- 出演者
- 桑子真帆
2人に1人がなるがん、そのお金の問題が新たな段階に入った。新らしい薬が次々と開発され、生存率が向上しているがん。一方で治療が長期化した患者の経済的負担が深刻になっている。
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オープニング映像。
がんの医療費が高額化している。薬の値段は10年ほど前と比べて高いものだと50倍になっている。去年11月から議論されているのが高額療養費制度。医療費が高額になった患者の自己負担を抑える制度。
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- がん
北川綾香さん、44歳。2人の息子と夫と4人で暮らしている。4年前に次男を出産した直後に肺がんが見つかった。病状はステージ4の進行がん。1日1錠抗がん剤を飲み続けなければがんの進行を抑えることができない。薬代は3割負担で月に17万円かかる。北川さんの頼みの網は国の高額療養費制度。年収区分に応じて自己負担の上限額が決められている。北川さんの場合は毎月の自己負担額は4万4400円におさえられているが、それでも家計は苦しいという。共働きだった北川さん夫婦だが、次男の出産でパートをやめていたため現在の収入は夫の給与のみ。一方で子どもの成長とともに教育費や食費は増加していて、毎月10万円ほどの赤字となっている。貯金を切り崩し生活費に当てる日々。治療しながらできる仕事を探しているがまだ見つかっていない。3年以上続いている治療、家族のためのお金が自分の病気のために消えてしまうと北川さんは追い詰められていた。そんな中で、高額療養費制度の見直しの議論が行われている。医療費の負担上限額が引き上げられれば生活や治療が立ち行かなくなってしまう。通院の回数を減らして医療費を減らせないかと考え、病院の医療ソーシャルワーカーに相談した。
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- 肺がん
がんの生存率が上がる一方で長期の治療の経済的負担に苦しむ患者も出てきている。千葉大学医学部附属病院がはじめたお金のサポート相談会。ファイナンシャル・プランナーを招いて治療と生活の両立を支援している。この日、相談にきたのは40代の佐々木美帆さん。きょねん卵巣がんが再発し、治療を続けている。佐々木さんは3週に1度通院し、分子標的薬の点滴をうけている。がんの再発を防ぐために維持療法で医師からは治療に終わりはないと言われている。現在、休職中で収入は傷病手当金で約20万円、治療が2回ある月は7万円の医療費がかかる。20代のときに民間のがん保険に加入したが、通院は対象外だった。家計をさらに圧迫しているのが、医療費以外の新たな出費。抗がん剤治療で変わった自分の姿を受け入れるためにもお金が必要だった。
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- 千葉大学医学部附属病院卵巣がん
がんになると、治療以外にかかる費用もある。こうした経済的不安を経済毒性と呼ぶ。経済毒性は精神的不安、生活の質低下、治療成績への影響。桜井なおみさんはがん治療による経済毒性のポイントを解説。がん治療で仕事を持っている人はあわてて辞めないようにする、出費の見直しをする、制度を知って、カード払いをすることなども必要だとした。がん相談支援センターを活用していただきたいとした。様々な医療が高度化し医療費は膨らみ続けている。これを支えているのが、公的医療保険。この保険料を払う現役世代の負担も大きくなっている。
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- がんがん相談支援センター
大手企業の健康保険組合。従業員とその家族約1万人が加入しているが、今年度は1億円以上の赤字が見込まれている。赤字の大きな要因は高齢者医療の拠出金。健康保険組合は従業員と企業が支払う保険料で加入者の医療費をまかなう組織。一方で高齢者を支える役割も担っていて、その拠出金が増加し、財政を圧迫している。この組合で見込まれている1人あたりの保険料の平均は47万5000円、9年前と比べると6万2000円増えている。保険料の負担をこれ以上増やさないために取り組んでいるのが、従業員の生活習慣病の予防。健康診断で糖尿病リスクが指摘された場合、血糖値を24時間測定し、食生活の改善を促し、医療費を抑えようとしている。今年、 団塊の世代が全員75歳以上となり、高齢者への拠出金は今後も増える見込み。
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- 糖尿病
高久玲音さんは若い世代の保険料負担は増えているのが現状で、要因は医療の高度化だという。高度化は今後も続いていくと指摘。大切なのは健康に影響の少ないスモールリスクからはじめていくのが鉄則。高額療養費はビックリスクに向き合う人に負担を強いる政策なので慎重になり順序に気をつけなければならないという。
人口の4割近くが高齢者の山形県酒田市。取り組んでいるのが薬剤費の見直し。患者の健康に影響を与えない範囲で薬を絞り込み、費用の削減を図っている。処方の際に医師が使っているのが、疾患ごとの推奨薬リスト。地域フォーミュラリと呼ばれる取り組み。推奨薬の多くは価格が安いジェネリック医薬品。同じ効果であれば価格の安いものを選んでいる。診療所で処方していた薬の価格は以前は555円だったのが、リストから選んだの薬の価格だと312円になった。この地域では2020年と比べて薬剤費を2億円余削減することができた。
地域で連携して薬剤費を抑えていこうという取り組み、地域フォーミュラリ。 高久玲音さんは評価できる取り組んで、より強い医師会を伴って全国で推進されるべきだとした。国は全世代での支え合いを強化するとして、様々な検討メニューを打ち出している。3割負担の基準見直し、薬剤保険給付のあり方の見直しなど。OTC類似薬が保険適用外だと、薬剤費は約3300億円削減される。高額療養費制度は新たな専門委員会を設け、今後議論し秋までに方針を示す予定。