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7位は「さらば、呑んべ横丁」。
今回の舞台は東京・立石の呑んべ横丁。この地で70年愛されてきたが、今年8月、街の再開発によって幕を下ろすことになった。残された最後の日々をみんなどんな思いで過ごしているのか。3日間カメラを据えた。
「呑んべ横丁」は葛飾区立石の路地を入ったところにある、2本の通路。10軒ほどのお店が営業している。お店に入っていく人を発見した。店内にはすでに先客がいた。ママは7月、80歳になるという。週に2回は来るという女性の一人客、最初は息子さんと一緒に来たという。夕方、外には仕事帰り風の人たちが集まってきた。葛飾区役所に務めているという男性は、呑んべ横丁の再開発計画についてスマホの画面を見せながら説明してくれた。再開発には賛否両論あるという。夜7時、看板に明かりが灯りだした。オープンして35年になるスナックで働く女性は、ここで生まれ育ったので呑んべ横丁がなくなってしまうのは残念だと話した。6畳ほどの店内に多くのお客さんが集まる居酒屋があった。相席状態が常だという。還暦のママは、親の跡をついで20年、お店を1人で切り盛りしてきた。見知らぬ人との出会いも呑んべ横丁の魅力の一つ。呑んべ横丁に店が集まりだしたのは昭和28年から。下町の労働者でにぎわい、最盛期には43軒の店があった。みんなが使える共同トイレもある。夜9時、お店に入る4人組がいた。タカラトミーの関係者たちで、このお店が2軒目だという。夜の社員食堂としてお店を利用している。4人のうち1人は、おもちゃを個人で製作する夢を追いかけたいと、去年退職したらしい。ママのために1か月かけて手作りしたというお店のジオラマを見せてくれた。夜1時、「呑んべ横丁」の看板の明かりが消えた。
撮影2日目。3時オープンのお店。80歳のママは福島出身だという。40歳で夜の世界に飛び込み、小さな子どもを育てながら賢明に働いてきた。なんとかやってこれたのは、通い続けてくれた常連さんたちのおかげだという。別のお店の開店と同時に入るお客さんがいた。母親とマスターが昔からの知り合いだという。マスターは、お客さんというよりもご近所付き合いという感じだと話した。夜10時過ぎ、カメラに向かって歌う50歳の男性がいた。同じ店内には高校の同級生だという22歳の若者たちもいた。立石の風情に触れてみたいと勇気を出して来てみたのだという。どちらの世代にも分かる曲を歌い、みんなでカラオケを楽しんだ。今日は花の金曜日、結婚式の前夜にママに会いに来たという常連カップルや、北海道から上京して20代から通う元プロボクサーなどのお客さんがいた。
撮影3日目。この日も、たまたま居合わせたお客さん同士で盛り上がっていた。遠方から5年ほど通い続けているという男性がいた。男性は仕事がうまく行かず休職中だが、呑んべ横丁には足を運べるようになってきたという。男性の悩みをママが受け止めてくれたこともあり、男性はそろそろ働き始めようかと思うようになってきたという。夜10時半、店の外にまでお客さんが溢れていた。営業中に自転車でコンビニに行き、誕生日を迎えた常連さんにケーキをプレゼントしたママがいた。地方から出てきているなど、近くに家庭を持たない人たちへ、疑似家族としての気遣いだという。
吹石さんは「体験したことのない世界を体験させてもらったような気がします」と感想を語った。
番組はNHKプラスで見逃し配信を行うと伝えた。
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