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オープニング映像。
大阪・関西万博の「遊んでい館?」には紙製の人工芝が使用されている。一般的な人工芝はプラスチック製で、人工芝の破片がマイクロプラスチックの発生源のひとつになっている。一方で紙の繊維は自然界で分解されるため、紙の人工芝は環境に優しい。今回のガリバーは紙の人工芝を手掛けたKPPグループホールディングス。世界トップクラスの紙の専門商社だ。
KPPグループホールディングスは世界ぞれぞれの地域を担当するグループ会社を保有。日本の国際紙パルプ商事は北東アジア、オーストラリアのスパイサーズはオセアニアと東南アジア、フランスのアンタリスはヨーロッパとアメリカを担当している。グループ全体の年商は6700億円、従業員数は5974人。国内に29か所、海外に184か所の拠点を持つグローバル企業だ。KPPは製紙会社から紙を仕入れて様々なユーザーに販売する流通を担っている。それだけではなく、ユーザーが使った古紙を回収してリサイクルするために製紙会社に戻すことも行っている。KPPロジスティックスには製紙会社から仕入れた約1000種類の紙が倉庫に置かれている。ここから首都圏のユーザーに配送される。1日平均の運搬数は約300回。平屋であれば紙を取り出してから積み込むまでの時間が短時間で済むという。今、流通業界は運転手不足という問題を抱えている。その一つの解決策として、ドライバーが荷物を積み込む際の時間をできるだけ短くする取り組みが行われている。データを取ることで効率化、作業時間のさらなる削減を狙っている。
イオンモール川口前川の一角にKPPが設置した最新型のリサイクルボックスがある。買い物客が持ち込んだ古紙の重さに応じて買い物ポイントが付与されるシステム。回収された古紙が集められるのがKPPのグループ会社の古紙集荷センター。ここでは質の高いリサイクルを行うため、不純物を取り除いている。丁寧に分別された日本の古紙は高品質で、世界中で需要があるという。KPPは国内販売量の7割以上をリサイクルしている。試合などで観客が使った紙コップは汚れやラミネート河口が施されているため、可燃ゴミとして焼却されていた。ザスパ群馬で回収した紙コップは協力会社に持ち込んで、汚れをきれいに落とし細かい破片にしてから紙のリサイクル専用工場に搬入する。約40℃のお湯でほぐして紙コップ表面の不純物を除去。使用済み紙コップはボックスティッシュの箱として再生されてザスパ群馬の公式ショップなどで販売されている。
1924年、大同洋紙店として創立。1925年には上海に拠点を開設するなど順調に成長していくが、1945年に戦災で大阪本社が消失し海外の資産もすべて失った。1968年、本社を東京に移転。1970年代のオイルショックによる需要の落ち込みを合併による経営基盤強化で乗り越えて、1990年代のバブル崩壊後の深刻な不況も合併による企業体質強化で乗り切った。国内でペーパーレス化が進む一方で、成長する世界市場を取り込むため2019年、オーストラリアのスパイサーズを子会社化。202年にはフランスのアンタリスを子会社化。傘下に収めた子会社はKPPが持っていなかったパッケージングや広告・室内装飾などの分野を得意としている。
紙の人工芝はKPPの新たな取り組みの一つ。プラスチックの人工芝由来のマイクロプラスチックが海洋汚染の主な原因のひとつとなっていることがわかってきた。素材を自然に分解される神に変えて環境に貢献しようという。人工芝に使われる紙は濡れても引っ張りに強い強度を保つ。原料はエクアドル産のマニラ麻。植物繊維の中では最も強靭な繊維のひとつ。マニラ麻を紙にしてテープ状にカットして縒りをかけて糸にする。密に芝を縫い込み空気が入りにくい構造をつくって、火がついても燃え広がらないようにしている。強度の高い紙の繊維は人工芝以外にもサッカーのゴールネットや衣類の素材にも使われている。耕作放棄地が残されている福島・浪江町でソルガムという植物を育てている。葉や茎が飼料として使われ、植物繊維はバイオマス燃料として使える。
「祖業である紙のビジネスを大切にしつつも、新しい分野に展開して新しい事業領域を拡張していく」と坂田社長は語った。
知られざるガリバーの次回予告。