重要鉱物の一つ黒鉛はEV(電気自動車)のバッテリーに欠かせない負極材の原料。しかし世界の生産で7割以上を占める中国は2023年以降、黒鉛の輸出規制を強化し事実上の囲い込みを続けている。EVに必要な原料を中国に過度に依存することを避けたい日本は中国以外の輸入先の確保に奔走し、近年高純度の黒鉛が採掘されるスリランカに注目した。ここにビジネスチャンスを見いだしたのがスリランカで太陽光発電事業を手がける柴田商事HDの木田泰光部長だ。木田部長は現地企業と連携し、黒鉛の開発事業を新たにスタートする予定だという。こうした民間の動きに足並みをそろえるように日本政府も南アジア地域と経済を一体的に発展させる産業回廊構想を提案した。スリランカは日本にとってヨーロッパやアフリカへとつながるシーレーンの要衝となっている。しかし近年、中国は多額の融資の見返りとしてスリランカのインフラを取得する動きを活発化。その象徴ともいえるハンバントタ港は2017年から99年間にわたり中国が運営権を握っている。こうした状況を踏まえ日本は対中国を念頭に経済連携を強化している隣国インドとスリランカを結ぶ新たな経済構想を提案した。きょう行われた日本とスリランカの企業が集まった会議で、日本の官民が仲介し、黒鉛などのスリランカ産の原材料や部品をインドで加工生産する新たな経済ネットワークを作ることで世界市場で中国のシェアを低減させようと話し合った。スリランカの財界関係者は「これは我々にとって非常にいい機会だ、全面的に支持する」と述べた。産業回廊構想を仕掛けた経済産業省の幹部は「スリランカは中国の代替的なサプライチェーン先であり、多様化する国の候補になるのではないか」と明かした。
