世界中が既定路線と見ていたプーチン大統領の出馬表明だがそこには周到な演出が込められていたようだ。2017年に行われた前回の大統領選の出馬表明のときは国民の関心が経済に集まっていたので、プーチン大統領が選んだのはロシア中部の自動車工場だった。従業員からの「我々はあなたを支持します」というエールに答えるかたちで「ありがとう。私は大統領選に出馬します」と演出していた。そして今回はウクライナ侵攻開始後初めての大統領選挙となるので、軍人への勲章授与式の場が出馬表明の舞台に選ばれた。8日、クレムリンで行われた軍の授賞式。プーチン大統領に歩み寄る人たちのなかにある人物がいた。ウクライナ東部で独立を宣言しているドネツク人民共和国の議長で軍の司令官をつとめるアルチョム・ジョガ氏だ。ジョガ氏は「あなたはドンバスの大統領でありドンバスはあなたのチーム。ドンバスはあなたを必要とし、ロシアもあなたを必要としている。」と話した。そしてプーチン大統領はこの要望に応える形で大統領選への出馬を表明した。来年の大統領選挙はロシアが一方的に併合したウクライナの4州でも投票が強行される予定で、この戦場となっている4州からの要望であることを演出しているかのようだ。そしてこの場面にはもう1つの演出があった。プーチン大統領を囲んだ女性たちが戦士した兵士の母親たちだという。一人は「私達はあなたと一緒にいる」と表明。そしてもう一人は「次の選挙には立候補しなければなりません。あなたは私達の大統領。」と言ったそうだが、このやり取りをロシア大統領府が公開している。この一連の出馬表明の状況について元時事通信・モスクワ支局長で拓殖大学の名越健郎特任教授は「囲まれて出馬表明したのは“プーチンの戦争”から“ロシアの戦争”に格上げしたい思いがある。茶番劇だが国民の信任を得た形にするため今後も続くだろう」と見ている、などと伝えた。