2023年8月10日放送 19:30 - 20:42 NHK総合

上白石萌音のはるかなる古代文明 マヤ

出演者
上白石萌音 
上白石萌音のはるかなる古代文明 マヤ
趣旨説明

今回はかつてメキシコを中心に栄えたマヤ文明の謎に迫る。

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マヤ文明メキシコ
世界遺産 パレンケ ジャングルの都市の謎

メキシコはかつてマヤ・アステカなどの古代文明が栄えた地。チアパス州には石造りの建物が林立する世界遺産のパレンケがあり、7世紀頃に栄えたピラミットや王宮などがある都市の中心部となっている。マヤ文明には鉄がなく、人々は石器で石灰岩を加工して建物を建築した。30年前にパレンケから神殿のような建物が発掘され、中からは石棺が発見された。石棺の中には真っ赤に染まった遺骨があり、辰砂という鉱物で覆われていたため赤く染まっていたという。赤は人の血を意味していて、赤くすることで死者を蘇らせるという意図があったと考えられている。骨は女性のもので状況からかなり身分の高い人物と推察され、レイナ・ロハ(赤の女王)と名付けられた。レイナ・ロハは孔雀石やヒスイなどの緑色の石を使った精巧な仮面を身につけていて、目を見開いて生きていることを表している。神殿が見つかる前に発掘されたピラミットにはパカル王の墓があり、同じようなヒスイの仮面をつけて埋葬されていた。マヤの人にとって緑色は命を表していて、植物のような再生の象徴として生まれ変わることを意味している。マヤでは世界は天上界・地上界・地下界から成り立つと考えられていて、ピラミットの内部を地下へと降りていくことは死後に地下界へと旅立つことを表していて、そびえて立つピラミットは地下界から天界へと王が転生して再び地上界へと生まれる事を示している。遺骨のDNA検査の結果レイナ・ロハはパカル王との血縁関係はなく、パカル王の王妃と考えられている。

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キニチ・ハナーブ・パカル一世チアパス州(メキシコ)パレンケパレンケ遺跡博物館マヤ文明メキシコシティ(メキシコ)

パレンケは奥深いジャングルに建っていて、宮殿には地下水路があり下水道が完備されていた。ジャングルでは雨季になると相当な雨が降り、豊かな水に恵まれたためジャングルで都市が栄えることになった。一方で川に囲まれたパレンケでは洪水に備えて宮殿横に水路が築かれ、宮殿の地下水路からの排水も水路に流れるように設計されていた。マヤの人たちは主にトウモロコシを栽培し、農村にまで整備された水路によって安定的な収穫量を保った。宮殿の中心には4階建ての塔が建っていて、周囲一帯を見渡して統治していた。

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トウモロコシパレンケマヤ文明メキシコ
アグアダ・フェニックス遺跡 マヤ文明の原点

アメリカ・アリゾナ大学の猪俣教授。マヤの研究に携わること40年。今も発掘調査が続いている現地へ。自然の地形にしか見えないがここが遺跡の大基壇の上だという。大基壇とは人工的に盛り土して造成した巨大な壇。遺跡を見渡せる場所へ向かった。LiDARで見るときれいな長方形になっている。LiDARとは小型飛行機からレーダー光線を地上に照射することで広範囲にわたる測量ができる新技術。LiDARで測量された画像。長方形をした明らかに人工的な地形が浮かび上がってきた。これがアグアダ・フェニックス遺跡。巨大な基壇は南北1.4km東西400m。紀元前1100年頃から造られ始めた。マヤ文明最古かつ最大の人工建造物。中心部に2つある突起は盛り土をして造られたピラミッド。考古学者や地元村人たちが協力し発掘作業が進められている。地中から姿を現したのは床面。マールという粘土質の石灰岩で造られていた。雨季になって雨が降るとドロドロになるのを避けるために石灰岩の粉と石で床面を造った。当時の姿を推定し復元。アグアダ・フェニックスは沢山の人々が周りの村々から集まった共同の祭祀場だという。中心部からマヤの世界観を象徴するものが見付かった。それはヒスイ。儀礼のハイライトで貴重なヒスイを埋めたのだろう。ヒト型のヒスイ。顔には目・口・腕・足。ワニ型のヒスイ。大地は巨大なワニの背中だとマヤの人々は信じてきた。調査を進めると人々がヒスイを埋めた場所に秘密が隠されていたことが分かった。それを解き明かすのは遺跡の中心にある2つのピラミッドと細長い基壇の位置。土を盛り上げて造った紀元前のピラミッド。後の時代の石造りのピラミッドとは違い丘のようにも見える。その頂点は細長い基壇の中心を結んだ直線。その延長線に太陽が昇る日があるという。それは2月24日。2月24日は乾季の中頃にあたる。古代マヤの人々は太陽の動きを観測し一年の行事を決めていた。正確な暦を作り2月24日に集まって儀式を行った。そのために巨大な基壇は築かれた。祭祀のための巨大な建造物は人々が力を合わせ造り上げることから始まった。

