暮らしに関わる税の改正について、自民党、公明党が本格的な議論を始めた。国民民主党と合意した「年収103万円の壁」の見直しに伴う控除額の引き上げ幅や税収が減ることに対する財源の確保策などが焦点となる。自民党議員が続々と向かった先は、税制調査会、略して税調の総会。自民党の税調は、時の総理大臣でも口出しができない聖域とも言われてきた。永田町で今も語り継がれるのが、長年、党の税制調査会長を務め、ミスター税調とも呼ばれた山中貞則氏。政府の税調と方針が対立し、記者から「政府税調を軽視しているのではないか」と聞かれた際、「軽視ではない、無視しておる」と発言。自民党の税調が持つ権限の大きさを物語っている。少数与党となって迎えることしの税調。自民党税制調査会総会の冒頭、自民党・宮沢税制調査会長は「昨年までと違って、自公で(自民党、公明党)で決めたものが成案になるわけではない。国民民主党を入れた3強協議も進む。例年12月10日には結論を得ていたが、少し遅くなるという気もしている」と述べた。来年度の税制改正に向けた今回の議論では、「年収103万円の壁」の見直しに伴う控除額の引き上げ幅や、税収が減ることに対する財源の確保策が焦点となる。国民民主党が重視するガソリン減税の在り方などを巡っても、議論が行われる見通し。政府側から出席した村上総務大臣は、「103万円の壁」の見直しに伴う地方税の減収を念頭に、「地方財源の確保については極めて重要な課題」と指摘。地方自治体への影響に関連し、総会に出席した自民党・逢沢元国対委員長は「地方自治体の経済に不安が走ることは、絶対にあってはならない」、片山元地方創生相は「地方の歳入に穴が開くと、地方、国の構造を考えると耐えられない」、宮沢税制調査会長は「これからの交渉事。今の段階で私の考え、意見を言うわけにはいかない」と述べた。来年度の税制改正に向けては公明党も税制調査会総会を開いた。公明党・赤羽税調会長は「ことしはなかなか難しい状況。結果のみせどころだと前向きな気持ちで、しっかりと頑張っていきたい」と述べた。これに先立ち、公明党・斉藤代表は、「年収103万円の壁」の見直しについて「地方財政に悪影響が出ないような結論にしなくてはいけない。国民民主党、野党にも財源についての責任ある議論に加わってもらいたい」と述べた。地方税の減収が懸念される中、きょう東京都内で開かれた全国知事会。出席した知事からは、「減収分の補填は国が責任を持って恒久的な財源で確保すべきだ」という意見が相次いだ。鳥取県・平井知事は「我々は政策(「年収103万円の壁」見直し)に反対するものではない。鳥取県でもこれがなされた場合、子育て予算の半分がすっ飛んでしまう。財源インついて国が考えろと言いたい」、山梨県・長崎知事は「減収の補填はマストだと思うが、問題は補てんしかた。(国と地方で)折半ルールはなしだと」と述べた。その後、総理大臣官邸で開かれた政府主催の全国知事会議。全国知事会の会長を務める宮城県・村井知事は、「地方の財源に大きな穴があいてしまっては意味がない」と述べ、政府に対し減収分の補填を恒久的な財源で行うよう求めた。これに対し石破総理大臣は「一方だけよくて、そのしわ寄せをどこかが受けるようなことはまずいので、丁寧に議論していきたい。自治体の行政サービスが安定的に提供できるよう、必要な一般財源の総額は確保していく」と述べた。