保守党政権の不祥事や失政を厳しく追求してきたスターマー党首はかつては人権派の弁護士だった。そして検察局長を経て2015年に議員初当選。規則に厳しく派手なパフォーマンスを好まないため有権者からはしばしば“つまらない”と揶揄されることもある。工具職人の父と看護師の母のもと4人きょうだいの2番目として育ったスターマー氏、電話料金を支払えず、回線を止められるなど貧しい生活の中で勉強、スポーツ、音楽に熱心に取り組み一家で初めて大学に進学。しかし、家族が母親が難病のため病院にたびたび搬送され、弟には出産時の合併症による学習障害があった。スターマー党首の伝記を執筆したトムボールドウィン氏はこうした家庭環境が世の中の不公平や不公正を正さなければならないという使命感を培う土台になったと指摘する。2020年に労働党の党首となったスターマー氏は党の変革に着手。大学の無償化をはじめ、エネルギー・水道の国有化など党の伝統的政策を放棄。反ユダヤ主義者とされた前党首を追放するなど急進左派だった党のイメージを中道に戻した。意識しているといわれるのはブレア元首相。自由主義経済と福祉政策の両立を目指すニューレーバーを掲げ1997年に政権交代を実現した。近寄りがたかった自らのイメージを変える努力もしてきた。庶民の苦しみがわかるリーダーとして支持を広げてきた。巧みな演説やユーモアとは無縁のスターマー氏。しかし、派手な演出や空約束ばかりの政治に裏切られてきたという国民の思いが後押しとなっている。