プロ野球がシーズン終盤をむかえていた9月。栗山は来シーズンのチーム編成に奔走していた。この日、見届けたい2軍の試合があった。それはプロ12年目の鍵谷陽平、栗山が日本ハムの監督に就任したばかりの頃に獲得したピッチャーだった。鍵谷の歩みは決して順風満帆ではなかった。けがに悩まされ移籍するも戦力外となり栗山の元に戻っても1軍にあがることはできなかった。引退後の進路はまだ決まっていなかった。栗山は自分は選手を愛しぬいているのか分からなくなっているとめずらしく気落ちしていた。視察に訪れた球場で巨人の幹部から声をかけられた。チームの裏方という選択肢、栗山は鍵谷にその適切があると考えていた。