2025年2月5日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
制裁下のロシア 実は“好景気”?“死の経済”の実態に迫る

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
ロシア“死の経済” 制裁下の実態は?

経済制裁が続くロシアでは今想定外の経済成長に湧いている。成長をけん引しているのは政府によるばく大な軍事施設。兵士への報酬は5倍以上に急増している。死の経済とも呼ばれる異様な自体を生み出している。

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ロシア
オープニング

オープニング映像。

制裁下のロシア “死の経済”の実態に迫る
ロシア“死の経済” 制裁下の実態は?

ウクライナへの軍事心から今月で3年。この間、ロシアに課された経済制裁の数は2万1,000件で史上最大規模。しかし、GDP成長率をみてみると、ロシアは一時急落したがその後持ち直し、去年は3.8%と先進国と比べても高い成長を記録する見込み。

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ロシア

モスクワの和食レストランには連日、多くの人たちでにぎわう。人気は一皿2000円のカリフォルニアロール。自動車の販売はこの3年で2倍以上に急速に回復している。モスクワ市内の自動車販売代理店で家族が注目していたのは中国車。欧米のメーカーが撤退する中、この店では中国車が売り上げの7割を占めるようになった。侵攻直後、反対派を弾圧するなどの政策を進めてきたロシア。一方で国民を懐柔するための様々な施策も同時に進めてきた。その一つが住宅政策。去年には年間7000億円を住宅ローンの補助にあてた。これを追い風にモスクワでは高層マンションの建設が続いている。政府の補助を利用し住宅を購入したIT技術者のアレクセイ・ベロウスさん。おととし、モスクワ郊外に約2900万円の新築マンションを購入し、政府の補助で金利は16から5%となり、月々の返済は大幅に減った。

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ウラジーミル・プーチンモスクワ(ロシア)

ロシア経済をけん引するのは年間18兆円にものぼる軍事支出。各地の軍事工場は24時間体制で稼働している。政府の資金で新たな雇用が生まれ、平均賃金は1.5倍に増加、市民の購買意欲が高まり経済がまわっている。ロシア経済学者のウラジスラフ・イノゼムツェフさんは、この事態は欧米にとって想定外だと指摘する。経済が上向く中、政府がばく大な資金を投じて集めようとしているのが兵士。ロシアの街中には志願兵募集の看板がある。日本円で810万円の年俸、ロシアの平均月収で換算すると5年分に相当する額。入隊時に支払われる一時金は侵攻後上がり続け、450万円を超える地域もある。ロシア政府は1日平均1000人の志願兵が採用されていると主張。兵士の多くが貧しい地方の人々だとされている。ロシア軍に動員されたアンドレイ・アモノフさん、現在は国外に逃れている。アモノフさんはサハ共和国出身、貧困率の高い地域。当時の入隊一時金は約45万円、アモノフさんにとって思いがけない額だった。亡くなった兵士の遺族にも多額のお金が支払われている実態もみえてきた。息子を戦闘で亡くしたリダ・マガシさん。政府からは勲章が贈られ、家族への補償金は約2000万円。さらに、年金の加算や光熱費の補助など手厚い支援も受けられるようになったという。それから2年、マガシさんは物資を戦地に送るボランティアをしている。この戦争は正しいと信じている。これまでに命を落としたロシア兵の数は9万人とも言われている。ロシア経済学者のウラジスラフ・イノゼムツェフさんは命の対価として、高額の報酬が支払われる状況を「死の経済」だと指摘し、ロシア社会をいびつな形に歪めていると批判している。

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サハ共和国ロシア

ロシア経済に詳しい服部倫卓さんは、3年前に戦争がはじまったときには欧米の制裁でロシアは音を上げのではないかとされていたが、ロシアは国の規模も大きく資源もあるため国として底力があり適応能力があったということだったという。ロシアの国防費は国家予算の約3割、そのお金が雇用をうみ、平均月収は約50%アップ、消費意欲が高まり、家計支出はプラス6.1%となった。一方でインフレがこのまま進むと弊害が出てきて、人手不足の問題もある。プーチン大統領の最新の支持率は87%と依然として高い。服部倫卓さんは表立った大きな反乱がないというのはプーチンが軍事とともに、国民生活も重視していることだと思う、それがプーチンにとっての生命線だと話した。

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ウラジーミル・プーチンロシア

ロシア中部にある輸入代理店。中国から農業用機械などを輸入してきた。侵攻後、関係を深めてきたロシアと中国、貿易総額は去年最高額を記録し、制裁の抜け道とも指摘されてきた。軍事侵攻後もこの会社では中国との取引を続けてきたが、送金が滞るようになったという。おととし12月のアメリカの追加制裁、中国を念頭にロシアと取り引きのある第三国の金融機関に制裁を科すとした。この会社は制裁の対象ではないが、中国の銀行が取り引きを渋り対応に追われている。これまではロシアの銀行から直接、中国の銀行に送金していたが、追加制裁でそのルートが使えなくなった。そこで、ロシアの銀行が中国国内にもつ支店を経由して送金する方法に変えた。コストは15%ほど増加したが、取り引きの継続につながったという。

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ジョー・バイデンロシア中国

制裁回避の動きはロシアの財政を支えるエネルギー産業でも行われている。フィンランドの沿岸警備隊は今、ロシアなどからくる船舶の監視を強化している。古い石油タンカーが頻繁に目撃されるようになったという。沿岸警備隊が注視しているのが、影の船団と呼ばれる船舶の存在。その数は500を超えるともされ、欧米の制裁を回避してロシア産の石油を運んでいるとみられる。シンクタンクに調査を依頼するとその手法が見えてきた。黒海に入ると、突如船の位置情報が途絶えた。その5日後、ほぼ同じ場所で位置情報の信号を発信し、船は黒海を出ていった。衛星画像を分析すると、この間に同じものとみられる船舶がロシアの石油輸出ターミナルに寄港していたことが判明。別の調査では影の船団の活動でロシア側は1年で13兆円もの収入を得たともされている。

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ロシア“死の経済” 侵攻・停戦 今後は?

ロシアに制裁をかけている国や地域は45で、制裁の抜け道を封じきれていないという現実がある。服部倫卓さんはいろんな抜け道があるが、3年間の西側の制裁はかなりロシアを苦しめているが、プーチン大統領の行動を変えさせるのは難しいという。トランプ大統領は何か重要なことをすることになるとし、プーチン大統領は準備ができていると話している。バイデン政権の最後の1年に本気度の高い制裁をし、バイデン大統領はそれを使ってロシアにプレッシャーをかけている。服部倫卓さんは結束してロシアに退治するはずが、G7の乱れがあることで不透明感が漂っているという。

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ウラジーミル・プーチンドナルド・ジョン・トランプロシア

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