南アフリカは経済を中心に西側と良好な関係を維持している一方で、外交ではウクライナ侵攻を受けて西側がロシアを非難する中でロシア寄りの姿勢をとっている。長らく続いたアパルトヘイトが撤廃されたあとの1994年に行われた民主的な選挙を経て大統領に就任したANCのネルソンマンデラ氏は、白人政権によってテロリストとされ27年も厳しい獄中生活を送ったにもかかわらず、白人への報復ではなくむしろ「赦しと和解の精神」を訴え世界の多くの人の胸を打った。白人政権によってテロリストとされ27年も厳しい獄中生活を送ったにもかかわらずマンデラ氏は白人への報復ではなくむしろ赦しと和解の精神を訴え世界の多くの人の胸を打った。2年前にロシアのウクライナ侵攻を受けて国連総会でロシアを非難する決議案の採決が行われた際、ANC政権はロシア非難には同調せずロシアに対する経済制裁にも加わらない姿勢を鮮明にした。実はアパルトヘイト時代、西側の多くの国が表向きは人権や民主主義を標榜しながらも実際には白人政権を支持していた。その一方で、ANCを支援していたのは当時のソビエトだった。南アフリカの大多数である黒人の国民感情の中には欧米不信が根深くある。これがウクライナ侵攻を受けて噴き出し、ロシア寄りの姿勢につながっていると分析されている。今回の総選挙で与党のANCが初めて過半数割れすれば、連立政権となる公算が高まるが、ANCの連立相手にはさらに反欧米の姿勢が強い政党がなる可能性もある。南アフリカのように西側と一線を画す動きは、グローバルサウスの間で広がっている。