北九州市に住む大学院生の三枝まりは小学校3年生から中学校3年生まで不登校で、その間、一度も健康診断を受けることはなかった。成人してから腰の痛みを感じて整形外科を受診したところ背骨が曲がってしまう側弯症と診断された。成長期に見つけられていればコルセットで治療できる病気だった。さらに去年は腸の病気になり吐き気が止まらず体重が10キロ以上落ちた。側湾症により腸が圧迫されたことが原因の1つだと見られている。自身の経験から三枝は大学院で不登校と子どもの健康について研究している。不登校を経験した子どもへの調査では健康診断を毎回受けられていたのは1割程度、受けなかったときがあるやほぼ受けなかったと回答したのは6割に上った。不登校の子どもたちにも健康診断を受けさせたいと横浜市では先月、署名活動が行われた。活動を行ったのは不登校の子どもに居場所を提供しているNPO。ここに通う子どもの半数以上が健康診断を受けられていない。学校に行けない子どもたちが健康診断を受けるには大きな壁がある。健康診断の項目は内科、眼科、耳鼻科、歯科と多岐にわたる。学校で受けられない場合はそれぞれ別の医療機関を回らなければならないうえに医療保険も使えないため費用も高額になる。NPOは負担なく健康診断を受けられるよう支援を求めている。不登校の子どもたちの健康を守っていこうと対策に乗り出した自治体がある。大阪府吹田市では地元の医師会などと協議を重ね3年前から小中学生が学校外で健康診断を受ける際の費用を全額補助する制度を設けた。内科、眼科、耳鼻科、歯科のうち歯科以外の科目は内科でまとめて受診できるため回るのは内科と歯科の2か所だけで済む。同じ学校の友達と会うことが怖いと感じる場合は自分の学校の学校医だけでなく離れた学区の学校医を受診することもできる。予算は年間50万円余りで、昨年度はこれまで受診していなかった人のおよそ2割にあたる157人が健康診断を受けた。市内のフリースクールに通う中学2年生の岩崎一翔は制度を利用して学校外の医療機関で健康診断を受けた。