2025年1月4日放送 7:22 - 7:52 NHK総合

経済バックヤード

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(オープニング)
今回は…

いま多くの人が「手が届きにくくなった」と感じている買い物。それは「家」。東京・大阪・名古屋といった都市部を中心に住宅地の価格が値上がりしている。それに伴い住宅価格も上昇。ただ、マンションが2010年に比べ2倍以上に上がる中、比較的上がり方が緩やかなのが戸建て住宅。ということで、今、戸建て住宅に注目が集まっている。大きく変わる一戸建ての最新トレンドは?家を売る人たちの仕事から見える秘策とは?今回は、戸建て住宅業界の裏側に迫る。

オープニング

オープニング映像。

File02:戸建て住宅業界
平屋はなぜ若い世代にウケる?

今回見る戸建て住宅業界は、客の注文に合わせて家を建てる「注文住宅」が得意な企業と、家と土地をセットで販売する「分譲住宅」のが得意な企業の2つ。去年一年間で新しく建てられた家の数を見ると、注文住宅は戸建ての分譲住宅やマンションに比べ最も多くなっている。注文住宅って高くないのだろうか?いざ潜入!

年間8200棟以上の注文住宅を販売している住友林業。いま売れているのは平屋。販売の4割が平屋の契約で、5年ほど前からすると1.5倍に増加しているという。しかも、契約者の半数以上は20~30代。平屋を建てた30代の夫婦を取材した。夫婦は比較的地価が安い郊外の土地を購入。お気に入りは広いリビングだそう。平屋が人気のポイント(1)は家事動線のシンプルさ。階段がないのでロボット掃除機の持ち運びが必要ない。時間を効率的に使いたい若い世代にとって、ワンフロアで完結する暮らしは魅力的だという。ポイント(2)はコスト面。同じ部屋数の2階建てと比べると、階段などがない分、建築費を抑えることができる。また、建てた後も、屋根の修理や外壁の塗り直しをする時に足場を大きく組む必要がないというメリットもある。「家事の時間を減らして自分の時間を大事にしたという人が非常に増えたイメージがある。これからも平屋の需要は増えていくと思います」と会社も商機を見出している。

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住友林業名古屋(愛知)
注文住宅 価格は下げられる?

年間3400戸以上の注文住宅を販売している大和ハウス工業。営業担当の松浦力さんについていくと、坪単価や同じ建築費での性能をメーカーごとに比較した動画を見ていた。家が高くなる中、客のほとんどがこうした動画で予習をしてくるようになり、営業スタイルも大きく変わったという。25年前は客に知識がほとんどなく、「住宅展示場に教えてもらいに来ている」というスタンスだったが、今は求められるハードルが上がっているそう。コスト感覚がシビアな客に家を売るため、大和ハウス工業が力を入れているのが「規格住宅」。去年から注文住宅の新しいプランとして売り出した。フルオーダーの住宅と異なり、ベースとなる1900種類以上の中から条件に合ったものを選択し、その上で外壁や間取りなどを好みに合わせて注文することができる仕組み。フルオーダーよりも15%程、価格が安くなっている。この日、規格住宅の魅力をプレゼンするために用意していたのは、去年から本格的に開始したVRだ。建てる予定の家を3Dで映し出し、自分で操作しながら中を見ることが可能。細かくチェックすることで、客は気になる所を相談することができる。松浦さんが、「VRのいいところは、いいところだけではなく問題点もつかめること。平面図でわからなかった部分を確認できたので、それが先につかめたというだけでも効果はあると思います」と語った。

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さいたま(埼玉)大和ハウス工業
戦略の真意は? キーパーソンに聞く

経済取材20年の渡辺圭司が、住友林業と大和ハウス工業の戦略を取り仕切る役員を直撃。まずは、平屋のニーズを取り込もとうする住友林業。その戦略を大谷信之常務に聞く。大谷常務は、「我々は設計力を売りにしているので、自由設計でお客様にあった空間を作ることができる。強みを活かせる、差別化できるのが平屋だと考えています。私が入社した当時の30年前は平屋の需要は少なかった。しかし、平屋が色んな意味でリーズナブルになってきたのが大きな変化。設計をしてみるとコスパが安い、動線が便利、共働きが多いお客様が住んでみたら素晴らしいと。意外な発見だと思っています」と語った。

