モルディブは人口約50万人の国ではあるが、アジアと中東を結ぶシーレーンに位置しているため国際的に大きな影響力をもつ国となっている。モルディブでは1988年にクーデター未遂事件が発生した際にインド軍が派遣されて以降インドがモルディブの後ろ盾のような存在になった。2013年に中国が一帯一路を掲げてモルディブのインフラ整備に多額の融資を行うと親中路線へと方針転換を行ったが、2018年に中国のいわゆる債務の罠に陥ってからは再びインド寄りになった。しかし今月17日に就任したムイズ大統領は親中派として知られていて、就任式では「モルディブの主権維持のためいかなる外国の部隊の駐留も許さない」と表明し、インド軍撤退をインド政府に要請している。インド政府にとって南アジア一帯は長年インドの裏庭的存在だという認識を持っているため、今回のような件は自国の勢力圏への侵略だとみなす意見もあるという。長尾さんは「インドにとってこの地域は自分たちが責任をもって安全保障を主導する立場にあるという認識が強いので、今後モルディブに中国が部隊を駐留するようになったらインドにとって顔に泥を塗られたことになる」、「インドと中国の防衛も大規模ではあるが、中国との貿易にはインド政府の許可が必要なため、国境問題などを念頭に政府としてはいつでも中国との貿易関係を白紙にする用意をしている」など分析した。こうした中インド近海では直近で中国・パキスタンやロシア・ミャンマーが合同で軍事演習を行っていて、特にインドは対中国の要としているロシアが今後インド洋情勢で中国に接近する可能性を懸念しているとみられている。