サイバーセキュリティの専門家で、サイバー空間の諜報活動に詳しい岩井博樹による解説。中国企業によるアメリカ政府元職員のリクルートが発覚したが、この企業と中国政府とのつながりは直接的には確認されていない。ただ非常にグレーなところがあり、中国は国家情報法でいかなる組織と個人も国家情報活動に協力しないといけないと定められている。機密情報というと軍事機密などをイメージしがちだが、今回の場合は国家安全保障の設計図をいかに浮かび上がらせるかが目的と考えられる。例えば人脈や政府機関の取引先などいろんな情報をかき集めることで、その国の弱点を探ることができる。今回は職を失い心理的に不安定で経済的な困窮があり、かつ政府への不信感がある元職員がターゲットになっており、広く情報が集められる最大のチャンスとなった。日本でも同じような活動が行われていると思ったほうがよく、同盟国の法執行機関間での情報連携、政府機関退職者へのフォロー強化が求められる。
