時をかけるテレビ いのち 瀬戸内寂聴 密着500日
2015年8月中旬、瀬戸内寂聴さんの闘病記の冒頭部分15枚がようやく書き上がり、10年来の付き合いの担当編集者が読んだ。病気の話が書かれてなく、つらいかもしれないが、がんのことや告知のことを書いて欲しいと指摘された。闘病記というよりは病気に対する心構えのような文章になってしまっていた。
順調に回復していた瀬戸内寂聴さんの体調に異変が起きた。手足の痺れと痛みを訴え、主治医の診察を受けた。診断結果は老化現象で根本的な治療法はないという。
お盆の8月14日、瀬戸内寂聴さんは霊を迎えるためお堂に入った。最近見る夢は全部死んだ人の夢で、死んだら彼らにまた会えると思ってるのと語った。
五山の送り火が行われた8月16日、瀬戸内寂聴さんは外へ出た。送り火を見ながら、死ぬことは恐くないんだけど、死んでみないと分からない、死んでも魂は残る、死んでも何もないなら生きてるこの世の意味がないような気がすると語った。帰宅するとディレクターを誘って晩酌した。
瀬戸内寂聴さんに突然、闘病記のタイトル「いのち」が浮かんだ。ただの闘病記にとどまらず、「いのち」というより大きなテーマでエッセイではなく長編小説として書き直すという。