2025年4月7日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
やっぱり「モノが届かない!?」〜2025 高まる物流危機〜

出演者
赤木野々花 
(オープニング)
生活支える物流に異変!? “2024年問題”から1年…

仙台に住む男性は今月1日に首都圏に転勤を命じられたが、期日を過ぎても引っ越しの荷物を送れていない。ドライバーの命と健康を守るために去年始まった労働時間の規制。その影響で荷物を運べない事態が起きている。2024年問題から1年、運送会社が規制を守ることで追い詰められていく構図も。

キーワード
2024年問題仙台(宮城)
#4993 やっぱり「モノが届かない!?」~2025 高まる物流危機~

取材したのは30人ほどのドライバーが働く関西の運送会社。3月上旬、労働時間の管理に追われていた。昨年度、新たに設けられた拘束時間の基準は年間で原則3300時間。1月末の段階で2800時間以上働くドライバーもいて、制限を超えると荷物を運べなくなる状況に追い込まれていた。労働時間を減らせない要因の一つが「荷待ち」。この日、朝5時から勤務していた加藤さん(仮名)に同行。現場に到着したのは午後1時47分。荷主から荷物を受け取る必要があるものの、時間が指定されていないため、待機する荷待ちが発生してしまう。この日の荷待ちは3時間16分。加藤さんの荷待ちは年間で600時間ほど。この1年、物流改革は国が主導して進められてきた。トラックの代わりに船や鉄道を使う“モーダルシフト”、複数のドライバーで分担する“リレー輸送”など様々な手段を推進し、トラックドライバーの労働時間を減らそうとしてきた。しかし、昨年度の荷待ちや積み下ろしなどにかかった時間は目標としていた1運行あたり2時間以内を大幅に超え、平均3時間にのぼった。加藤さんが務める会社でもドライバーを増やすことで、1人あたりの労働時間を減らそうとしてきた。しかし、資金がなく、新たに雇えたのは1人だった。この会社が労働時間を減らせない背景にはドライバーに支払う賃金の問題もある。10年近く長距離ドライバーとして働く藤田さん(仮名)。この日、4日ぶりに自宅に戻ってきた。3人の娘の父親で、家族を養うために稼ぎの良い長距離ドライバーを続けてきたという。トラックドライバーの多くは走った分だけ稼げる歩合制。規制を守るために労働時間を減らせば、手取りは毎月7万円ほど下がる計算。1回あたりの単価を会社に上げてほしいと考えているが、賃金の上昇は見込めていない。そのため、長時間走り続けるしかないという。さらに労働規制を守ることで悪循環に陥る構図も見えてきた。関東にある運送会社の社長はドライバーの労働時間を減らしながら、賃金も維持しようと荷主に運賃の交渉を続けたが、何度も断られたという。労働時間を守り、適正な運賃で働くことを目指した物流改革。しかし、一部の荷主は安い運賃のまま仕事を依頼し、それに応じる運送会社も数多くいる。そうした会社に仕事が集まることで、ルールを守る会社は仕事を奪われ、経営が厳しくなるという。この会社の昨年度の売り上げは約1700万円減少。

キーワード
2024年問題モーダルシフト国土交通省岸田文雄

物流問題に詳しい首藤若菜はトラックドライバーの労働時間はゆるやかに減少しているが、実態としてはかなり二極化していると考えている。大手企業のドライバーは労働時間を減らしているが、中小企業においてはコスト・人手が足らないため、労働時間を減らせていないなどと話した。物流の未来について、日本はこれから人口が減っていくので、それに伴って少しずつ荷物も減っていくと予想されているが、2030年度までにドライバーの高齢化や人手不足などによって、日本の輸送能力は34%減少すると予測されている。国が設定している標準的運賃について、事業者の半数以上が標準的運賃の7割以下しか支払われていないと回答している。首藤若菜は法的な拘束力があるものではない。運賃の値上げが叶わない実態の背景にはこの業界が過当競争にあるという現実があるなどと話した。

キーワード
2024年問題NX総合研究所全日本トラック協会国土交通省

2024年問題に対応しようと、国が立ち上げた専門部隊「トラック・物流Gメン」。トラック・物流Gメンはドライバーや運送会社の声を集め、荷主たちに改善の働きかけや要請を行う。それでも改善されない場合は国土交通省が勧告を出し、企業名の公表に踏み切る。この日は商品の運送を依頼している飲料メーカーを抜き打ちで訪れた。メーカーは運賃の値上げに応じると、製品価格も値上げしなければならず、それではスーパーなどの届け先が納得しないという。トラック・物流Gメンはメーカーなどの業界団体と定期的に意見を交わしている。企業からは届け先の企業にも呼びかけるべきだと声が寄せられた。とあるスーパーでは、これまで別々に運ばれていた冷蔵と常温の商品を一度にまとめてもらうなど、効率化を進めてきた。こうした取り組みで浮いたお金を上乗せすることで、運送会社に支払われる運賃は5~8%上がったという。しかし、これ以上の値上げは商品価格への転嫁も検討せざるを得ず、決断は難しい。国土交通省から勧告を受けたのは家電などを納品する企業。運送会社に2時間以上の荷待ちや積み込みなどを強要しているとして月に1度、改善状況を報告するよう命じられた。勧告から2か月、企業では10月までに改善することを目指して週に1度、経営陣が進捗を共有している。現場で話し合われていたのは積み込みが集中する朝の対応。他の倉庫に振り分ける調整が行われていた。トラックが出入りする時間の管理方法も見直している。これまでは手書きの台帳で管理を行ってきたため、荷待ちの状況を詳細に把握することができなかった。今目指しているのは全国の拠点で管理をデジタル化すること。どのトラックが荷待ちしているのかをリアルタイムで把握し、迅速な対応につなげようとしている。こうした対策に運送会社の意見も取り入れ始めた。今後、取り引きのある約400社と打ち合わせを行っていく予定。

キーワード
2024年問題NX・NPロジスティクス国土交通省

首藤若菜は荷主勧告の制度は以前からあったが、Gメンができてから大きく行政指導の件数がはね上がった。しかし、トラックの運送事業者は6万社を超えるが、Gメンは360人となっており、すみずみまで監視の目を光らせるのは難しいなどと話した。国は荷主への対策をさらに強化するとしている。今月からは荷待ちなどを2時間以内にすることが努力義務になった。

キーワード
2024年問題
“物流危機”をどう回避? いま求められること

国土交通省の三輪田優子は制度改正を行ったが、荷待ちの削減など結果に表れなかったのは非常に残念だと話した。国はその上で長時間の荷待ちについて、荷主への対策をさらに強化するとした。上がらない運賃については標準的運賃で契約できていないという点は承知をしている。少しでも近づいていくように取り組んでいるなどと話した。

キーワード
国土交通省

首藤若菜は大事なことは法令を守っている運送会社が救われるような環境にしていかないといけないなどと話した。2024年問題の影響で物流コストが上がって、商品の価格も上がると認識している人に聞いたアンケートを紹介。程度に差はあるが、約8割が物流コストによる値上げを許容できると回答した。首藤若菜は消費者も物価が上がっている理由が分かれば、納得感を得られる。物流は社会インフラの一つだと思う。物流の持続可能性を高めていくことに消費者の行動変容も求められているなどと話した。

キーワード
2024年問題全日本トラック協会流通経済大学物流科学研究所

© 2009-2025 WireAction, Inc. All Rights Reserved.