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エル・パルマール遺跡 文字の解読から新事実!

マヤ文字とは碑や土器などに記された絵のようにも見える複雑な形をした文字。4万~5万あると考えられているが解読されているのは全体の7割ほど。二世紀~九世紀にかけて栄えたエル・パルマール。遺跡からはマヤ文字が刻まれた石碑が数多く見つかっている。近年は文字の解読が進み、マヤ文明の実像が明らかになってきた。カリフォルニア大学の塚本さんはマヤ文字を解読するエキスパート。石灰岩で造られた巨大な石碑。刻まれたマヤ文字は長い年月を経て浸食が進み解読困難。マヤ文字を解読するために研究者たちは真夜中に懐中電灯で陰影をつけて解読していた。これを改善するために現在は3次元測量というものを導入。3次元測量はパーツごとに撮影した写真を合成し3Dモデルを作り出す最新技術。パソコン上で3Dモデルの石碑に陰影をつけ文字を浮かび上がらせる。この技術によって文字の解読が飛躍的に進んだ。これまでは王を中心とした研究だったが王に仕えた人々も研究されるようになった。マヤの社会は王の絶対的権力によって支配されていたと考えられてきた。実は様々な人々が役割を分担して国家を運営していたことが分かってきた。いくつもの都市国家で構成されていたマヤ。それらを1つの文明として結びつけたのは文字。文字によって都市国家の間で情報が共有され社会により複雑なものへと進化していったのだ。

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得意な都市国家の戦争

マヤ文明では王族・貴族のみが共通のマヤ文字を使用していて、日本語の漢字のように部首をもつ文字もある。一方でひらがなのように音を表す文字もあり、マヤ文字の碑文には主に王朝の歴史が記されている。碑文には戦争の歴史も記されていて、パレンケ遺跡からは敵国の捕虜6人を捕まえたという記録が発見された。マヤでは王族や貴族が戦士として戦い、敵を生け捕りにするためあえて殺傷能力の低い石槍を使用していた。勝利した国は敵国の王を捕虜にして属国を増やして勢力を拡大していった。

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パレンケボナンパック遺跡マヤ文明
衰退の謎を得鍵 湖の地層は語る

マヤでは8~10世紀にかけて多くの都市が衰退し、強国パレンケも消滅した。パレンケから東に100kmのサン・クラウディオ遺跡も10世紀頃に衰退し、遺跡の中にある湖の地層を調査した結果10世紀頃に干ばつや大雨などの極端気象が増加したことが分かった。極端気象は15年に渡って続いたことも分かり、衰退に向かったとみられている。

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世界遺産チチェン・イツァ 繁栄を続けた都市の秘密

同じ時期に複数の場所で都市が衰退した理由について、都市の人口増加と環境破壊があったと思われ、都市化はいかなる時代においても環境破壊に結びつき、戦争が起こりやすく極端な気象が頻発するようなことがあると、複数の要因が絡み文明都市が衰退し得るという。いかなる文明も限界を超えると衰退するという。今後発掘調査、遺物の分析、碑文の解読、過去の気候変動を照らし合わせることで、マヤ文明盛衰の歴史が明らかになるという。支配層の戦士の装身具であったと考えられるものについて、トルコ石をモザイクのように貼り付けた円盤で、ジャングルの都市が衰退していた時期に作られていたもので、一部が衰退しても全体が衰退しなかったと思われるという。