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住友林業大和ハウス工業

一方、注文住宅の中でより価格を抑えた規格住宅を打ち出す大和ハウス工業。永瀬俊哉常務にその理由を聞く。永瀬常務は、「我々の社員の人件費もどんどん高くなってきていますが、それと反比例するように着工戸数がどんどん下がってきている。考え方を変える必要がありました。今まで過去に何万棟も建ててきていますが、それをちゃんとデータ化し、そのデータを使ってお客様に提案し、できるだけ設計作業に人手がかからないようにすることはできないか、ということで規格住宅を始めた。自分たちが生産を良くすることが求められていると思います」と語った。市場が縮小し、限られたパイの奪い合いとなっている戸建て住宅業界。それぞれが強みを生かした大勝負に出ている。

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大和ハウス工業
岐路の勝負手 分譲住宅でコストダウン

これまで主に注文住宅を手掛けてきた大和ハウス工業。乗り出したのは、より価格が抑えられる分譲住宅の強化だ。営業担当の中村卓也さんの一週間は、商品となる分譲住宅の掃除から始まる。中村さんは「物件が命みたいなものなので、そこは一番気を遣ってやっています」と語る。分譲住宅は、一度に複数の家を建てることなどでコストが抑えれられる。建物の平均価格は約2470万円と、注文住宅の半分ほど。会社では2027年度には分譲住宅の数を2倍以上にする計画だという。なぜこの戦略がとれるのか?その秘密が詰まった“会社の心臓部”とも言える会議に潜入!集まっていたのは、主に東京23区の戸建て住宅・分譲マンション・商業施設など様々な事業の責任者。大和ハウス工業では戸建て住宅以外の事業も全国で手広く行っている。そのため、分譲住宅を建てる上で欠かせない土地情報をいち早くキャッチできるのだ。この日も、物流施設などを担当している部署の責任者から貴重な情報があった。土地がないと仕事な成り立たないことから、土地の獲得が仕事の8割ぐらいを占めているという。

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つくば(茨城)千代田区(東京)大和ハウス工業

ある日、営業担当の中村さんに密着していると、分譲住宅ならではの出来事に遭遇。見学に来た人が、その場で契約を決めたという。分譲住宅の営業の最大のキーワードは「スピード」。間取りなどを決める必要がないため、打ち合わせの回数は注文住宅の約半分。コストが減り、さらにコストを下げることができる。一回目の打ち合わせでこの家を買うと決めた家族は、家を探す中で比較的安い分譲住宅に惹かれたという。現物を見ることができ、建て売りのわりには色々と工夫があるのが良かったそう。打ち合わせ回数が少ない分譲住宅で契約に結びつけるため、中村さんたちは週に一度、会議で作戦を練っている。大事にしているのは、客の家族構成からライフプランを想像して提案することだという。

アメリカに活路 ノウハウ生かした勝負手

住友林業がビジネスチャンスを見出し、急速に事業を広げているのがアメリカ。日本で販売する家の数は横ばいだがアメリカではどんどん数を伸ばし、今や逆転するまでに。住友林業ではアメリカの住宅事業の経常利益が全体の約66%を占めている。座親大輔さんがワシントン周辺で次々と見ているのは、家を建てる予定の土地。300超の大きな区画ばかりだ。座親さんは「この何もない所が小さな街になりますので、それを見られるポジションにいるのは非常に幸せなこと」と語る。移民などで人口が増え、チャンスが広がるアメリカ。ここでどう競争に勝ち抜くのか?その鍵は、材料となる木材の調達から製造・住宅販売まで一貫して手掛けることで培ったノウハウにある。屋根や壁などを途中まで組み立て、それを建築現場に送って家を建てていくという一連の流れを会社のグループで行えるようにし、コストダウンを図っている。アメリカでは建築現場で1本1本木を切って組み立てることが多いとされるが、その手法と大きく異なる。今アメリカで販売している戸数は年間約1万戸。強みを生かし、2030年には2万3000戸に増やそうとしている。

