北朝鮮が誠意の贈り物だとする風船。ぶら下がっていたのは紙くずなどのごみ。車のフロントガラスを割る重さのものもあった。北朝鮮が先月末から1600個以上飛ばしたと見られる風船。韓国の広い範囲に落下し、軍事境界線からおよそ300キロの都市でも確認されている。ソウル市内では韓国外務省や日本大使館が入るビルの屋上にも落下。さらに大統領府から800メートルほどの場所にも落下している。今回の事態を専門家はどう分析しているのか。統一研究院・ホンミン研究委員「韓国の安全保障にかなり深刻になりうる。悪意を持てば(北朝鮮が)細菌やウイルス、生物化学兵器を載せて送ることも十分可能。自分たちの立場を強く表明するのが狙いだと思う」。韓国政府は9日、緊急のNSC(国家安全保障会議)を開催。対抗措置として決定したのが、南北の軍事境界線付近での宣伝放送の実施。北朝鮮向けのラジオ放送を大音量のスピーカーで流すもので、行われたのは6年ぶり。以前、軍事境界線の北朝鮮側で宣伝放送を聴いていた脱北した元将校・チャ・リヒョクさんは「どんな兵器よりも一番強力なのが宣伝放送」と話す。さらに専門家は、宣伝放送の効果は以前より増しているという。韓国の宣伝放送はこれまでのところ一度だけだが、北朝鮮側では新たな動きも。軍事境界線付近に構造物が設置されていて、韓国側に宣伝放送するためのスピーカーではないかと報じられている。今回の北朝鮮の風船、韓国側から北朝鮮を批判するビラが飛ばされたことに対する報復措置として始まった。ただ、北朝鮮がこれほど多くの風船を続けて飛ばしたのは異例のこと。南北間の緊張は高まっており、対立がさらにエスカレートしないか注視していく必要がある。