、最低賃金の2倍近い引き上げだ。こうした訴えはインフレなどで生活費が高騰し苦しい生活を送る多くの市民の心をつかんだ。マムダニ氏が主張する民主社会主義はより公正な富の再分配を意味している。つまり、富裕層により課税することで財源を生んでその財源で、家賃の値上げ凍結やバスの無償化といった一般の労働者の生活のコストを下げると主張したマムダニ氏の政策が、ニューヨークの有権者に受けたという。

アメリカでは「社会主義」や「共産主義」という言葉、一般的にはネガティブな意味を持つ。冷戦時代に覇権を争ったソビエト連邦を想起させるから。国家がすべてを管理し物資や食料の不足すら招いた体制。だからこそトランプ大統領はマムダニ氏を「共産主義者」と批判している。しかしアメリカのシンクタンクが今年3月に行った世論調査で、社会主義の考え方についてどう思うかと聞いたところ、若い人ほど好ましいと考えていることがわかった。マムダニ氏が掲げた民主社会主義は、若者にとっては決してネガティブな言葉ではなく、行き過ぎた貧富の格差を是正する富の再分配と、ポジティブに受け止められている。マムダニ氏に投票した人の割合を見ると30歳以下では78%、30歳から44歳でも66%。年を重ねるごとに減っており、先ほどの社会主義にとって好ましいと考えている人の割合と重なっている。生活コストの高騰にあえぎ貧富の格差が拡大する中で社会主義的な考え方に心を寄せる若者たちがマムダニ氏の当選に後押しした。一方、マムダニ氏を巡ってはその政策の実現性が疑問視され大衆受けする政策を訴えるポピュリストだという批判されることすらある。マムダニ氏はトランプ政権へのアンチテーゼとなり民主党を勢いづけるのかそれとも、公約を守れず新たな政治への幻滅を生むのか。その真価が問われるのはこれからだ。

(ニュース)
トランプ大統領 中央アジア5か国と重要鉱物開発で協力

トランプ大統領はカザフスタンやウズベキスタンなど中央アジア5か国の首脳をホワイトハウスに招いて会談した。その後の夕食会では重要鉱物の開発などで協力を深めていく考えを示した。ラトニック商務長官も6日、SNSでカザフスタンの産業建設相と重要鉱物資源について、覚書を交わしたことを明らかにした。アメリカとしては重要鉱物を巡り圧倒的なシェアを占める中国に依存しない安定的な供給網の構築を図っていて日本を含む各国との協力を深めている。

イギリス 鉄道開業から200年

東京・新橋は日本における鉄道発祥の地。新橋と横浜の間を結んで今から、およそ150年前の明治初期日本で最初の鉄道が開業した。それを記念して新橋駅前には蒸気機関車が展示されている。当時の蒸気機関車はすべてイギリスから輸入されたもので、イギリスでは日本の江戸時代後期のちょうど200年前、世界で初めて鉄道が開業した。

今年、開業から200年の節目を迎え鉄道が脚光を浴びている。この秋、イギリス北東部ダラム州で行われたイベントではチャールズ国王の弟の一人エドワード王子や多くの鉄道ファンの人たちが鉄道の開業200年を祝った。1825年、世界で初めて人や貨物を乗せて走った蒸気機関車「ロコモーション号」。記念イベントではそのロコモーション号を復元した列車が登場。開業時と同じ区間を走行した。近年、一度に大量の人や貨物を運び飛行機よりも二酸化炭素の排出量が少なく環境に配慮した乗り物として再評価され、去年、EU内では鉄道の利用がこの10年で最も多くなった。イギリスとヨーロッパ大陸を結ぶ高速鉄道のユーロスターの乗客数は去年過去最多となった。ユーロスターの乗客者数は5年間で、およそ1.8倍に増え今年は初めて2000万人突破が見込まれている。イギリスからフランス、ベルギー、オランダの3か国を結ぶ直通列車は5年後をめどにドイツやスイスにも乗り入れる計画となっている。短い時間で予定を詰め込むのではなく旅の質や環境への配慮を重視するスロートラベルという新たな価値観が広がる時代。運営会社は、ロンドンからパリまで移動した時の1人当たりの二酸化炭素の排出量は鉄道の方が飛行機より97%少ないとアピールしている。世界を変えた鉄道の誕生から200年。その魅力は世代を超えて受け継がれ時代とともに新たな価値観が生まれている。

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