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アメリカ住友林業ワシントン(アメリカ)住友林業

アメリカの家といえば吹き抜けの高い天井、暖炉、広くて豪華というイメージがあるが、今はそれだけではない。力を入れているのは「アフォーダブル」、つまり手ごろな価格だ。実は、アメリカでは住宅の価格がこの5年で1.5倍以上になり、物価の伸びを大きく上回っている。そこで、土地代や建築費などのコストを抑えた家を販売している。座親さんが訪れた分譲地で売り出していたのは、幅が約6mの小さな家「タウンハウス」だ。1階の床面積が約56平方メートルとコンパクト。販売価格は26万4千ドル(約4065万円)~。家同士が接しているため土地が狭くてすむ上に、外壁の面積が減るため建築コストも抑えられるという。多少面積が小さくても、「持ち家を持つ」というステータスを含めて、ファーストホームバイヤーや新しい若年層の人たちにも好評だそう。

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住友林業
思い切った分譲化 そのとき社内では

大和ハウス工業の永瀬常務に話を聞く。国内で分譲住宅を大幅に増やそうとしている理由について、永瀬常務は「我々作り手の方で決めて着工すればいいので、非常にコストダウンできるというメリットがある」と語る。また、元々やってきた注文住宅事業から分譲住宅事業へのシフトについて「社内では反対している人もいたし、部門の中でも抵抗勢力みたいなものはあった。今まで請負を主体でやってきた中、慣れてないということで、自分たちでできるのかという不安もありました。そこについてはほぼ1年をかけて、私と役員2人で手分けして全支店を回りました」と語った。ただ、分譲住宅を増やそうとすると、もともと得意としてきた企業と競わなければならない。その点について「ガチンコの価格勝負はしていません。基本的に注文住宅で使っている商品をそのまま分譲住宅で使用しているので、『それ、いいじゃない』と思っていただける方がいらっしゃると思ってやっている」と語った。

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大和ハウス工業
アメリカに活路 バックヤードを深堀り

住友林業の大谷信之常務に話を聞く。力を入れているアメリカ事業、そしてアメリカ市場について谷常務は、「日本と違って人口が今後も増加し続けるということで、市場としてとても魅力的。木造住宅の国ですので、そこに我々の商機があると思っています。」と語った。20年ほど前から手掛けてきたアメリカ住宅事業だが、危機に直面したこともあったという。それはリーマンショック。大谷常務は「非常に痛手を被った。家の値段が下がる、売れないで4年連続の赤字。撤退という半脱もあり得たが、人口動態を含めて長い目で見ると必ず復活する、次に求める市場としてふさわしいと。ここだけです」と語った。

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アメリカリーマン・ショック住友林業

大和ハウス工業もアメリア事業を強化している。永瀬常務が「最優先エリアかなと思います。人口もどんどん増えていますし、住宅不足も長く続いているので、まだまだ成長できる機会があるエリア」と語った。

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アメリカ大和ハウス工業
住宅メーカー 消費者とどう向き合う?

様々な打ち手を繰り出す住友林業と大和ハウス工業。最後に、今後、住宅メーカーとして消費者とどう向き合っていくのか聞いた。住友林業の大谷常務は「“住む”から“過ごす”へと意味合いが少し変わってきたのかと。働く場所を含めて機能をしっかり備えているか、快適か。お客様にとって満足できる家じゃないといけない。その中に必ず勝機はあると思っています。全く悲観的にはなっていません」と、大和ハウス工業の永瀬常務は「日本は地震も多いですし、寒暖の差もあります。防犯対策ができた家というのも、もっともっとニーズがあると思います。ハードルはどんどん上がっています。“高いけど買って”では淘汰される。まだまだ生産性を高めていける余地はあると思います」と語った。

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住友林業大和ハウス工業
(エンディング)
エンディング

エンディング映像。

(番組宣伝)
お正月もNHK BS

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