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トルコ石マヤ文明

ユカタン半島の北部、パレンケから約600kmの低木林が広がる大きな川の見当たらない乾燥地帯にあるチチェン・イツァは、ジャングルの都市が衰退した10世紀頃に繁栄を極めたという。高さ30mのククルカン神殿は、マヤの人が信仰した神が年に2度、春分と秋分の夕方に天から降臨するという春分の夕方、階段の一番下のヘビの頭を象った彫刻に沿って、西日がピラミッドの角に遮られてできた光の模様がヘビの胴体のように見える。人々はこれをククルカンという神の姿と信じた。ククルカンは羽毛を持つヘビの姿をした神で、豊穣と風を司る。春分にククルカンが降臨すると、人々は1年の豊作を祈った。ピラミッドはマヤで発展した天文学の知識を注ぎ込んで設計されていたもので、東西南北それぞれの面に91段の階段が作られ計364となり、最上階の神殿に上がる1段を足すと1年の太陽周期と同じ365段となる。ククルカンの降臨により王は権力を見せつけ人々を支配した。降臨したククルカンはピラミッドの北にある泉に向かい喉を潤したという。聖なるセノーテと呼ばれる泉で、雨の神が宿る神聖な場所と考えられ、川がないこの地域に雨季に十分な雨が降るよう雨乞いをしたという。セノーテは石灰岩の地盤にできた空洞に地表が陥没し地下水が溜まってできた湖のことで、ユカタン半島に3000ヶ所以上あると言われている。セノーテを生活や農業に利用したことで乾燥地帯でも都市が維持できた。

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チチェン・イツァは聖なるセノーテから出土した品々が、メキシコシティの国立人類学博物館に展示されている。チチェン・イツァの辺りでは金は採れず、金で作られた供え物は交易によって運ばれたものだという。金は南米からパナマへ伝わり、チチェン・イツァにもたらされたという。トルコ石のモザイク円盤に使われたトルコ石は、メキシコ北部から海を超えて交易で持ってこられたという。トルコ石でヘビの姿を際立たせている。当時はカヌーに輸出品や輸入品を積んで海を渡っていたという。

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ククルカン神殿西にある球技場には壁につけられたリングがあり、ボールを通す儀式が行われていた。その球技はどの都市国家でも頻繁に行われていたという。古代の球技を現代に蘇らせようとする人々は、残された記録を元に研究を重ね再現していた。ゴムボールを腰で跳ね返し、リングを通すと得点となる。より多く得点したチームが勝ち、勝者が神に祈りを捧げる。球技場に残されていた彫刻には首をはねられた人物が描かれており、噴き出す血が7つのヘビの頭になり植物になり実をつけている。負けたチームのリーダーは生贄にされることもあったという。遺跡の東に残されている複数の柱に囲まれた神殿にあるチャックモールは腹に皿を抱える戦士を象った像で、皿に供物が捧げられたという。顔を横に向け西の方角を見ている。16世紀にやって来たスペイン人が都市国家同士の対立を利用し、各地を制服していった。ここでマヤ文明が滅びたという人がいる。

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現代に息づくマヤ

ユカタン半島には800万人以上のマヤ人が暮らしている。大第受け継がれてきた生活を続け、学校ではスペイン語を教わりながらも家庭内ではマヤの言葉を守り続ける人も少なくない。猪俣さんはマヤの人には征服されてからの辛い歴史がある、神秘的な文明との見方もあるが日本のように古代から現代まで文明は続いているとまとめていた。青山さんもマヤは行きている文明であり滅びてはいない、多様な王国による共存文明であり、一部が衰退しても文明全体が衰退することはなかったと紹介している。

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(エンディング)
エンディング

マヤ文明は今なお人々を魅了し続けていると紹介された。

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マヤ文明

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