2025年5月13日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
小さな“孤独”が命を… 初の全国推計 孤独死・孤立死の実相

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
広がる”孤独死” データが表す事実とは

孤立した状態で亡くなった人は全国にどれくらいいるのか、先月国は初めて推計値を公表した。底で見えてきたこととは。

キーワード
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オープニング

オープニング映像。

小さな”孤独”が命を… 初の全国推計 孤独死・孤立死の真相
広がる”孤独死” データが表す事実とは

いわゆる“孤独死”はどれくらい起きているのか。初の全国推計の結果、去年1年間で「死後8日以上たって発見された1人暮らしの人」は2万1856人いたことがわかり、70代が最も多くなった。さらに孤立の実態を詳しく知るために「死後4日以上たって発見された1人暮らしの人」を見ると、数では高齢者が多いが、割合では傾向が変わり20代・30代の方が孤立が推測される状態で亡くなる割合が高齢者よりもやや多いことがわかった。

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孤独死
つながっていても”孤独” いったい何が?

亡くなった人の遺品整理や自宅の清掃などを請け負う会社の代表・井岡さんは高齢者の依頼が中心だった現場に変化が起きているという。ここ数年、20代・30代の孤独死の依頼が出ていて、この日も1人で亡くなった若者の遺品整理を行った。28歳の女性はワンルームのアパートで1人で亡くなっているところを警察に発見された。部屋には仕事に関わるホ本や友人からの手紙が残され、人付き合いがあった様子が伺えた。なぜ、1人で亡くなったのか親族は受け止めきれずにいた。高校時代からの友人は、亡くなった女性は本当の気持ちを話せていなかったのではないかと振り返った。

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孤独死

特殊清掃を請け負う井岡さんの会社では2018年までは1件もなかった20代・30代の清掃依頼が2019年以降年々増加、去年は35件あった。井岡さんによると、1人で亡くなった若者の現場の多くには大量のごみが溜め込まれたいわゆる“ごみ屋敷”になっているという特徴があるという。専門家はごみ屋敷と孤独死・孤立死との関連を指摘する。ごみ屋敷の住人の多くは“セルフ・ネグレクト”という自分自身の世話を放棄する状態に陥っているという。

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セルフ・ネグレクト孤独死東京医療保健大学

自分はセルフ・ネグレクトではないかと話す30代前半の美咲さん(仮名)。都内のマンションで1人暮らしをしているが、6年ほど前からごみが捨てられなくなり、今は床から1m近くごみが積まれている。食事は1日1回、シャワーは週に2回ほどしか浴びないなど生活する意欲が沸かないという。美咲さんはライターとして生計を立てていて、経済的に困ってはいない。月に数回は友人と会うこともあり、外に出るときは化粧もする。美咲さんは大学4年生の頃に就職活動がうまくいかず、その後恋人との別れも経験。しかし、そのことを人に相談することはなかった。友人と関係が切れてしまうことは避けたいという気持ちから本音を言えず、美咲さんは孤独感を強め生きる意欲を徐々に失っていった。さらに同年代のSNSの投稿を見て孤独を感じたという。セルフ・ネグレクトを研究している岸さんは、美咲さんのような若者が増えているのではないかと危惧している。

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Instagramセルフ・ネグレクト東京医療保健大学

内閣府が行った調査でも「孤独感がしばしばある・常にある」と感じている人の割合が20代・30代で多くなっている。若者支援NPO代表の奥村さんは「普段接する少年少女の言葉の中にも、“普段の生活は仮面を被っいる”というような表現があり、悩んでいたとしても吐露せずに元気に振る舞ったり、笑顔でいたり、悩みを閉ざして孤独になる子たちは少なくないと感じる」などと話した。孤独死・孤立死ワーキンググループ座長の石田さんは「男性では55~59歳の孤立死の割合が多く、つながりはありそうだが相対的に支援の手が薄く、泣きごとを言わずに困ったことがあっても相談できない手薄な部分」などと解説した。また、石田さんは現代の人間関係での“場”の喪失を指摘した。

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内閣府
”支援”よりも大切なものとは?

内閣府は4年前、コロナ禍で孤独・孤立が問題になったことを受け対策担当室を設立。去年から5月を孤独・孤立対策強化月間と定めた。オンライン上で専門家の話を聞けるイベントやチャット相談を実施している。しかし、“支援臭”を嫌う孤独を感じる若者に届ける難しさを感じているという。見えてきたのは支援よりも共感を求める若者たちの姿。20代のひかさん(仮名)は2年前、SNSに本音が言える場を見つけたという。そのSNSの特徴は同じ悩みを持つ人同士が匿名でつながれること。テーマごとに部屋がありチャットしたり話したりできる。ひかさんは人に悩みを打ち明けられたことで気持ちが楽になったという。このSNSを運営している会社によると、利用者の6割が20・30代の若者だという。

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内閣府

同じ世代で共感し合える“場”を職場に設けている企業もある。都内のIT企業の平均年齢は29歳、それぞれが取引先に出向いてシステムを管理している。そこで、社員が孤独感を抱かないよう始めたのがコミューンという若手社員のグループ活動。管理職は参加せず、会社が入社年数や業務内容を見ながらメンバーを選び約20のグループを結成している。参加しやすいよう経費は会社が補助し、活動内容は釣りやゲームなど自由に決めていいことになっている。この仕組みのポイントは原則参加としていることで、“会社の仕組みだからしかたなく参加しようかな”といえることだという。

すぐ隣にある”孤独” 今できること

職場の“場”をあえて大きくして企業が提供する仕組みについて、石田さんは「主体的じゃなくて関われることは仕事くらい。職場が出会いの場をお膳立てしてくれるのは非常に良い。ポイントになるのは参加の仕方を選べることと、出入りしやすいこと」とした。一方で、人づきあいに対する意識について「さびしくても、個人の自由を尊重してくれる社会がよい/どちらかといえばそう」と答えた割合が66%というデータも。奥村さんは「私たちは“支援のにおい”がなるべくしないことを気をつけている」とした。石田さんは「孤立のリスクをしっかり伝達してどういうふうにつながればいいかを考える機会を持つことが大事」とし、海外での対策を紹介した。個人としてできることについては、奥村さんはSNSで病んでいる投稿をしている友人にはおせっかいかもれないが声をかけるようにしているとした。

ごみをためていた女性”孤独”からの一歩

自宅にごみが溜まっていた美咲さん。隣人から苦情が入り、大家に部屋を退去するよう求められ、清掃会社が入った。美咲さんは家族に事情を伝え、いったん実家に帰ることにした。美咲さんは「近所の皆さんに申し訳ないことをしましたけど、とにかくこの部屋がどうにかなっただけでも前向きにはなれる」と話した。

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