- 出演者
- 合原明子 内海麻利
議論となっている明治神宮外苑再開発計画の詳細な事業スキームが分かってきた。野球場などの建て替えや高層ビルを建設する計画で、一部の工事が始まっているが、反対の声が相次ぎ、計画は半年以上遅れている。こうした中、事業者の代表が初めて単独インタビューに応じた。三井不動産の幹部は「利活用することによってその資金を捻出して内苑の緑を守る」などと話す。
去年3月に始まった神宮外苑の再開発。事業者に名を連ねているのは三井不動産などの4社。なぜ再開発が必要なのか、なぜ高層ビルが?などの疑問を明らかにしようとNHKでは2年にわたりインタビューの交渉を続けてきた。今回初めて事業者側がカメラの前で取材に応じた。事業者代表の三井不動産 取締役 専務執行役員 鈴木眞吾さんは「すばらしい今の外苑 これを将来に渡って将来にふさわしい形にさせていただいて 次の100年につないでいくと」「我々としてのこの開発における意味 大義」と語る。再開発が進められているのは主に明治神宮の土地。神宮球場とラグビー場はそれぞれ位置を変えて建て替えるなど、一帯を大きく作り変える計画。イチョウ並木は保全するとしている。なぜ再開発が必要なのかを聞くと鈴木眞吾さんは「明治神宮におかれてはもともと内苑の緑を守るということが非常に重要なひとつの目的」と明治神宮の意向に言及。維持管理費の多くを外苑の収益で賄っている。最大の収益源が神宮球場。老朽化が進んでいて安定的に収益を得るためには再開発が必要だと考えたという。
なぜ高層ビルが必要なのか。今回の計画で疑問の声が上がっているのが新たに建てられる3棟の高層ビル。先週、外苑では再開発に反対していた坂本龍一さんの一周忌を偲ぶ集会が開かれていた。これまで事業者は高層化が必要な理由について、オフィス、商業、ホテル等の用途を前提とした高度利用を図り、一体的に市街地再開発事業を推進するなどと説明し、その詳細は説明してこなかった。番組では高層ビルの建設が計画の根幹にある資料を入手した。事業費は、保留床処分金で賄うことが記されていた。三井不動産 取締役 専務執行役員 鈴木眞吾さんは「今回の事業においては公的な資金、補助金みたいなものはない形でこの事業を成立させるというふうに計画してございます」などと説明する。
なぜ公園に高層ビルが。約100年前全国からの寄付や献木、勤労奉仕によって整備された神宮外苑。その後都市計画公園に指定され、70年近く開発が制限されてきた。2013年に作成された資料には、高層ビルの建設の候補地が5カ所記されていた。しかしこの時点で公園による規制がなく高層ビルが建てられる土地は一つだけだった。関係者は、この場所だけではビル1棟だけしか立てられず事業全体の費用を賄うことが出来ず課題だったと証言した。ところが具体化した計画では公園区域内に2棟のビルが建設されることになっていた。井不動産 取締役 専務執行役員 鈴木眞吾さんは「公園まちづくり制度という制度がある中で今回の開発が可能ではないかと考えて計画の提案をさせていただいて今回に至っているという認識」だと説明した。公園まちづくり制度は、都が公園として活用しきれていない未共用と言われるエリアを整備するために作ったもので、公園の区域から外し従来は作れなかった高層ビルの建設を可能にする。東京都 都市整備局 都市づくり政策部長の山崎弘人さんは、民間開発を誘導していくことによって当然室の高い民間プロジェクトも期待できますし、公園そのものではないんですけれども公園的な質の高い緑地空間も整備してもらおうと考えた、と説明する。しかし整備の根拠となる未共用の区域が秩父宮ラグビー場だったため、今回の再開発に適用したことは都議会でも議論を呼んでいる。なぜこの場所が未共用なのか。山崎弘人さんは「現地に行かれれば秩父宮ラグビー場は周囲をフェンスで囲われていて、試合があるときなどは当然出入りできるのかもしれませんけれども、常時自由に出入りできる状況ではない」などと語った。
