春木謙一さんは父の代から続くクリーニング工場を営んでいる。生まれ育った実家は地震で大規模半壊。高齢の両親をすぐに姉の住む東京へ避難させることを決めた。避難から1年近くが経過し、両親の状況は大きく変化した。父・謙吉さんは今年8月に脳梗塞を発症し、母・初枝さんは地震前から軽度の認知症を患っており、輪島に戻るよりも避難生活を続けた方が良いのではないかと悩んでいる。今月、謙吉さんが自宅の解体前に一時帰宅。地震が起きたままの自宅に様々な思いが込み上げた。輪島を忘れたことは1日もない。それでも新たな環境で生きていかざるを得ないと考えている。81歳女性は七尾市の自宅が半壊し、大阪市内で1人で避難生活を送っている。地震前は近所の人との他愛も無いお喋りが生きがいだったが、今は部屋にこもりがちだという。関西の広域避難者を支援する団体によると、体調を崩したり、心が不安定になったりする人も増えているという。団体では定期的に広域避難者たちの交流会を開き、避難先で地域包括支援センターやかかりつけ医など地域とのつながりを作る大切さを伝えている。広域避難が長期化し、新たな土地で生きていく選択をする人もいる中で、もとの自治体と受け入れる側の自治体が連携し、支援を継続していくことが求められている。