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オープニング映像。
石灰石は炭酸カルシウムを主成分とした鉱石で、日本で自給できる数少ない鉱物資源として知られている。石灰石の国内出荷量の約半分はセメントの原料として利用されている。セメントはコンクリート構造物の材料として現代社会の暮らしを支えている。今回のガリバーはセメント製造大手の住友大阪セメント。設立は1907年。以来100年以上に渡ってセメントを安定供給してきた。セメント工場ではこれまで最終処分場に送られていた様々な廃棄物を受け入れて、原料や熱エネルギー源として使っている。
住友大阪セメントの年商は2225億円、従業員数は2886人。国内屈指の規模を持つ山口県の秋芳鉱山をはじめ8つの鉱山と6つの製造拠点を持ち、研究所が1か所。海外では中国とアメリカに拠点を設けている。セメントの製造・販売に加えて、石灰石の採掘・販売、コンクリート構造物の補修材料の製造・販売、光電子事業、新素材事業も手がけている。セメントは石灰石のほか、粘土、けい石、鉄原料などからできている。コンクリートはセメントを原料の一つとして作られた建築材料。コンクリートは二酸化炭素を吸収する。他の産業や自治体から日々大量に発生する様々な廃棄物はセメントの原料として再利用が可能だ。栃木工場では石灰石以外の原料のほとんどを廃棄物に置き換えてセメントを製造している。
住友大阪セメントの鉱山から工場までは3.2km。石灰石を工場まで空気で圧送するカプセルライナーは時速30kmで1時間に約300tを輸送する。かつてはディーゼル機関車が牽引する貨車で運んでいたが、周辺の住宅への振動や騒音対策のため置き換えたという。石灰石は掘る場所によって成分に差があるので、住友大阪セメントでは採掘現場ごとに毎日成分を分析している。そのため、石灰石を積む時には集積した山のどこを取っても品質が変わらないようにゆっくりと満遍なく積んでいる。セメントの製造工程で最も注意が必要なのは燃焼温度を保つこと。原料だけでなく熱エネルギー源にも廃棄物を利用している。年間2500万t程度の廃棄物を処理していて、最終処分場の受け入れ期間を約13.5年延ばせるという。また、大規模災害の後大量に発生する災害廃棄物も積極的に受け入れているという。
住友大阪セメントの設立は1907年。前進である磐城セメントを設立、セメント製造事業をスタートさせた。1963年には住友セメントに社名変更。バブル崩壊が始まった1990年度をピークにセメント需要は低迷した。1994年、大阪セメントとの合併により住友大阪セメントが誕生。3工場を閉鎖し、高機能品事業を立ち上げた。セメント事業で培った独自のナノ技術をもとに半導体製造装置や化粧品材料分野、光電子分野で事業を展開している。近年、住友大阪セメントが力を入れているのがコンクリート構造物の補修事業。
近年、コンクリート構造物の老朽化に伴う危険が問題となって、補修工事のニーズが高まっている。モルタルはセメントと砂と水などを混ぜた建築材料で、従来から広く使われている工法ではあらかじめ材料を水と混ぜて吹き付けていた。住友大阪セメントがノズルの製造企業と共同開発した工法ではモルタル材料と水を別々のチューブで送り込んでノズルの手前で混ぜている。材料がサラサラしていて軽いのでチューブの長さを最長300mまで伸ばすことが可能になり、機材を現場近くに運ぶ必要がなくなり難所での作業性が向上した。また、高圧で大量の材料を送ることができるため、一度で20cm以上吹き付けることができる。
セメントを製造する過程ではエネルギー源の燃焼とは別に石灰石の化学反応によって二酸化炭素が排出されてしまう。住友大阪セメントは国立研究開発法人のグリーンイノベーション基金事業の一環としてセメント業界初の取り組みに挑んでいる。人工石灰石を作るためには酸化カルシウムと二酸化炭素が必要。製造過程で排出される二酸化炭素を原料に使うことで二酸化炭素排出の実質ゼロを目指している。カルシウムはゴミ焼却灰などから抽出される。人工石灰石を使った世界初の路面標示塗料や高品質な紙の開発に成功した。
「“環境解決”というキーワードで存在感のある企業を目指していきたい」と諸橋は語った。
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知られざるガリバーの次回予告。