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国債の発行残高は約1100兆円。年間発行額は5年前に200兆円を超えて以降、高い水準で推移している。去年日本銀行が国債買い入れを減らす方針を発表した。国債発行の最前線に立つチームに密着した。
オープニング映像。
財務省国債企画課では9月、国債発行計画が動き始めていた。令和6年度の当初予算112兆円のうち35兆円余を国債が賄っていた。1年間に発行される国債はこれだけではなく、返済期限を迎えた国債の一部を返し残りはもう一度国債を発行して資金調達する必要があった。そのため令和6年度に発行される国債は182兆円にのぼった。国債を購入する機関投資家の動向を探るため、国債企画課の大滝さんは長野県の地銀に足を運んだ。この地銀は国債に8000億円ほど投資しているが、今後の話については言葉を濁した。日銀が政策金利を引き上げたことで、機関投資家の間では今国債を購入すると今後市場での価格が下がるという懸念下広がっていた。また国債発行残高のうち半分以上を保有していた日銀は、買い入れを減らす方針を掲げ、来年3月までに7~8%程度減少するとした。金沢の地銀の運用責任者からは、国内金融機関で国債を引き受けるには限度があると告げられた。
財務省の部屋で国債の入札が行われた。国債には発行から償還日まで、最短2か月から最長40年のものまである。この日の入札は10年国債1.9兆円分だった。元理財局長の齋藤さんは、発行額に足りるだけ札が集まるかという緊張感は何回やっても消えなかったと語った。国債企画課の矢野さんは11月、日本国債への投資を呼び込むためドバイを訪れた。機関投資家たちとの面談で、投資家たちは日本の政治家の財政への姿勢を質問した。中等滞在中、矢野さんは海外投資家が抱く日本国債に関する懸念を何度も指摘された。日本のGDPに対する債務残高の割合は世界の中でも突出して高く、将来国債の信用にも影響するという指摘もある。1990年代後半まで最上位だった日本国債の格付けは、今上から5番目となっているものもありl、G7ではイタリアに次いで低い評価となっている。
アベノミクスで日銀は異次元の緩和政策が行われた。元日銀審議委員の白井氏は、思い切った金融緩和で物価を押し上げることが最大の目的だったと語った。予算編成の責任者を務めた木下氏は、株価が改善したことは目を見張る思いだったと話した。異次元の金融緩和は10年以上続き、日銀が国債を大量に買い入れることで長期金利を0%程度に抑え込む仕組みを導入。銀行や証券会社からは、市場の原理を歪めてしまうとの懸念の声があがっていた。野村證券の齋藤元副社長は、債券市場の金利は日本の経済の状態が平熱かどうかを教えてくれる体温計の役割で、これをいじると実態がわからなくなってしまうと話した。外資系証券会社の大森元社長は、市場に公的機関が介入して市場原理を曲げることがあっていいのかと当時強く思ったと話した。想定外だったのはコロナ禍と、ウクライナ侵攻による世界的な物価高だった。2020年度の国債発行額は過去最高の257兆円にのぼり、その後も高止まりしている。日銀の方針が変わる中で国債をどう発行するか難しい舵取りを迫られている。
金利のある世界を迎え、日本国債は利払い費の課題にも直面している。財務省主計局課長の片山さんは、2028年度には利払い費が今の1.5倍にあたる約16兆円に膨らむと試算している。予算を圧迫すると、重要政策への支出が制限される可能性があると分析していた。アメリカのヘッジファンドとの面談では、今後の利払い費をめぐる財政当局の認識について問われた。片山さんは、パリで財政と社会保障制度に関する国際会議に参加した。今後利払い費が重要政策の予算をどこまで圧迫するかは、各国の財政当局者にとって共通の悩みになっていた。一方で日本国内では、財務省批判が急速に高まっていた。暮らしが良くならないのは財政の運営が間違っているという不満が、財務省に向けられていた。
1975年のオイルショック後の景気低迷で税収不足が見込まれた年が、国債への依存が進んでいくきっかけになった。大平正芳蔵相は、戦後禁止された赤字国債を発行すべきか決断を迫られていた。秘書を務めていた森田氏は、戦前に国債が膨らんでインフレになった経験から、なんとか出さなくて済む方法はないかと話していたと語った。しかし急激な税収不足を解消する手立てがないとして、2兆円の赤字国債が発行された。先の戦争中、日本は歳出の7割近くを公債に頼り、累計1000億円以上の軍事公債で戦争を遂行していた。戦後定められた財政法の解説書には「公債のないところに戦争はない」と記され、赤字国債の発行禁止が誓われた。しかし一度赤字国債が発行されると、国債への依存は続いていった。同時に発行額を巡る議論も続けられた。1996年に大蔵省が東大に分析を依頼した内部資料が見つかった。分析したのは現日銀総裁の植田和男氏で、資料では国債発行残高が増えていった場合のリスクについて分析。対GDP比で100%を超えると少々の財政引き締めで減らすのは難しいとして、国債発行額は膨張を続けると指摘していた。
財務省では計画策定に向け、幹部会議が行われた。将来の負担を減らしながら、国債を安定的に発行するための計画をどう作るか判断が迫られていた。去年の12月27日に令和7年度の予算案が閣議決定したのに合わせて、国債発行計画も公表された。発行額は176.9兆円だった。前年度から5兆円ほど少なくなったが、巨額の国債発行は続くことになった。176.9兆円分の国債を発行し、資金を調達する日々がここから始まる。3月、10年国債の利回りは16年ぶりの水準まで上昇した。財務省では176.9兆円の国債発行に向けて動き始めていた。
エンディング映像。
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