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京都では伝統の技に支えられ極上のモノが作られている。今回のテーマは染色である。型を用いて色を染める型染めの技でココロに刻んだ風景を描く染色画家が襖絵を手掛けた。最先端の技術で絞り染めの型を作り出し、これまでにない立体の風合いがある。手作業で正確に染める手捺染では動いているように見える図形の染色に挑んだ。
祇園の南側に位置する京都最古の禅寺建仁寺。鎌倉時代創建の古刹には襖絵などが展示され、訪れる人を楽しませている。江戸時代俵屋宗達が描いた風神雷神図屏風や仏法を守るとする龍を天井に描いた双龍図などがある。2014年異色の襖絵が奉納された。ベトナムの風景の襖で型染めの技法で染め抜かれている。この襖絵を手掛けたのは鳥羽美花さんである。型染めの技法を作品に取り入れてきた。鳥羽さんが型染めに大学時代に出会い、思い描くのは過去に訪れたベトナムの景色である。鳥羽さんの代表作となったのが建仁寺の襖絵である。禅の心をベトナムバンドンの湿地帯の風景に託した。裏に回ると息を呑むような青の水辺が広がる。座禅がしたくなるような絵にしてくださいと依頼したという。
手掛けているのは染色絵画でベトナムの電線のある風景である。大切に使っているのは糊、きり終えた型を生地の上に重ね染色を防ぐために米でできた糊を置く。生地から型紙をゆっくりはずし置かれた糊が浮かび上がる。数日置いて染色の作業を行う。染め上がった生地を洗う水元という作業は染料を防ぐための糊を落とす。型ごとに何度も繰り返し作品に色を加えていく。
新選組縁の地である京都・壬生地区。壬生寺は新選組隊士たちの訓練所として使われていた。それを偲び、今も多くの人が訪れている。境内の水かけ地蔵は、地下からの水が湧き出ている。豊かな地下水を染色に用いようと、壬生地区には様々な染工場が集まった。創業約90年の絞り染めの工房では、松岡さんが伝統工芸士として絞り染めの技を受け継いでいる。絞り染めは布の一部を縛るなど、染料が染み込まない箇所を作り白く染め残す技法。特に力を入れているのが2枚の板に布をはさみ、色を染め分ける板締め絞り。板を外すと挟まれていた部分が白く染め残り、模様が浮かび上がる。
板締め絞りに様々な染色の技法を重ねていくと、多彩な表現が可能となる。板締め絞りに使われる木型は専門の職人の手によって作られてきた。しかし職人の数が減り、新たな型を作るのが難しくなっているのが現状。そこで松岡さんは3Dプリンターといった最先端技術を取り入れ、新たな型作りに挑戦することにした。試行錯誤すること2年半、新しい型が完成。型に凹凸をつけることで板締め絞りを進化させ、生地を立体的な風合いにすることに成功したという。松岡さんはそれらの型を使ってスカーフ作りに挑戦。様々な技法を駆使して作品を生み出してきた松岡さん。伝統と革新を融合したものづくりへの挑戦は続く。
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京都・一乗寺は学生の街。書店やカフェなど個性的な店が軒を連ね、新しい文化を発信してきた。そんな街の一角にある創業90年を超える染工場。洋服や傘などの生地を主に手掛けてきた。鷲野さんは30年以上に渡り、手捺染という染色技法に取り組んできた。その技の限界を極めようと、今「錯視」を手作業で染めオリジナル製品を製造している。鷲野さんの手捺染はシルクスクリーンの型の上から染料を混ぜた糊を塗り、生地に模様を移す技法。一色ごとに型を変え、染料を重ねていく。手捺染で染色するとプリンターでは出せない鮮やかな発色や、複雑な柄を再現できるという。
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鷲野さんは難易度の高い緻密な錯視図形を染めることで、自らの技術力を確かめたいと考えた。挑んだのは錯視の第一人者である北岡さんがデザインした図形。複雑な図形を染めるのは想像以上に難しいものだった。そこで鷲野さんは今まで使っていた型を見直すことに。網の目をより細かくすればくっきり染色できると気づき、従来より細かい目を特注した。しかし染料のムラやかすれができることも。そして2年の歳月をかけて作成した錯視図形の生地。緻密な図形が完璧に再現されていた。
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黒紋付は黒染めという技法で染められ、艶のある深い黒が求められてきた。この黒紋付を手掛ける黒染め専門の工場では、黒よりも深い究極の黒を目指しその技を磨いてきた。荒川さんは今、受け継いできた黒染めの技を用いて新たな事業に挑戦している。その1つが洋服の染め替えサービス。着古したものやシミが付いたものを、黒染めの技を駆使して再生するものである。黒染めを施すと天然繊維だけが黒くなり、化学繊維は染まらない。素材によって異なる風合いが生まれる。他にもアパレルブランドとのコラボや独自ブランドの立ち上げなど、事業を拡大してきた。これらは黒染めの技を未来につなぐための取り組みだという。
エンディング。