2024年12月17日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
「子どもがいない」が言えない… 広がる不妊治療の陰で

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
「子どもがいない」が言えない 広がる不妊治療の陰で

不妊治療を続ける40代の女性、2年前に保険が適用されるようになりさまざな治療に取り組むようになった。保険適用は42歳まで、42歳を過ぎて精神的に追い詰められるようになったという。最新の調査では、不妊治療を途中でやめた女性の36%がPTSDである確率が高いことがわかってきた。不妊治療が広がる一方で生きづらさを感じる人々がいる。

キーワード
PTSD
オープニング

オープニング映像。

「子どもがいない」が言えない… 広がる不妊治療の陰で
「子どもがいない」が言えない 広がる不妊治療の陰で

晩婚化や医療技術の発達で増加している不妊治療。体外受精の実施件数は保険適用や助成金の拡充もあり年間54万件にのぼる。今や4.4組に1組が不妊治療をする中で今回、不妊治療に関する声を募集した。当事者の生きづらさはなぜ生まれるのか?

不妊治療を行う医療機関には今40歳以上の女性が増えている。沖縄にあるクリニックには年間5000人以上の40代女性が訪れる。不妊治療を受ける41歳女性はこれまで自費で治療を受けていたが、保険適用で今は3割負担で受けている。この日、治療の結果を主治医から伝えられた。今強い焦りも感じるようになっているという。不妊治療の保険適用は42歳まで。42歳を迎える来年は自分にとって決断のタイミングだという。このクリニックには保険適用の年齢が過ぎた人も少なくない。8年間治療を続ける47歳の女性。一般的に不妊治療を受けた人の出産率は年齢とともに低下していき、40歳で10%、42歳で5%になる。国は医学的な理由で保険適用を42歳までと定めている。医療が進歩し、高齢出産が増える中で納得いくまで続けたいと考えている。

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沖縄県空の森クリニック

不妊治療の終え方が分からないという夫婦もいる。夫は精子の数が少ない乏精子症と診断されている。夫婦で不妊治療を行ったが流産も経験、保険適用の制限である42歳を過ぎたため、一度はやめる決断をした。しかし、夫婦で将来について話し合う中で妻が治療の再開を提案した。不妊治療の再開は経済的にも体力的にも負担がかかるが、子どもができた後の家族像をイメージして前向きに取り組んでいる。でも、いつまで治療を続けるのか先のことは話し合っていないという。不妊治療を断念した人の心には大きな負担がかかっていることが分かった。40歳から60歳未満の不妊治療を経験した女性の36%がPTSDの症状を抱えている可能性が高いという。研究を行った香川香さんは子どもが産みやすい制度や環境が充実することは良いことだと考えている。その上でどう治療を終えるか心のケアの整備が必要があるという。

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PTSD乏精子症関西大学

不妊治療を続ける中で焦り、諦めきれない、諦めたけど苦しいという気持ちを覆っているのが、社会の見えない圧力だという。くどうみやこさんは近年は不妊治療が一般化したことで授かる努力をするのがあたり前という風潮が社会に広がってきている、子どもをもつべきという考え方や制度や支援などが後押ししてそれが見えない圧力になり、子どもがいない人が生きづらさを感じてしまっているという。一方で治療の止め時がわかないという方も多い。社会背景から子どもがいないことで抑うつ的な症状が出てしまうという。女性は子どもを産んで一人前であるという「母性神話」に関する調査では、約半数が結婚してると分かるとお子さんは?と質問されて嫌な気持ちになるという。杉浦真弓さんは日本社会では子どもができないと女性の責任という考え方が浸透しているので男性に原因があると深く傷ついてしまうという。

どう支える?不妊治療の心のケア

不妊治療中の人や終えた人に専門的な心のケアを行う取り組みがはじまっている。カウンセリングを行うのは不妊治療に関する専門資格を持つ臨床心理士。当事者の悩みを受け止め、気持ちを整理しながら前向きに考えられるようにしていく。これまでこのクリニックでは治療が終わると患者と関わることがなくなり、心のケアまではできていなかった。それを改善するために、専門資格を持つ心理士が対応する体制を作りケアができる仕組みを整えた。6年前に不妊治療を終えた島袋さん、今も継続的にケアを受けている。19年間治療を続けた島袋さんは当時、不妊治療をやめたいという気持ちを夫には言えなかった。ケアを受けるうちに自分の気持ちを夫に言えるようになったという。そのとき、夫からそれでも夫婦だと言われて救われたという。夫婦でお互いの思いを言葉にして、島袋さんの家族感が変わったという。

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沖縄県空の森クリニック

国の支援によって各都道府県に不妊症などの患者さんのための相談窓口が設置されている。くどうみやこさんは子どもがいない人生を歩むとなったときに、パートナー同士で今後の人生について話しができるといいが、パートナーには言いづらという方は少なくないという。当事者同士が集まる場所を作って開催しているという。

「子どもがいない」が言えない 誰もが生きやすくなるには

あらゆる立場の人に配慮しようと取り組む企業がある。三井住友海上火災保険では子育てをする人や不妊治療に取り組む人に手厚い支援制度を整えてきた。そうした中、異なる取り組みを開始した。育休をとる社員からの挨拶があり、業務を引き続き社員に手当が渡される。休業期間が3か月未満の場合は1人最大で3万円、3か月以上の場合は10万円が支給される。この制度を提案した人事部の丸山さん、目指したのは異なる立場の人への理解だという。制度開始から1年、5割の職場に手当が支給された。職場にはお互い様という空気が流れつつあるという。

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三井住友海上火災保険
「子どもがいない」が言えない 大切なのは“お互い様”

くどうみやこさんはエンパシー・他社を理解する力のこと、自分の凝り固まった価値観をほぐしてあげることが大切だと話した。杉浦真弓さんは今の日本では生殖の教育がほとんどされていない、学校で教えていくべき、子どもは授かるものであり努力で手に入るとは限らない、今だに妊娠のメカニズムは分かっていない、妊娠できて当たり前ではないと話した。

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