- 出演者
- 桑子真帆
去年11月番組では医療事故を繰り返す医師について伝えると放送後、自分や家族が受けた医療でも事故があったと100件以上の告発が番組に届いたなど放送内容を伝えた。
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- クローズアップ現代
オープニング映像。
去年12月、娘が医療事故で亡くなったという家族からの手紙が届く。亡くなった今井杏海さんは当時大学3年生で就職活動を行っていた。事故を起こしたのは都内にある「日本大学医学部附属板橋病院」。年末から発熱や強い喉の痛みが続いていた杏海さんは入院し「伝染性単核球症」と診断される。伝染性単核球症は2~3週間程度で自然軽消するが極稀に深刻な合併症を引き起こすことがある。退院予定日に39度の熱が出て退院の延期を求めたがかなわず、絶対に大丈夫かと聞くと「はい」としか答えず、帰宅するも激しい腹痛に嘔吐に襲われる。しかし受け入れてもらえず4日後に再入院するも重篤となっていた。その時の病院側の説明は特殊な症例で、検討会は立ち上げてやらなければならないなどの説明。その10日後に亡くなった。そして医療事故調査制度に基づいて調査をすると説明を受けるがその後調査を開始したという連絡はないという。この制度では遺族に対して調査進捗を伝える義務はなく、病院の裁量に任されている。病院側は取材に対して調査を進めていると回答した。
医療事故調査制度は責任の追求ではなく再発防止につなげることを目的に始まった制度だが今限界を指摘する声が上がっている。娘を医療事故で亡くし、その後団体の代表として患者などを支えてきた宮脇正和さんによると病院が事故と認めず制度の対象外になった例も存在するという。さらに病院内部からも医療事故はいくらでも隠蔽できるなどの声があると告発の声が上がっている。取材に応じた医師は医療事故を市に通報し立入検査や行政指導が入り、病院側は過失が1件あったと市に報告するが死亡事例については問題はなかったとしている。医師は今の制度では再発防止につなげるのは難しいと話す。
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- 医療事故調査制度
スタジオには長年患者の安全確保に携わってきた長尾能雅さんを紹介。医療事故調査制度について遺族や第三者機関から働きかける仕組みはあるが実際に調査対象になるのは数件程度で去年は2件のみだという。長尾さんは制度発足時には5年ごとに見直すとされていたが大きな変更はされず今に至る。調査判断は病院側が決めるがその調査には労力などが必要という病院側の声もあり、長尾さんは制度の問題と言うよりも運用に問題があり、医療事故の定義の難しさなど解釈にばらつきが生まれやすい制度となっているなど話した。また調査対象は死亡事例のみで予期せぬ事故があっても一命をとりとめた場合は対象外となる。
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- 医療事故調査制度
兵庫県のある病院では1人の医師が8件の医療事故に関わり、去年12月業務上過失傷害の罪で在宅起訴された。この医師の問題が広く知られたキッカケはウェブ上に公開された漫画。描いたのは親族が被害にあった男性。親族は脊髄の神経を切られるが死亡事例ではないため調査制度の対象外となっていた。他にも同じ苦しみを持つ人がいると知り、フィクションという形で公開した。医師の通報で行政指導を受けた「京都第一赤十字病院」では制度対象外となった例で手術ミスの映像が残されていた。その一部では腫瘍だと思って摘出したのが正常な組織で開頭場所自体に誤りがあったことが原因だった。手術を受けた女性は右半身にしびれが残り杖なしでは歩けない状態となるが病院側からは手術ミスについて伝えられなかったという。ミスがあったことを知ったのは1年後雑誌の取材で知ったという。病院側はミスを謝罪するがしびれとの因果間家はないとしている。女性は去年別のがんで亡くなり、息子の信幸さんは裏切られたことを悔しいと亡くなる直前まで話していたという。
医療事故調査の対象を死亡以外に広げることについて長尾さんは重篤な例で調査対象から外すという説明は難しく視野に入れても良いとは思うと話す。国は制度の仕組みには問題があるとは考えていないが運用面で課題があると認識、適切に報告・調査されていくように努めていると回答した。長尾さんは第三者機関が積極的介入し院長の判断を支援するなどアイデアはあるが具体的にどうするかという点であると話した。
医療事故の再発防止のために動いているのが神奈川県立病院機構。新たな体制で医療安全の改革を行っている。キッカケは4年前入院中の患者が死亡した医療事故で、公表されたのは事故から2年が経過していた。そこで医療事故の公表のルールを明確化。これまでは過失があった場合のみ公表していたが去年から過失の有無関係なく公表するようにした。また積極的に情報共有することで遺族の理解につながったケースも存在する。岩手・雫石町の笹川さん夫妻は2年前に息子を医療事故で亡くした。息子は重い障がいを餅、気管孔からたんを吸引する必要があったが病院側は口や鼻からのみしか吸引をせず死亡させた。事故後、質問状を送り、事故調査が行われる前から病院側は情報を開示し、2週間に1度調査の進捗を伝えるようにした。そして去年7月に調査結果を発表し、笹川さん夫妻に再発防止策を説明した。
対策が進む病院と進まない病院の違いについて長尾さんは病院全体のガバナンスなどがあるが発生した事例にいかに真摯に向き合っているかどうかであると話す。医療の安全のために何が出来るのか長尾さんが副院長を務める名古屋大学医学部附属病院では5年毎で重大事故件数を確認すると減っていてこれは事故につながるヒヤリハットを積極的に報告するようにしている。報告件数が増えることで本格的な改善を繰り返していき少しずつであるが件数が減っていると話す。
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