- 出演者
- 桑子真帆
スマホ1つで申し込み、仕事は最短15分というものもある。今、スポットワークという自由な働き方が広がっている。一方で働く人に新たな課題も出てきた。人手不足の時代に生まれた新たな働き方を注意点とともに深堀りする。
オープニング映像。
スポットワークの登録者数は今やのべ2100万人、市場が急拡大している。これまでの一般的な働き方では事前に履歴書を書いたり面接に行ったりすることで働く場所が決まっていた。スポットワークではスマホの手続きだけで働く人と企業がマッチングするというもの。
スポットワーカーの増田さん(仮名)。多いときには月に20回以上活用している。生活費の足しにしたいと本業の介護福祉士をしながら、スキマ時間に仕事を入れている。この日は翌朝に募集されていた皿洗いの仕事に数分で申し込むことができた。申し込んでから働くまでスマホで完結する。職場での煩わしさがないのも魅力だという。この日は3時間足らずで約4000円、即日で口座に入金された。
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- 小田原(神奈川)
スポットワークは企業の課題解決にも役立っている。長年人手不足に直面している新潟県長岡市の温泉旅館。1年前からアプリを導入し、年間でのべ2000人を採用してきた。この旅館が直面していた課題は繁忙期に合わせた働き手の確保だった。そこでスポットワークを導入し、数時間単位の雇用ができるため忙しさに合わせて必要な人数を確保できるようになった。やってきたのは仕事を掛け持ちする人や主婦など、スキマ時間で働きたい人だった。このアプリには長期で人材を確保できる仕組みもある。優秀な人材をつなぎとめる自社メンバーという機能。旅館では長期で働いてもらいたい人をスカウトし、数か月単位の雇用契約を結んだ人もいる。
スポットワークは企業にとっては経営の改善を迫られるという一面もある。居酒屋の店主が気にかけているのはアプリ上に寄せられる働く人からの評価。このスポットワークのアプリには働いた人が企業を評価するという仕組みもある。客席が4つのフロアにまたがり、働く人から不満が上がっていたこの店、店主は職場環境を見直すことにした。仕事を細かく切り分け、分担。1人の従業員がなるべく1つのフロアにとどまれるようにした。すると、店に寄せられる評価は改善した。アプリで人手を確保する時代、経営者は働く人の評価に向き合うことが前提となっている。
スポットワークは働く人によっても新たな課題も生み出している。1年ほど前にアプリに登録して仕事をはじめた女性。以前、求人内容と実際の仕事が違かったが、企業からの評価が気になり職場で抗議できなかったという。これまで企業からの高い評価を獲得してきた女性は、その影で職場での我慢を積み重ねてきたと感じている。先月、弁護士たちが開いた相談会でもアプリの評価機能に関する相談が寄せられた。スポットワークの経験者1000人が回答した調査では、全体の半数近くが何らかのトラブルを経験していると答えた。
働く人を守る仕組みがスポットワークに対応しきれていない現実もみえてきた。複数のスポットワークで生計を立てていた男性。去年3月に、宅配の仕事中にバイクで転倒しけがで仕事ができなくなった。男性は労災と認められ、賃金額に応じた休業補償が支払われることになった。国の制度では複数の仕事をする人はけがをした日などに労働期間が重なっていれば、すべての職場で支払われていた賃金が補償の対象となる。しかし、スポットワークだけで働く人はけがなどをした日に契約期間が重なっていないことが多く、すべての仕事ができなくても補償の対象はけがをした職場のみとなる。
スポットワークは働く人にとってはスキマ時間で働ける、企業にとっては欲しいときにピンポイントで人手が確保できる。一方で課題も出てきている。川上敬太郎さんは、報復的な評価や求人トラブルについて、スマホが行き渡って新たに生まれた課題だと思うと指摘した。アプリ事業者が加盟するスポットワーク協会は違法・有害と疑われる求人案内や求人者のチェック、ホームページに問い合わせ窓口を設置したりしている。事業者は求人募集を行う企業へ呼びかけ・指導、労災補償について賃金の合算方法を整理したいとしている。トラブルを防ぐためには働くときの基本を見直すこと。募集している会社の確認、労働条件通知書の確認、労災保険の記載内容を確認すること。
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- スポットワーク協会
新潟県長岡市では自治体が主導しておととしからアプリの運営をはじめた。主婦や高齢者など7000人が登録している。特徴は自治体が責任をもち、働く人や企業、アプリ事業者に目を配ること。自治体はアプリ事業者と協力し、求人を行う企業に対してきめ細やく指導する体制を作った。すべての企業と面談を実施し、適切な労務管理の指導をしている。闇バイトが疑われる企業や悪質レビューなどを人の目で監視している。さらに、働く人がトラブルにあった場合の独自の対策もある。トラブル対応をアプリ事業者だけに任せず、自治体でも相談を受け付けるようにしている。
川上敬太郎さんは自治体が入ることで安心して働ける企業である裏付けができるようになる、信頼できる情報を常に提供することが大事だという。スポットワークのいい所は即時性だが、間に入ることでタイムラグが生まれてしまうので、安全性と利便性を天秤にかけることはなると指摘した。人手不足による倒産件数は2024年は342件、この10年で最多となった。今後、スポットワークが広がっていくと好循環が生まれる可能性はある、便利であるので抜け出せなくなることもある、キャリアを積みたいという観点がなくなってしまうこともあるとした。