巨大基地へと姿を変えていく馬毛島は、これまで幾多の開発計画に翻弄されてきた。戦後の食糧難だった1950年代に国策の開拓団が入り、最盛期には528人が暮らしていた。トビウオ漁や酪農が盛んで、「宝の島」と呼ばれた。しかし農業の不振や子どもの進学などで島を離れる人が増え、1980年には無人島となった。その後レジャー施設や石油備蓄基地、使用済み核燃料の貯蔵施設を誘致する案まで出たが、いずれも立ち消えとなった。民主党の鳩山政権が打ち出した沖縄米軍普天間基地の県外移設で、候補地に上がったのは鹿児島県の徳之島だった。しかし激しい反対運動が起こり徳之島への移設は実現せず、急浮上したのが馬毛島だった。2019年に安倍内閣が島の大部分を所有していた民間企業から160億円で買収し、アメリカ軍も訓練できる自衛隊基地建設に踏み切った。決定したことが地元に知らされたのは、アメリカ政府に伝えられた後だった。今年5月、基地建設に反対する漁師らが馬毛島へ向かった。島の東側の海は、地元の漁協が補償金22億円を受け入れ漁業権を一部放棄している。馬毛島で40年以上漁を続けてきた濱田純男さんは、国を相手に基地建設の差し止めを求める訴訟を起こしている。反対派の漁師らが権利を持つ「入会地」を残し、島の99%以上を国が買収している。入会地に行くには国有地を通らなければならないが、防衛省の職員が立ち入りを認めなかった。馬毛島の対岸の種子島の港には、毎朝2000人近い工事関係者を運ぶ漁船が並ぶ。海上タクシーの収入は1日あたり8万円で1か月で160万円にもなり、漁を辞めて海上タクシーに専念する漁師もいる。鮮魚店の魚の仕入れは、基地建設が始まってこの2年半で4割減ったという。基地建設には6000人近くの労働者が吸い上げられ、種子島に深刻な人手不足をもたらしている。養護老人ホームでも人手不足が慢性化し、収容人数を減らす予定だという。馬毛島から南西に40キロの世界自然遺産の島「屋久島」には、ここでしか見られない手つかずの自然が残されている。だが2年前に屋久島沖に米軍オスプレイが墜落し、乗員8人全員が死亡。残骸の回収や乗員の捜索に地元の漁師も協力したが、「近くを飛んでいたとは思わなかった」などと語る漁師もいた。馬毛島で計画されるアメリカ軍の戦闘機訓練について、詳細な飛行ルートを尋ねた番組の取材に対し防衛省は明確な回答をしなかった。屋久島の山岳ガイド・内室紀子さんがオスプレイを島で初めて目撃したのは、墜落事故の3週間前だった。馬毛島の基地が、世界自然遺産の森に軍用機の轟音が鳴り響く日常をもたらす恐れはないのだろうか。屋久島の西12キロに位置する口永良部島は、86人が暮らす火山島。中国海軍の艦艇が近海を頻繁に航行するようになり、領海侵入も起きた。住民は「抑止力において、防衛においても馬毛島の基地建設は仕方ない」などと話した。
住所: 鹿児島県西之表市西之表16314-6
URL: https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/roudoukyoku/hw/h_map/h_map17
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