- 出演者
- 桑子真帆
地域の特産品が受け取れるふるさと納税。全国の自治体に寄付された総額は昨年度はじめて1兆円を超えた。そうした中、都市と地方の間で格差が広がっている。海の幸が人気の自治体に集まった寄付額は160億円、地方税収の16倍。都市部では本来あった110億円もの税収が寄付によって流出。
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二重に被災した石川県輪島市。地震がおきた去年1月に集まった寄付額は前年比74倍の14億円余。豪雨にみまわれた9月にも寄付が急増し、総額はおよそ20億6000万円。ふるさと納税で集まる寄付は通常の税収に加えて入るボーナス。その使い道は自治体独自で判断できる自由度の高い財源。自由度をいかして復旧復興の独自支援に使っている。その一つが伝統工芸の輪島塗。被災した事業者に国は復興費用の一部を負担する支援制度を用意している。輪島市はそこに、ふるさと納税で得た財源から支援を上乗せ。被災者の自己負担を10分の1まで減らした。
ふるさと納税をめぐって全国の自治体が獲得競争に力を入れている。10年前の全国の自治体の住民ひとりあたりの受け入れ額と現在を比べると地方を中心に大きくプラスとなる自治体が増える一方、都市部では流出が加速している。この状況に危機感を高めているのが住民1人あたり1万1000円マイナスとなった世田谷区。流出を防ごうと今年度新説された対策担当課。流出の額は区内のゴミ収集や償却にかかる費用に匹敵する。ふるさと納税による自治体間の格差是正を求める声は都内の他の自治体からもあがっている。去年11月には小池都知事も制度の見直しを求めた。
一方、多くの寄付を集める自治体では町が大きく変わり始めている。住民1人あたり230万円の寄付を集める北海道白糠町。人口約7000人の漁業が盛んな町。サーモンやイクラなど自慢の海産物が評判を呼び届いた寄付は約168億円。町の収入の半分以上がふるさと納税で住民から得られる地方税の16倍に匹敵する。多額の寄付を財源に町では独自の子育て支援に力を入れている。町の教育施設は中学校と小学校、こども園を併設している。給食費や医療費は無料、保育料も無料。移住者への支援も充実している。農家になりたい移住者に最大3年間の給与を支給している。ふるさと納税は将来のまちづくりの積立金にもなっていてその額は188億円。棚野孝夫町長は衰退が続地方にとってふるさと納税は欠かせないという。
ふるさと納税に格差が広がっていることについて、伊藤敏安さんは本来入ってくる地方税収の一部が奪われていくなかで行政サービスを意地していかなければならない状況、ふるさと納税が1兆円を超えてると集めるところ流出してしまうところの偏りが大きくなること、固定化してしまうのが問題だとした。総務省は各地方団体の創意工夫の結果、格差は制度上出てくるものと認識、制度設計時から格差の広がりがここまで大きくなるとは想定していないとしている。
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福井県敦賀市。去年3月の市議会である問題が取り上げられた。敦賀市の財政を脅かす、ふるさと納税なかったら問題。今、敦賀市の財政は毎年の歳入だけは歳出を補えない。そこをふるさと納税で補填することが状態化している。周遊バスの運営や公園の維持管理費などの行政サービスに活用してきたが、昨年度、寄付額が7億円減少し、ふるさと納税なかったら問題が現実味を増してきた。ふるさと納税減少の背景にはおととし10月に国が行ったルール変更がある。その直前の9月、寄付の駆け込み需要が発生した。敦賀市で人気の返礼品のカニなどは駆け込み需要に間に合わなかった。ふるさと納税の流動性の高さに振り回された。
総務省はこれまでもルール変更を繰り返していて、今年も10月からポータルサイト経由の寄付のポイント付与等の禁止するとしている。総務省はふるさとや関心のある地方に対する感謝、応援を伝える目的で基準の見直しを適時適切に行い本来の趣旨に沿った運用を目指したいとしている。伊藤敏安はふるさと納税は不安定な財源、本来は集めた税収で行政サービスを実施するものだが、財政が厳しいときにふるさと納税で追加的なサービスをしたりすると、事業が立ち行かなくなる可能性があると指摘。行政の場合は「出ずるを量りて入るを制す」という考え方が重要、どういうサービスを行うか明確にして、それに必要な財源を確保するのが本来の姿だとした。
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大阪・泉佐野市は6年前、アマゾンのギフト券を配布するキャンペーンを実施。過度な返礼品で多額の寄付を集めたとして、国に制度から除外された。最高で497億円だった寄付額は22億円まで減少し、ふるさと納税がもつ流動性の高さを痛感してきた。いま、泉佐野市は全国の自治体から注目を集めている。新たな取り組みが「#ふるさと納税3.0」。寄付を集めた後に使い道を決めるのではなく、はじめから使い道を特定するクラウドファンディング型のふるさと納税。農家の射手矢康之さんは泉佐野市とともにこの制度を3回活用。取り組んだのは玉ねぎを効率的に生産し、全国に届けるための費用を集めるプロジェクト。集めた寄付は4600万円、苗を植える機械を購入。
クラウドファンディング型のふるさと納税は全国の他の地域でも採用されている。災害で休業した砂むし温泉復旧、ジビエセンター開設など。伊藤敏安さんは期限と目的、金額をさいしょに設定することは本来のふるさと納税に近い形、多く集めても地方税収に結びつかないところもある、ふるさと納税が寄付金の代わりになっているのではないかという問題もあると話した。
富山県立山町。町の職員があらたな返礼品を探す中で隠れた地域の魅力と出会った。地域の人たちが作ったクラフトビール。その原料はこの地域で当たり前に飲まれている湧き水。ねむったままだった地域の魅力をふるさと納税が教えてくれた。