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オープニング映像。
カンテレの記者上田大輔は記者。その前に苦労して司法書士に合格し、当初抱いていた刑事裁判に関わる仕事に就こうという気持ちはなくしていたという。企業内弁護士としてカンテレで働いていたが記者になってからは冤罪事件に関わり続けているという。福崎伸一郎元裁判官は大阪高裁の裁判長としての1年半は一審を破棄する 判決が35件。そのうち7件が逆転無罪になった。刑事裁判では二審は事後審と言って一審が適切に行われたどうかをチェックする役割で基本的に新たな証拠調べは行わない。一審の有罪率は98.3%。二審での逆転無罪はもっと珍しい。福崎氏は退官前に逆転無罪を連発する裁判官として週刊誌にも取り上げられた。福崎氏の真意をどう探ってよいのか、退官して間もない刑事裁判官の元を訪ねた。破棄判決が35件、逆転無罪が7件と聞いた元裁判官の西愛札さんはすごく多いと語り、裁判官は人を裁く際に自分も裁いていて、自分が間違っていなかったか見直しながら判決文を書くという。
福崎裁判長の逆転無罪の判決文を紹介。夫と覚醒剤を使用して一審で罪を認めて有罪になった女性が二審で実は夫に無理やり打たれたと否認に転じた事件。二審を担当した弁護士の藤原稔氏は、その事件について女性は日頃から夫から暴力を受けていて逆らえず、警察や役所に相談に行っていたという。それならケガを診断する証拠があるはずだが、この状況では無罪は勝ち取れないと思い、女性にも期待しないでほしいと伝えたという。二審の初公判では藤原弁護士の想定外の事が起きる。福崎裁判長は、弁護側が提出した証拠を取り調べると宣言。審理を経て判決の日がやってきた。被告人は無罪と出た時に藤原氏は嬉しいというよりは驚いたという。福崎裁判長のこの判断については真っ当な判断だと思うが、日本の刑事裁判では全うな判断に行き着くとは限らないという。福崎氏の逆転無罪判決の中には二審で新たな証拠調べすら行わなかったものも。とある横領事件では、B社名義の銀行口座から妻に50万円を振り込んだ男性A。B社の金を横領した罪で起訴された。裁判でAは横領を否認。B社の名義を借りていただけで、Aの会社が管理していた口座だったと主張。それを示す証拠もあったが、弁護士の梁龍成氏はその当時の状況に裁判官は自分たちが提出した証拠には殆ど触れず有罪認定を出す方向の話を被告人質問で誘導で聞いていたがこんなことをするのか?と驚いたという。案の定一審は有罪判決。その二審を担当したのが福崎裁判長。二審では新たな証拠を調べることもなく直ぐに判決の日を迎えたが無罪の判決に安堵したという。その判決については福崎裁判長がやってくれた面もないことはないという。一審の判決を読み直し、弁護側の主張や立証に全部目を通してくれていたという。逆転無罪事件を担当した他の弁護人にも取材をしたが福崎裁判長の訴訟指揮が特別だとは感じないと口を揃えた。
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無罪判決をたくさん書いた裁判官には、なにか理由があるのか?30件以上無罪判決を書き一度も破棄されなかった伝説の元裁判官の木谷明さんは四年間つとめた浦和地裁時代に10件近い無罪判決を出している。いちばん大事なことは無罪の人を処罰しないことだという。ごく普通にやっていた中でそういう判決になったと答えたが、左陪席は任官早々まだそんなに色がついていないが右陪席は色もついている人もいるがそんなに頑強な人ではなく、自分たちの考え方を理解し、同調してくれるようになってきていたという。福崎氏については大阪高裁で裁判長としてそれだけやったのはすごいと語った。大阪高裁時代に福崎氏は重大な事件の審理も担当している。平野母子殺害事件では、2002年大阪・平野区のマンションで母子が殺害され、マンション一階の踊り場にあるタバコの吸殻が最も重視された間接証拠だった。1本の吸い殻の唾液から現場に行っていないと話していた義理の父親の唾液が検出されDNAが一致。男性は殺人罪などで起訴された。男性には一審で無期懲役に。二審では死刑判決が言い渡されたが最高裁判所は一審と二審を破棄差戻しにしたが吸い殻の汚れ具合から、タバコは女性の持ち帰った携帯灰皿から捨てられた可能性があり、残りの吸い殻からも調べ直す必要があると事件を一審に差し戻した。しかし大阪府警が起訴直後に残りの吸い殻71本を紛失していたことが判明。2回目の一審で男性は無罪に。検察は控訴し、現場のソファのDNA鑑定など新たな捜査をしたいと申し出て裁判所もそれを認めた。しかし鑑定結果が中々でてこず。福崎裁判長に交代した途端、止まっていた審理が動き出した。鑑定人を検察官と弁護人がいる席に呼び、何故遅れているのか直接明らかにした。結局更に時間をかけても男性のDNA型は検出されず審理を進めても判決の日を迎えた。後藤真人弁護士はその福崎裁判長の判断に優れた人だと感心したという。
