アメリカ・バーモント州のホームレスは約3300人。コロナ禍前の約3倍となった。長年支援活動に携わってきた団体の代表は、状況はかつてないほど深刻だという。コロナ禍以降バーモント州はホテルの部屋を借りて市民に提供する支援策を拡充してきた。しかしコロナ禍が落ち着くと連邦政府からの資金が打ち切りになり多くの人が支援を受けられなくなったという。住居費の高騰もホームレス増加の大きな要因となっている。南部・フロリダ州では平均的な家に住むためには時給換算で4500円以上の収入が必要と試算されている。住宅の支援窓口には相談が相次いでいる。ある夫婦は収入を増やすため妻が新たな資格を得ようと州内の学校に通う計画だが、住宅は見つからず車も故障。橋の下での生活を余儀なくされているという。支援団体はこうした人々のために住宅の建設が急務だと訴える。ホームレスの増加が街全体の深刻な課題になっている都市もある。美しい街並みや先進的な街作りで知られる西部・オレゴン州ポートランド。この地域の去年のホームレスの数は6200人あまり。8年間で65%増加した。住民を対象にしたある調査では街の最大の課題に「ホームレス」を挙げた人が44.5%と最も多く、「生活費の上昇」と答えた人の2倍以上にのぼった。ホームレスの増加とともに治安の悪化も懸念されている。治安の悪化で事業の縮小を余儀なくされた人も出ている。市内で2つの洋服店を営んでいたマーシー・ランドルフォさんだ。店がコロナ禍の2022年7月以降、15回にわたり強盗の被害にあい営業を断念した。残る1つの店舗では防犯対策に多額の費用を投じて営業を続けている。さらに街の人達の不安を高めているのが薬物依存者への対策だ。オレゴン州では4年前に成立した法律で、違法薬物を少量所有していても逮捕せず、依存しないよう支援することになった。その結果、ホームレスの人々の間で薬物依存が増えたとも指摘されている。専門家はホームレスや薬物依存を含めた総合的な対策が必要だと指摘する。