都庁担当の尾垣和幸は、今回の取材で明らかになったことについて、今回の再開発は3棟の高層ビルを活用して得られる収益が事業の大前提となっていることがわかったとし、このスキーム自体は再開発の一般的な手法で、事業者は行政上の必要な手続きを経て行っていると説明している。ただ、公園に高層ビル建設は異例だという声も聞かれ、三井不動産も今回が初めてだと説明している。一方、高層ビルの建設を可能にした「公園まちづくり制度」の制度の適用の妥当性については議論になっているという。駒澤大学教授の内海麻利は、東京都の公園まちづくり制度は、公園が公共性の高い空間であるにも関わらず、都民にその内容があまり知らされていないと指摘。この制度は議会の議決を経た民主的なプロセスで制定されていない、不透明な活用を許容する制度に問題があると話した。尾垣和幸は、計画が半年以上遅れている要因となっているのは、樹木の伐採を巡る問題があるといい、東京都から事業者は去年9月に再開発に伴って伐採される樹木の本数を見直すように要請を受けていて、その対応に時間がかかっているためだという。またユネスコ諮問機関のイコモスが再開発の中止を求める警告を出しているという。内海麻利は、再開発が利害関係者の意向だけで策定され、その後市民に対する意見聴取が法的に定められているが、それが形だけになっている場合が日本の再開発に良く見られるなどと指摘した。
夏に開催されるオリンピックに向けて再開発が進むパリ。その中心部にあるレ・アル地区は、まちづくりの変化を象徴する地域。この地域に長年住んできたジル・プルベさんは、「再開発の中身を決めるのは私たち地元住民ではないことは十分理解していました それでもプロジェクトに参加したかった」などと語る。もともとこの場所にあったのはパリ中央市場。1960年代に再開発する計画が持ち上がった。住民たちは大規模な反対運動や訴訟を展開。20年にわたって声を上げ続けたが、再開発計画は実行に移された。当時はフランス各地で再開発を巡る深刻な対立が相次いでいた。そこで国が整備したのがコンセルタシオンと言う制度。この制度は、大規模な開発を伴うすべての事業について住民たちが事業の構想段階から議論に参加できるようにするもの。自治体が住民と事業者の対話の方法などについて議会に提案し、議決を受ける仕組みにしている。制度の導入で再開発は一変した。事業者は、情報の開示や住民の意見への見解を求められた。2度目の再開発は建築家を選ぶプロセスに住民が参加できるようになった。この制度は時間などのコストは掛かるが 事業者にも一定のメリットが有るという。再開発を担当する事業者は「できるだけ理解者を増やし反対する人を減らす 訴訟を起こされて計画に遅れが出ないようにするのが目的です もちろん住民の言うことをそのまま聞くわけではありません 個人の利益と社会の利益はきちんと線引して考えます」と説明する。
- キーワード
- レ・アル地区(フランス)再開発
内海麻利はパリのコンセルタシオンを研究の対象にしていて現地にも足を運んでいるといい、レ・アル地区の場合は日本のような説明会だけではなく、様々な参加方法をコミュニケーションプラント定めて具体的に進めている点が非常に参考になるんじゃないかと思うと話す。事例を見ていると、負担を将来の勝ちにつなげる発想が重要だと言えるという。尾垣和幸は、事業者は再開発に伴って、法令で求められている住民説明会を行った他、自主的に追加で開催もしているというが、住民からは計画がほぼできあがった後で意見しても計画が変わることは無いんじゃないかと諦めの声も聞かれるという。市民参加の新たな形を模索している例として、品川区での構想段階から区民アンケートなどを紹介した。これらの取り組みについて内海麻利は、どちらも始まったばかりだが、新しい時代の再開発の形が生まれる兆しではないかと期待していると述べた。
独眼竜政宗、美の壺、究極ガイド 2時間でまわるの番組宣伝。
所さん!事件ですよ・新プロジェクトX〜挑戦者たち〜・NHKスペシャル・大河ドラマ「光る君へ」ファンミーティングの番組宣伝。