これまで30件以上の無罪を勝ち取ってきた後藤弁護士。裁判官によって有罪と無罪、結論が変わるのかを尋ねた。木谷明元裁判官については30件以上無罪があって確定してそれが廃棄されないと考えれば常識を働かせればいいという。他の裁判官にあたったのはたまたま無罪がなかったという事があり得るかといえばありえない。他の裁判官も30件は無罪があったはずでそれを有罪にしてしまっているという理屈になってしまうと語る。木谷元裁判官に福崎裁判長の逆手判決を読んでもらった。木谷氏は記録を細かく読み込んで真剣真相に近づこうとする努力に感服したというがここまでの情熱を注いで行う裁判長はなかなかいないとう。福崎氏が残した逆転判決は無罪だけではない。とある道路の駐輪場が街路がどうか争われた事件がある。軽犯罪法では街路又は公衆の集合する場所で立ち小便は罪に問われる。検察はこの場所を公衆の集合する場所だったとして起訴したが一審は多くの人が集まる場所ではないと無罪にした。二審を担当したのが福崎裁判長。その事件に裁判に立ち会った中村友彦弁護士は、検察官が街路と主張していなかったのに、裁判官が街路を入れないのか?と言って、検察官は入れないと言っていたがそれに対し本当にいいのか?と言ってきたという。福崎裁判長が検察官に街路も主張するように促し、検察は主張を追加。結局福崎裁判長は駐輪場も街路に含まれるとし、逆転有罪を言い渡したが中村氏は私有地で自由な立ち入りを想定しない場所を公共の場所として判断するのは解釈を越えていると感じたという。木谷氏も福崎裁判長が駐輪場を街路だと破棄有罪にしたのは彼らしくないという。
福崎氏が番組の取材に答えた。その理由に興味をもって接触をしてもらえたのに断るのもいかがなものかと感じたという。週刊誌で無罪を連発する裁判長として取り上げられた記事については意識的にやっていたわけではないのでこういう見方なのかと思ったという。逆転無罪を多く出しているという自認はあったが、何故こうしなければいけない事件が多く自分のところに来るのかと思っていた答えた。個別の事件には触れられないというが立ち小便事件については駐輪場を街路にし被告を有罪にしたが、こっちが大丈夫でこっちが大丈夫はないと区別できる場所ではないと語った。また過去に有罪判決を出したもので本当は無罪だったのではと思うことは?にそう思ったことはないという。
上田大輔が刑事裁判に絶望したきっかけは2007年にみた映画それでもボクはやってない。痴漢冤罪事件を題材に有罪推定とも言える日本の刑事裁判の絶望的な事件を描いている。その映画に刑事裁判に関わることが怖くなったが冤罪事件を追っているのはこの映画が頭から離れなかったからだという。この映画の映画監督の周防正行はこの映画の取材の中で日本の裁判で誰が一番悪いか?について裁判官と答え、今もそうだと語る。裁判官の尋問の中には被告がそもそも電車で女性の前に立っていることを全否定し、背中から乗ればよかったなどという信じられないものがあったという。有罪とはっきり言えなければ無罪にするという決まりなのに、現実の裁判は無罪だという確信が裁判官の中に芽生えなければ無罪を書いてもらえないという印象を感じたという。99%が有罪となる中で裁判官に大きな影響になり公益のために働いている検察官が証拠を調べて起訴しているのだからそれに間違いないという前提があると分かったと答えた。周防監督は法律雑誌の座談会で福崎氏と同席している。その時の印象について聞いたが、忖度しない人だという。正直でその会議の中で新聞報道やTVニュースなど、そういったものが裁判官にどう影響を与えるか?という話になった際に福崎さんは証拠で判断すると答えていたが、この人ならこういうだろうと思うような人だったと答えた。
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2009年に痴漢事件の流れを大きく変える最高裁判決がでた。当時60歳の大学教授の男性が、満員電車内で痴漢をしたとして一審と二審で実刑判決をうけた。しかし最高裁は被害者の供述を全面的に信用した一審と二審は必要とされる慎重さを欠くものとして異例の逆転無罪に。この一審の有罪判決を出したのが福崎氏だった。この事件について福崎氏は審理の仕方を考えさせられる事件だったという。被告になってしまった男性に対して申し訳無さを感じたか?には間違っていればそうだと答えたが、判決の結論が間違っているのであればそうなると答えた。判決が覆ったことで事件の実体に対する向き合い方として足りなかったところがあったと感じたという。またこの事件については、自分の戒めとなった事件だという。またこのことがそれ以降の刑事裁判に影響していると答えた。
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