- 出演者
- 赤木野々花
先週、各国への関税措置を発表したアメリカのトランプ大統領。世界の株式市場は一時大混乱に陥った。その矛先は軍事侵攻を受けるウクライナにも。アメリカが支援停止の可能性も示唆する中、ウクライナは窮地に立たされている。危機感はウクライナ支援を続けるヨーロッパにも。アメリカに頼ってきた安全保障のあり方を見直し、軍拡へとカジを切っている。
オープニング映像。
ウクライナのシェフチェンコボ地区。人々の暮らしは破壊され、1万5000人いた住民の8割以上が一時避難した。復興を進めるために頼ってきたのがアメリカの資金。地区長のオレグ・ピリペンコさん。費用の大部分をになったのがUSAIDというアメリカの政府機関。この地区には去年1年間で日本円にして約1億5000万円が援助され、インフラ復旧などに使われてきた。世界各地で人道支援を行ってきたUSAID、ウクライナへの支援総額は5兆円以上。しかし、今年2月にトランプ政権はこれらの事業を一時停止し、税金の無駄使いだとした。この地区でも支援が打ち切られ復興が立ち行かなくなっている。80人が通っていた学校は約2億円の再建費用は地区の予算だけではまかなえない。さらに、ロシア軍が残した地雷の撤去にも遅れが出ている。ロシア軍の地雷撤去には多くの人手や機材が必要になる。
さらに今、懸念が強まっているのがアメリカの軍事支援の停止。2月に行われたトランプ大統領とゼレンスキー大統領との会談。口論となったこの会談の直後、アメリカは軍事支援・機密情報の提供を一時停止。ロシアとの戦況に影響が出たとの見方もある。アメリカの支援が打ち切られると、ロシアへの抵抗は不可能だという不安も広がっている。2年9か月にわたって従事した元兵士の女性は侵攻直後に祖国の力になりたいと志願した。戦地で直面したのはロシア軍の圧倒的な物量。一方で女性の所属する部隊は慢性的な武器・弾薬の不足に悩まされてきたという。女性は今年2月、軍の許可なく戦線を離脱した。こうした兵士は10万人にものぼるとされている。ウクライナの大統領府顧問ミハイロ・ポドリャク氏は厳しい状況でもアメリカの支援に期待するしかないと語る。
ウクライナに対してアメリカは消極的な姿勢を見せていて、停戦交渉を早く終わらせたいという思惑もみえる。先週、トランプ大統領は相互関税を全世界に課すことを決めたが、ロシアは対象外となっている。兵頭慎治さんはアメリカは停戦交渉への影響を懸念していたとの指摘がある、関税をかけることを今後の交渉材料としてカードを残しておくという可能性もあるとした。ロシア側は交渉の引き伸ばしをしていて、条件を引き出すような動きをしている。ロシアからするとトランプ大統領は持論を曲げることなく行動力があるとみている、交渉する相手としてはロシアにとって有利にもなりえるという。
先月下旬、フランス西部で行われたフランス軍とイギリス軍の軍事訓練。訓練が行われたのは町中で鉄道姿勢を奪還することが想定された。有事の際にヨーロッパ各国で協力して対応できるようにすることが目的。軍縮に努めてきたヨーロッパだが、今軍拡へと大きく舵をきっている。先月、EUは約127兆円の再軍備計画を発表した。自立したヨーロッパの安全保障を強く訴えているのがフランスのマクロン大統領。国防費は2割増加、各地の軍事工場は急ピッチで稼働している。第二次大戦後、独自に核兵器の開発をすすめ、現在約300発の核弾頭を保有しているとされるフランス。マクロン大統領は先月、フランスの核の傘をヨーロッパの安全保障に生かすことについてテレビで国民に訴えた。マクロン政権の安全保障政策に携わるアリス・リュフォさんは核大国のロシアに対抗するにはやむを得ないと語る。
フィンランドはロシアの脅威に備えるため国民に負担させてでも国防費を増やす。軍事侵攻後にフェンスの建設を開始し、総延長は200キロになる計画。今年の国防費は約1兆円、5年前と比べ倍以上になっている。政府は福祉・医療の予算を約2000億円削減する計画。42人のスタッフが働く福祉施設では24時間態勢でケアをしてきたが予算の削減で今後3人を減らさなければならないという。フランスの安全保障政策に携わるアリス・リュフォさんは、ヨーロッパ各国が国民に負担への理解を求めることが重要になるとういう。
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- フィンランド
ヨーロッパではもうアメリカに頼ることはできない、平和な時代は終わってしまったという危機感が共通の認識になっていると感じる。この3年、アメリカと歩調を合わせてウクライナ支援を続けてきたヨーロッパ各国はトランプ政権発足から3か月足らずでひっくり返されたことにアメリカとの価値観の違いを思い知らされることになった。フィンランドやバルト三国などは対人地雷禁止条約から脱退する方針、リトアニアはクラスター弾使用など禁止条約から脱退するなど動きが出てきている。トランプ大統領の関税措置に対し、EUは報復措置を検討しつつもまずは交渉するとしている。フランスのマクロン大統領はアメリカへの投資を一旦停止するよう呼びかけた。イタリアのメローニ首相は関税は誤っているとしながらも慎重な検討が必要だとしている。
兵頭慎治さんはヨーロッパのこれまの安全保障はアメリカ率いるNATOが軸になっていて、アメリカの圧倒的な軍事力をヨーロッパが完全に諦めるのは簡単ではない、アメリカ抜きの安全保障をヨーロッパも考えていかなければならないという。ロシアのプーチン大統領にとっては願ったり叶ったりの状況になっている。ロシアが仕掛けることなくアメリカがヨーロッパから遠ざかろうとしてる。こうした動きがヨーロッパにとどまるのか、他の地域にも波及していくのかが注目。ヨーロッパやウクライナのことだけではなく、アメリカの国際社会の関与低下の動きがどこまで続くのか見極めていく必要があると話した。
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- ウラジーミル・プーチン北大西洋条約機構
今年2月に部隊から無断で離脱した、ウクライナの元兵士。戦場の恐怖と祖国守りたいという思い間で揺れていた。元兵士は部隊のことが気になる、また役に立ちたい、軍で働きたいと思うと話す。停戦については、死んでいった仲間に対し恥ずかしくないようにこの戦争を終わらせなければならないとした。