- 出演者
- 桑子真帆
注目の選挙が相次いだ今年、脚光を浴びたはSNS。兵庫県知事選の出口調査では、投票の際にSNSや動画サイトを最も参考にしたと答えた人の割合が新聞・テレビを上回った。SNSで選挙はどう変わるのか?独自のアンケート調査などから徹底分析する。
オープニング映像。
出口調査で3割の人が投票をする際にSNS・動画サイトを最も参考にしたという先月の兵庫県知事選。SNSの情報で投票先と変えたのか?など投票の判断にどう影響したか詳しくは分かっていなかった。そこで、先週独自にアンケート調査を行った。投票で最も参考にしたのがSNS・動画サイトだと答えた人の7割が投票先を変えるに至った、投票先を決める上で重要な要素になったと解答した。テレビ、新聞、ラジオのマスメディアを最も参考にした人に比べると、投票の判断に強い影響を与えていたことが分かった。
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- 兵庫県知事選挙
兵庫県知事選挙が告示される約1か月前、SNSに動画が投稿された。動画を目にした会社員の藤原さんは普段から政治への関心が高く、今回の選挙でも積極的に情報を集めていた。パワハラの疑いなどで失職した斎藤元彦氏。現在も事実関係の調査は続いている。告示日、斎藤氏は改革を前に進めたいと訴えた。NHKの期日前の出口調査では序盤、斉藤氏は対立候補の稲村和美氏にリードされていた。藤原さんはSNSには次々と斉藤氏の情報が流れてくるようになったという。SNSで発信された情報はこれまで政治にあまり関心がなかった人にも届きはじめていた。神戸市に住む30代の会社員は立花孝志氏の動画をよく見ていたという。自ら立候補しながら斉藤氏を支援するという対応をとった立花孝志氏は動画をYouTubeに投稿していた。選挙期間中、SNSには誤情報や真偽不明な情報の投稿が続いた。候補者の稲村氏の情報は本人が否定しても拡散は止まらなかった。稲村氏の後援会はうその投稿で選挙運動を妨害されたと告発状を提出した。NHKでは確認された事実を元に公平性を担保しながら候補者の政策などを伝えていた。飲食店を経営する梅辻さんはテレビよりもSNSの方が知りたいという情報があった、最終的にYouTubeの情報を信じたという。今回のアンケートで投票をする際にSNS・動画サイトを最も参考にしたという6割の人が斉藤氏の印象が良くなったとしている。「斎藤元彦」と合わせて検索されたワードを分析すると、「演説予定」が急増していた。SNSをきっかけに斎藤氏を応援するようになった藤原さんは演説を聞きに行ったという。投票まで1週間となった日曜日、出口調査で斉藤氏が稲村氏に迫る。その翌日、斉藤氏はSNSに触れながら演説をした。終盤に斉藤氏が逆転し、投票日を迎えた。投票率は前回の知事選よりも14.55ポイント上回った。選挙が終わった今、投票した人たちは何を思うのか?梅辻さんは、選挙戦がおもしろかったと思ってしまった、それが危険な気もしたが、それが投票率をあげることにつながると思うと話した。
SNSの影響は7月の東京都知事選挙でも注目された。都知事選で2位となった石丸伸二氏。票を伸ばした一つの理由として指摘されているのが切る抜き動画。演説や配信した映像を短く編集したり、テロップで加工したりする切り抜き動画。Tik Tokでは支援者などが作った動画が後援会の公式アカウントの数十倍再生されていた。10月の衆議院選挙でも各党はSNSやネットでの動画発信に力を入れていた。中でも多きく議席を伸ばした国民民主党。手取りを増やすというキャッチフレーズで現役世代を中心に訴えかけた。切り抜き動画の作り方を説明し、拡散を呼びかけた。選挙期間中、各政党のショート動画やライブ配信がどれぐらい見られたか比べてみると、国民民主党が最もよく見られていた。慶應義塾大学の谷口教授は、印象深いシーンがあるとそれを切り取った動画が自己派生的にできて意図として広がる場合もある、長々と動画やテレビを見るよりも情報を短くすぐにつかみたいというニーズに合った情報拡散は続くと思うという。
斉藤知事のパワハラの疑いなどについて、兵庫県の内部調査では、パワハラがあったと確証までは得られなかった、パワハラがあったと断定するものではないとしている。今回の選挙でPR会社の代表が投稿した記事の内容について、公職選挙法違反の疑い告発状が出されているが、斉藤知事は違法性を否定している。SNSの選挙への影響について、JX通信社代表の米重さんは地殻変動が起きた、これまでは選挙に必要なものとして地盤・看板・かばんと言われてきてた、今年はネット地盤が加わったという。東京大学の牧原教授は投票率が上がっているのでSNSの影響が大きかったと思う、都道府県や市町村の選挙はSNSの影響が大きい、既存のメディアがカバーしきれない部分もあるからだという。兵庫県知事選で斉藤氏、稲村氏に投票した人がそれぞれ最も参考にした情報を見てみると、大きな違いがある。斉藤氏に投票した46%の人がSNS・動画サイトを参考にしていて、中でもYouTubeを見ていたという人が多かった。稲村氏に投票した人はテレビ・新聞を参考にしていたという人が6割を超えた。選挙に関する情報の信頼度について、アンケートではYouTubeやXなどを信頼できると答えた割合は多くない。テレビや新聞が信頼できないと答えた割合も2~3割あった。こうした批判は、自分たちが求めている情報を提供してくれていないという不満の現れ
先月、ルーマニアで行われた大統領選挙で無名の候補がTikTokを軸に選挙運動を展開し、投票の結果一度は首位になった。しかし、憲法裁判所は、公正な選挙の過程が損なわれたと選挙を無効にする判断をした。アメリカでは大統領選挙を経てSNSの利用でも社会の分断が広がっている。Xを所有するイーロン・マスク氏に不満を持つ人たちがXから新興SNSに流れていると指摘されている。
JX通信社の村重さんは、SNSは少なくとも有権者にとってはメリットが大きい、その結果として若い世代が注目してきているが、SNS特有の情報を勧めてくる仕組みアルゴリズムには気をつけなければならないとした。牧原教授は今の公職選挙法がSNS時代にそぐわなくなってきているので改正が必要だと指摘、SNSを活かすことはできると話した。