龍一郎くんは大英博物館の収蔵庫内部で「可候」と画号が書かれた自画像を見せてもらった。ウトウトするリアルな北斎自身の姿だった。本の最後のページには日付と林忠正の判子が押されていた。林忠正は美術品を海外に売りさばき一時期日本では国賊とも呼ばれたが、浮世絵ブームで粗悪品や贋作も出回っていたヨーロッパでは林忠正が判子を押したものは一流のものとお墨付きを示すものだった。北斎作品が海外で評価されると林の評価は一変した。龍一郎くんは明治時代になると江戸時代の文化は否定され浮世絵は鼻紙同然だった、林忠正が海外に持ち込んだおかげで価値も保存状態も保たれたと話した。続いては「流離王雷死」の下絵を見せてもらった。版元の事情によって下絵が摺られることなく保存され、パリのオークションに渡って以降行方不明になっていた。最近のオークションで見つかり、大英博物館に所蔵された。龍一郎くんはすごい数の直線で構成され閃光が走っているのがわかる、北斎の作品に今の漫画は影響を受けていると話した。
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