- 出演者
- 桑子真帆
国有地を8億円あまり値引きして売却していたことが発覚し、様々な疑惑が指摘された森友学園問題。今月、財務省は2255ページの内部文書を開示した。巨額の値引きはどのように決められたのか?建設会社がその内枠を証言した。
オープニング映像。
森友学園問題は保守的な教育方針を掲げていた籠池泰典前理事長が小学校の建設用地として大阪・豊中市の国有地を取得する取り引きをめぐって起きた。この小学校の名誉校長を安倍元首相の妻・昭恵氏が務めていたことなどから政治が関与した不当な値引きではないかと疑われ、国会で激しい論説となった。8億円の値引きが明るみになったのは2017年の2月。翌年に財務省が決裁文書を改ざんをしていたことが発覚した。改ざんに関与したことを苦に近畿財務局の赤木俊夫さんが自殺、妻の雅子さんは真相を知りたいと文書の開示を国に求め裁判を続けてきた。今月、財務省が開示したのは2255ページに及ぶ文書。
森友学園に関する文書の開示を求めてきた赤木俊夫さんの妻・雅子さん。夫はなぜ自殺しなければならなかったのか?真相を知りたいと裁判を続けてきた。今月4日に財務省が開示したのは2013年6月~2016年6月までの内部文書。森友学園側が国有地について問い合わせをはじめてから8億円あまり値引きされ売却されるまでの記録。国有地売却の窓口となっているのは財務省の出先機関である各地の財務局。国はこれまで近畿財務局と学園側とのやりとりの記録を主に公表してきた。しかし今回、財務省本省との間で交わされたメールや電話の内容がはじめて明らかになった。国有地をめぐる異例の取引は国の内部でどう議論され進められたのか詳細が見えてきた。当初、学園側は国有地の貸し付けを要望していた。それに対し、本省と近畿財務局が電話で対応を協議した2014年3月24日の記録では学園側の要求に否定的な考えをもっていたことが分かる。3週間後の4月15日、近畿財務局は学園側に対し貸付の契約はできないと直接伝えていた。ところがその2か月後、協力すると対応は一変。近畿財務局に対し、財務省が取り引きを進めるよう主導していた実態が開示文書で見えてきた。取り引きを早く進めるよう促す本省の発言もあった。この電話の半年後、2015年5月29日、学園側が将来的に買い取る条件で国有地を貸し付ける契約が結ばれた。貸し付け期間は10年間という特例的な対応だった。阪口徳雄弁護士はこれらの文書がもっと早く開示されていれば問題の検証のあり方が変わっていたはずだという。
財務省本省はなぜ異例の取引を主導したのか?貸し付けを断られたあと、森友学園の理事長・籠池氏が「神風が吹いた」と表現した出来事があった。2014年4月28日、籠池氏が近畿財務局を訪れた日。財務局の担当者に小学校の名誉校長となる昭恵氏と国有地の前で撮影した3ショットの写真を見せた籠池氏。昭恵氏からいい土地ですから前に進めてくださいという言葉をもらったと伝えていた。この日の出来事はのちに改ざんされた決裁文書にも記されている。しかし、今回開示された文書にはこの4月28日の記録はなかった。開示された文書には1~380までの通し番号が時系列でふられている。ところが、調べてみると75個の番号が欠落、中でも46~49番までは連続して抜け落ちていた。この欠落した番号の文書が作成されたとみられるのは2014年4月中旬から5月中旬までの期間。籠池氏が昭恵氏とともに撮影した写真を近畿財務局に示した時期と重なっている。
今回、開示された文書には番号が3つ以上連続してない部分が複数あることがわかった。番号が連続してない部分には共通点がある。文書が作成されたとみられる時期はいずれも政治と接点があった時期と重なっている。46~49番は籠池氏が近畿財務局に対して、昭恵氏との3ショット写真を提示した時期。168~171番は鳩山邦夫元総務相の秘書が近畿財務局を訪問した時期。303~305番は昭恵氏付きの職員から財務省に問い合わせがあった時期。問い合わせに対し、財務省は検察に提出した資料から意図的に隠していることはない、欠落していると指摘を受けているものについては現在確認を行っているとした。情報公開に詳しい専門家は、政治家側か働きかけを受けた際の文書を検察に提出していなかったのではないか、問題がないというなら情報公開を徹底することがそれを証明することになると指摘。国有地を長期間貸し付けるという特例的な取引について、財務省は誰がどのように進めてきたのか明確な説明はしていない。
棟上げ式が予定されていたのは2016年6月だが、3か月前の3月に杭打ち工事の際に地中からゴミが出てきたとして、その対応をめぐる交渉が始まっていた。交渉には近畿財務局などの国側、籠池夫妻、建設会社などが参加。今回取材に応じたのは藤原工業の社員。ただならぬ空気を感じた社員は交渉の一部を録音していた。4日間約8時間に及ぶ。籠池夫妻は昭恵氏が出席予定だとする棟上げ式への影響を強調し、ごみを理由に訴訟の可能性を口にしながら国に対応を迫っていた。この国有地には3mの深さまで大型のコンクリートや生活ゴミなどが埋まっていることがわかっていた。ごみは約1億3200万円の撤去費用を国が負担して撤去済みだった。しかし、籠池氏は小さなごみが杭打ち工事で出てきたことを問題視し、貸し付けではなく値引き売却を求めた。交渉開始から1カ月後、本省が作成し、今回はじめて開示された文書には、出てきたゴミは隠れた瑕疵となっていた。地下3mよりも深いところから見つかった新たなゴミで国が賠償責任を負うとした。近畿財務局の担当者はストーリーという言葉をつかい交渉を進めていた。ゴミが3mより深い場所にあるかわからないと繰り返し訴える藤原工業だが、国側はゴミはさらに深い場所にないのかと踏み込んでくる。国は撤去費用を約8億1900万円と算出した。棟上げ式が予定されていた2016年6月、国有地は鑑定価格9億5600万円から1億3400万円で売却された。
国会で値引きの妥当性を問われた財務省。地中からごみが出たことは工事関係者から伝えられたとした。藤原工業の社員はこの国の説明が正しいとは思わないとした。完成直前に取りやめとなった小学校の開校。藤原工業は建設費など約16億円の負債を抱えることになった。
国はこれまで地中の深い場所から新たにゴミが見つかったため、値引きすることになったと説明してきた。今回、藤原工業の社員は地下3mより深い場所にゴミがあるかどうかは分からないと繰り返し国に訴えたと証言した。音声について財務省は会話の一部が切り取られたものだと説明していた。公表されていない長時間の音声を分析すると、藤原工業の証言を裏付けするものだった。財務省は、工事業者のコメントについては承知していない、工事が進む中で新たに地下埋没物が発見され相手方から損害賠償請求のおそれがあるなど切迫した状況の中で行われたもので、国の責任を一切免除するよう瑕疵担保免許特約を付すことも含めぎりぎりの対応であったとコメント。
決裁文書の改ざんに関与させられた赤木俊夫さんが亡くなって7年。うつ病を発症した俊夫さんは自分はやってはいけないことをやってしまったと雅子さんに繰り返し話していた。雅子さんはいつか私が死んだときに夫にむこうで会って、こういうことをやったと伝えたいと話した。