- 出演者
- 吉田樹
首都圏でバスの減便や廃止が相次いでいる。
- キーワード
- 足立区(東京)
オープニング映像。
ドライバーの時間外労働などが規制される2024年問題は長時間労働の是正が期待される一方で首都圏のバス事業に影響が出ている。以前までは年間の労働時間の上限は3380時間とされていたが4月からは3300時間に引き下げられ、退勤から出勤までの勤務間インターバルは11時間以上に定められた。
1日9000便以上を運行する横浜市営バスでは春に367便を減便した。横浜市交通局では現在1089人が運転手として勤務していて減便をしたが約120人の人出が足りていないため休日出勤や残業が増えている状況だという。運転手の女性は休日出勤の要請に積極的に応じ、家族との時間は減るが地域の生活の足を支えたいという思いが強いと話す。横浜市交通局は人材確保のために賃金水準や採用年齢を引き上げた。
足立区では4月にコミュニティーバスが廃止された。住民たちは署名を集めて区に撤回を求めたがバスの停留所が撤去された。コミュニティーバスができたのは20年前で足立区が計画して民間のバス事業者が運航を担っていた。廃止路線の沿線住民達は今まで行っていた場所や病院・買い物と言った日常生活が途切れてしまったと話す。足立区担当者はバス事業者に運転手の確保ができないと告げられ廃止に至ったと話す。
バスに関する解説。今朝も千葉県の路線を運行する鎌ヶ谷観光バスが人手不足などの影響もあってバス事業から撤退する方針を固めたことが分かった。さらには千葉県は35の事業者に対して調査をしたところ、全体の6%にあたるおよそ1900便が減便されたという。さらには、川崎市も先月10日から平日一日当たり95便、全体のおよそ2%を減便している。さらには、川崎市も先月10日から平日一日当たり95便、全体のおよそ2%を減便している。前橋工科大学・吉田樹さんは「バスは朝の時間帯に集中する。そこに対して多くの運転手を確保しなければいけないのが前提で、夕方や夜などにも利用者がいるので、夜の便の繰り上げが進んできている」などと話した。首都圏のバス路線を見ると大手バス会社の路線、公営バスの路線、コミュニティーバスの3つが挙げられるが、中でも廃止まで至ったのがコミュニティーバスである。吉田さんは「コミュニティーバスは自治体が運航のルートや時刻を決めている。2000年くらいから首都圏でも広がりを見せ、中小のバス会社も引き受けるようになった。一方で、自治体が企画しているとはいいながらも補助金などがないのが実態で、補助金があったとしても入札という形になるので単価が低い。バスの経費6割ぐらいが人件費で、コミュニティーバスだとそれを賄うのが難しい」などと話した。今後について吉田さんは「採用活動自体は強化されているものの、ギリギリの人数で運行されているので、どうしても休日を返上してしまう。このままでは減便が進んでしまう」などと話した。首都圏のバス事業の課題として「事業者任せ」を指摘している。吉田さんは「東京を中心として人口や住宅などが増えていく。ビジネスとしてかつては成り立っていたが、今の状況だとビジネスの中で人が足りていない状況である」などと話した。
この春、横浜市青葉区を走る路線に新たなバスが導入された。その名もタンデムライナー。全長は一般のバスのおよそ2倍。一度に100人を超える乗客を輸送できる。この連節バスは運転手の人手不足解消のカギを握ると期待されている。これまで100人を超える乗客を運ぶには2台のバスが必要だった。それを連節バスであれば1台で運べるため運転手が1人浮く。その運転手を人手が足りない他の路線の運行に回すことができる。このバス会社が連節バスの導入に踏み切れたのは横浜市による支援があったためである。2台分の大きさに合わせた停留所の拡張工事など走行環境を整備する費用を横浜市が負担した。東急バス・石洋一さんは「我々だけでは規格外の車両を導入するのは難しく、横浜市との連携がなければ実現できなかった」などと話した。
地域のバス路線の再編に自治体自身が主導的な立場で関わった地域もある。取り組みの中心を担ってきた前橋市交通政策課の南雲貞人さん。前橋市内で営業する事業者は6つ。合わせて38の路線が運行されていた。前橋市全体のバス事業を効率化するため3年前、市が音頭を取って6つの事業者などと共同経営に関する協定を締結した。すべての路線にICカード乗車券を導入し利用者のビッグデータを集めた。こうしたデータをもとに市と事業者がダイヤや路線の再編について意見を交わしてきた。そして今年4月、前橋市のバスダイヤは一新された。路線の利用状況に応じて運行本数を見直すなど限られた運転手を効率的に配置することで2024年問題の影響を最小限に抑えたのである。バスの利用者からは利便性が向上したという声も上がっている。
バス減便に対する各地の取り組みに関する解説。自治体に期待される役割について前橋工科大学・吉田樹さんは「これまでのバス事業は事業者が競い合うことによって良いサービスができると思ってきたが、これからはコーディネート力が求められる」などと話した。国は今年3月、専門の技能があると認められた外国人に与えられる在留資格である特定技能にバスの運転手を含む自動車運送業を新たに追加することを決めた。これについて吉田さんは「バスの運転手は安全に運転するのは勿論、お客さんとコミュニケーションを取らないといけない場面がある。馴染むまでには時間がかかる」などと話した。バス路線維持について吉田さんは「これまでの路線バスは街作りの中で位置づけられることが少なかった。首都圏や郊外など、必要なバスサービスを行政の中で計画的に出来るかが大事になってくる」などと話した。
「岩合光昭の世界ネコ歩き」などの番組宣伝。