NHKニュース おはよう日本 戦後80年
被爆地として知られる長崎では熱で溶けたビンやご飯が真っ黒になった弁当箱などが展示され、原爆の威力を伝える説明が丁寧に行われているが、使われた人の思いは限られた情報しか伝えられないことが多かった。被爆体験を語れる人が減っていく中で心に響く展示を目指すために追加調査が進められている。長崎原爆資料館の海老沢優紀さんも追加での調査を行っていて、この日は内野ナカさんから話を伺っていた。原爆の爆風で内野さんが体に浴びたガラスについて新たに話を聞き取っていて、顔から足まで多くのガラスを浴びる中で、傷だらけでも痛みがわからなかったと振り返る一方で内野さんは今もガラスが体内に残ってしまっていて触られるといたいと話していた。長崎原爆資料館の学芸員は資料そのものから被爆の実態を学んでもらうことを重んじてきたことから被爆者の情報は限られていたが、被爆の体験を語れる人が減っていく中で、心に響く展示を行うことが重要と考えるようになっていった。海老沢さんは自分ごととして資料を見つめていただきたいと話していて、遺族にも生前の姿を聞き取る活動も進めていった。伝わり方が大きく変わった資料の1つは家族8人のうち6人を失った被爆者・松尾孝二さんの罹災証明書で、松尾さんはすでに亡くなっていたものの遺品から肉筆の手記が見つかり「母が裏の畑の中へふきとばされ、死んでいた」「涙の出る余裕もなかった」などと家族をなくした心境が綴られていた。成果の調査を加えた企画展も今年2月から行われていて、松尾さんの罹災証明書も資料となるとともに、熟読する人の姿が見られた。人を感じてもらう展示について、海老沢さんは遠い昔の話というわけではなく考えるきっかけになれるような展示でありたいと話している。寄贈者とも遺族とも連絡がつかない資料についても公的な記録から情報を集めているという。