ブータンでは一昨年、コロナ禍で停止していた国外の観光客の受け入れを再開したが、コロナ前の3分の1に留まっている。観光税は一時従来の3倍程度の200ドルに設定しており、客足の戻りに影響を与えたと指摘されている。観光ガイドのドルジ・ノルブさんは海外に教育と就労の機会を求め、オーストラリアに行く計画を立てている。国外に移住する人の数は一昨年1年間で人口の2%にあたる1万6000人余である。インドの物価高や世界的なエネルギー価格の高騰を背景に、インフレが生活を圧迫している。政府は人々の幸福を重視しながら経済成長との両立を目指す政策として、新しい都市作りに取り組んでいる。物流が多いインドとの国境近くの1000平方キロメートル以上の土地に国際空港や鉄道を建設し国外からの投資を呼び込み、寺院や瞑想のための施設なども整備し、自然や固有の文化との共生を目指す。今年1月に就任したツェリン・トブゲ首相は、雇用創出を柱に精神的な豊かさも尊重したいとしている。