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上野樹里が神戸港震災メモリアルパークの展覧会にあるゴッホの名作にあいに行く。
オープニング映像。
阪神・淡路大震災から奇跡の復興を遂げた兵庫県神戸市。今、神戸市立博物館で復興を象徴する特別展が開催中。展示されているのは、オランダで描いた初期の作品から南フランスに移り住んで作風を一変させるまでの60点の作品。ひときわ輝きを放っているのが今日の作品の夜のカフェテラス。1888年に描かれた縦81センチ、横65センチの一枚。
ゴッホの夜のカフェテラスという作品は、煌と輝くカフェテラスの上に星のきらめく青い夜空がある。当時、夜の街を照らしたのは黄色いガス灯の灯り。勢いのある筆のタッチから店に集った客の笑いさざめく声が聞こえてくる。夜露に濡れた石畳に目をやると、青と水色、緑やオレンジなどと複雑に色が絡み合っている。一つ一つの星は絵の具をチューブから直接キャンバスに絞り出したよう。
1853年にゴッホはオランダの南部のズンデルトに牧師の家に生まれた。若い頃は画商として働いたり、キリスト教の伝導師を志したりとしたが長続きはしなかった。画家を目指した20代の半ばに描いた一枚。ゴッホは働く人々の絵を何枚も描いていた。その当時の作品について塚原晃塚原さんはゴッホが絵を描くきっかけになったのは27歳の時に一生懸命に働く人々の姿に感動し、それを得に残したいと考えた。しかし絵は全く売れず貧困の果てに一縷の希望にすがり、向かったのは芸術の都パリ。画商として成功し、ゴッホを経済的にバックアップしていたのは弟のテオ・ファン・ゴッホ。印象派の画家が描いたキャンバスに踊る色彩に印象をうけた。さらに日本画家にも注目し、歌川広重の絵を模写するほど魅了され溺愛した。
ゴッホは1888年にフランスのアルルに向かった。強烈な陽の光が降り注ぎ、色の対比を産む光景が底にあった。ゴッホにとってアルルの風景は理想の日本そのものだった。ここでパリで知り合ったゴーギャンら気鋭の画家と暮らし希望にあふれるコミュニティの創造を夢見た。弟のテオにあてた手紙には夜のほうが昼間よりも色彩が豊かに見えるなどと綴っている。
アルルの街の中心部にあるフォルム広場の南側には夜のカフェテラスの題材にあったカフェが今も営業を続けている。1888年の9月の夜に、ゴッホはこのカフェを描き始めた。その表現には特徴があり、ゴッホの筆使いはとても計算されていて、ウジェーヌ・ドラクロワという画家に影響されている。ドラクロワは印象派以前に、色彩を理論的に分析し応用した画家だった。ルーヴル美術館のアポロンの天井画や、大蛇ピトンを倒すアポロンでは背景の黄色い光と青紫色の組み合わせに補色の理論を応用している。赤青黄はそれぞれ隣同士で混ぜわせた時に向かい側になるのが補色。赤と青緑、青とオレンジ、黄色と青紫と補色は互いの色の鮮やかさを強調する効果がある。夜のカフェテラスでも、手前のカフェと奥の街や夜空は補色の関係に。その効果で、この絵は一瞬で目を引く華やかさをそなえている。
そんな色彩の共演をウクライナのアーティストのザキルジャノフさんは3DCGにした。夜のカフェテラスを3DCGにした映像が紹介された。
1885年のパリ。ゴッホが夜のカフェテラスを描く3年前にある小説がベストセラーに。ギ・ド・モーパッサンのベラミはベラミは貧しい青年がその美貌を武器に欲望を渦巻く上流社会でのし上がり冨と地位を掴みとる物語。小説ではカフェは人がたくさんいて。そのどぎつい照明の下に飲み物を求める客が大勢いると描写されている。ゴッホはその本を自らの作品にも描いていて、塚原さんはゴッホはベラミの大ファンで、主人公と同じようにお金がない青年だったゴッホは、カフェで食事をしている人々が妬ましく感じていたが、いつかこのような場所で遊びたいという野望を抱くようになったという。それが夜のカフェテラスにもつながっていくと答えた。
南フランスのアルルはゴッホが最も希望に溢れた1年を過ごした街。1888年9月の夜に、ゴッホは街のカフェを描き始めた。ゴッホには少し前に描いたカフェの絵がある。ゴッホはカフェについて人が身を持ち崩し、正気を失い、罪を犯す場所だということを表現と語っている。
夜のカフェテラスに学芸員の塚原さんは新しい解釈にその当時のカフェは今のようなものではなく風俗営業の現場でもあり、男女のいかがわしい社交場でもあった。その星空は孤独な存在であり、自分たちのことを愛してくれる家族を作りなさいと示しているのが星空だと独自の解釈をした。さらにこの星空を専門家にみてもらうと、わし座のθ星があり、実際の星空の配置と酷似しているという。1888年9月の星空を忠実に描いていた。その後もゴッホは自身の作品の中に星の配置を正しく描いている。
夜のカフェテラスは信じるもの全ての魂を救う大きな愛をゴッホはこの絵に込めたと想像も出来る。
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